について
オーストリア完全ガイド:アルプスの宝石を巡る旅
なぜオーストリアを旅するのか
オーストリアという国名を聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。モーツァルトの調べか、ウィンナーワルツの優雅なリズムか、それともアルプスの雪を頂いた峰々か。この中欧の小国は、ヨーロッパの心臓部に位置しながら、その存在感は決して小さくない。東京からの直行便で約12時間、時差はわずか8時間。日本人旅行者にとって、実はかなりアクセスしやすいヨーロッパの入口なのだ。
オーストリアの魅力は、その多様性にある。首都ウィーンでは世界最高峰のオペラやクラシック音楽に酔いしれ、ザルツブルクではモーツァルトの足跡をたどり、インスブルックでは夏はハイキング、冬はスキーを楽しむ。ハルシュタットの湖畔に佇む絵画のような村、グラーツの洗練されたグルメシーン、ツェル・アム・ゼーの壮大な氷河。すべてがこの小さな国に凝縮されている。
面積は約84,000平方キロメートル、北海道とほぼ同じ大きさだ。しかし、その中に9つの州があり、それぞれが独自の文化、方言、料理を持っている。オーストリア人は自分たちの地域に強いアイデンティティを持ち、チロル人、シュタイヤーマルク人、ウィーン人といった呼び方を好む。この地域性こそが、オーストリアの旅を豊かにしてくれるのだ。
人口約900万人のこの国は、年間約3,000万人の観光客を迎え入れる観光大国でもある。日本からの観光客数は年間約20万人で、ヨーロッパの中でも人気の高い目的地だ。物価はドイツやフランスと同程度、スイスよりは手頃。治安は極めて良好で、女性の一人旅でも安心して楽しめる国の一つとして知られている。公共交通機関は正確で清潔、英語も広く通じる。ヨーロッパ旅行の初心者にも、何度も訪れるリピーターにも、自信を持ってお勧めできる国だ。
ハプスブルク家が600年以上にわたって支配したこの国には、帝国時代の遺産が至る所に残っている。宮殿、教会、オペラハウス、カフェ。それらは単なる観光名所ではなく、今も生きた文化として人々の生活に溶け込んでいる。ウィーンのカフェで新聞を読みながらコーヒーを楽しむ習慣、ザルツブルクの音楽祭に集う人々、チロルの山小屋で地元のビールを傾けるハイカーたち。オーストリアは過去と現在が美しく調和した国なのだ。
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ウィーン地域:帝国の栄光と現代アートの融合
ウィーンは、かつてヨーロッパを支配したハプスブルク帝国の首都として、その壮麗な建築遺産を今に伝える。シェーンブルン宮殿の1,441室の部屋、ホーフブルク宮殿の荘厳な姿、ベルヴェデーレ宮殿に収められたクリムトの「接吻」。これらはすべてウィーンでしか体験できない文化遺産だ。ウィーンは2年連続で「世界で最も住みやすい都市」に選ばれており、その生活の質の高さは旅行者にも恩恵をもたらしている。
しかしウィーンは過去に生きる街ではない。ミュージアムスクォーターは世界最大級の文化複合施設で、60,000平方メートルの敷地に複数の美術館、カフェ、イベントスペースが集まっている。レオポルド美術館のエゴン・シーレ・コレクションは圧巻で、世界最大のシーレ作品群を所蔵している。彼の生々しいまでに誠実な自画像や、禁断とされた人物画は、今見ても衝撃的だ。セセッション館の金色のドームはウィーン分離派の象徴であり、地下に展示されたクリムトの「ベートーヴェン・フリーズ」は、音楽を視覚化した壮大な作品だ。入場料を払う価値は十分にある。
フンデルトヴァッサーハウスのカラフルな曲線は、ウィーンの遊び心を体現している。「自然に直線は存在しない」という芸術家フンデルトヴァッサーの哲学に基づき、床は波打ち、窓はそれぞれ異なる形をしている。屋上には250本以上の木が植えられており、まるで森の中に住んでいるような体験ができる。残念ながらこれは住居なので内部見学はできないが、向かいのショッピングセンターと近くの「クンストハウス・ウィーン」美術館で彼の世界観に浸ることができる。
シュテファン大聖堂はウィーンのシンボルで、343段の階段を登れば市内を一望できる。ゴシック様式の尖塔は高さ136.4メートル、完成までに65年を要した。屋根のタイルで描かれたハプスブルク家の紋章、双頭の鷲は、晴れた日には地上からでも見ることができる。地下のカタコンベには約10,000人の遺骨が眠っており、ガイドツアーで見学可能だ。中世の疫病や戦争の歴史を肌で感じる体験となる。
大聖堂周辺に広がる旧市街は歩行者天国となっており、高級ブランド店からウィーン伝統のカフェまでが軒を連ねる。グラーベン通り、ケルントナー通り、コールマルクトを結ぶ三角形は「ゴールデン・トライアングル」と呼ばれ、ショッピングの中心地だ。ここでは19世紀の建築を背景に、最新のファッションや伝統工芸品を眺めながら散策を楽しめる。
ウィーン国立歌劇場での公演は、正装でなくても立ち見席なら当日券で数ユーロで楽しめる。これはウィーンならではの文化的特権だ。開演の80分前から窓口で販売が始まるが、人気公演は2~3時間前から並ぶ必要がある。立ち見とはいえ、世界最高峰のオペラを10ユーロ以下で体験できるのは破格だ。正規席は100~300ユーロが相場なので、予算を抑えたい人には特にお勧めする。ちなみに、オペラ座のガイドツアーも毎日開催されており、豪華な内装を解説付きで見学できる。
ナッシュマルクトは16世紀から続く市場で、120以上の店舗がスパイス、チーズ、果物、そして世界各国の料理を提供している。かつては牛乳市場だったこの場所は、今ではウィーンの胃袋と呼ばれ、地元の人々も毎日のように訪れる。中東料理、アジア料理、地中海料理のスタンドが並び、立ち食いで軽くランチを済ませることもできる。土曜日には蚤の市も開かれ、アンティーク家具、ヴィンテージ食器、古書などを探す人々で賑わう。早朝に行くと、業者向けの掘り出し物が見つかることもある。
プラーター公園の大観覧車は、映画「第三の男」で有名になったウィーンのランドマークだ。1897年に建設されたこの観覧車は、高さ65メートル、一周約20分の空の旅を提供している。キャビンは巨大で、15人乗りのものが15台ある。夜にライトアップされた姿は特に美しく、ロマンチックなディナーを楽しめるキャビンも予約できる。プラーター公園自体は無料で入れる広大な緑地で、ジョギングや自転車、ピクニックを楽しむ地元の人々で賑わっている。遊園地エリアにはジェットコースターやお化け屋敷など、クラシックなアトラクションが並ぶ。
音楽の都としてのウィーンを体験するなら、ムジークフェラインの黄金のホールでウィーン・フィルの演奏を聴くことをお勧めする。毎年元旦に全世界に中継されるニューイヤーコンサートの会場だ。このホールの音響は世界最高と評されており、その秘密は長方形の「シューボックス型」設計にある。壁の女神像や天井の装飾は単なる装飾ではなく、音を美しく反響させる役割を果たしている。チケットは数カ月前から売り切れることが多いが、立ち見席やリハーサル公演なら比較的入手しやすい。
スペイン乗馬学校のリピッツァナー種の白馬による古典馬術も、400年以上続くウィーン独自の伝統だ。白い馬が優雅にステップを踏み、跳躍し、回転する姿は、まさに馬のバレエと呼ぶにふさわしい。実はこの馬たちは生まれた時は黒や灰色で、年を経るにつれて白くなっていく。公演チケットは高額だが、朝の調教を見学する「モーニング・エクササイズ」は比較的安価で、音楽に合わせて馬が練習する様子を見ることができる。
美術史美術館はハプスブルク家のコレクションを収蔵し、ブリューゲル、フェルメール、ラファエロ、カラヴァッジョ、デューラーの傑作が並ぶ。特にブリューゲルのコレクションは世界最大で、「バベルの塔」「雪中の狩人」「農民の婚礼」など、美術の教科書で見たことのある作品が目白押しだ。向かいの自然史博物館とは双子の建物で、両方を訪れる時間を確保したい。自然史博物館には、2万5,000年前の「ウィリンドルフのヴィーナス」像や、巨大な恐竜の骨格標本が展示されている。
アルベルティーナ美術館のデューラーの「野うさぎ」は、世界で最も有名な動物画の一つだ。1502年に描かれたこの水彩画は、驚くほど写実的で、毛の一本一本まで描き込まれている。美術館はハプスブルク家の居住空間を改装したもので、豪華な部屋の中に近代・現代アートのコレクションが展示されている。モネ、ルノワール、ピカソ、ウォーホルの作品も所蔵しており、一度の訪問では見切れないほどだ。
カールス教会のバロック建築は、ウィーンで最も美しい教会の一つだ。1713年のペスト終息を記念して建設され、ローマのトラヤヌス記念柱を模した二つの円柱が特徴的だ。内部にはエレベーターで上がれる足場が設置されており、天井のフレスコ画を間近で見ることができる。これは修復作業のための足場を観光用に開放したもので、通常では見られない角度から教会を体験できる貴重な機会だ。
国会議事堂のギリシャ神殿を思わせるファサード、ウィーン市庁舎のネオゴシック様式。リングシュトラーセと呼ばれる環状道路沿いには、19世紀の建築博覧会のような景観が続く。この5.3キロメートルの環状道路は、かつての城壁を取り壊して作られたもので、沿道には意図的に様々な建築様式の建物が配置された。トラムの1番線か2番線に乗って一周するだけでも、ウィーンの建築史を体感できる。所要時間は約30分で、最も手軽な観光方法の一つだ。
中央墓地は、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ヨハン・シュトラウス、モーツァルト(記念碑のみ)といった音楽の巨匠たちが眠る場所だ。面積2.5平方キロメートルは、ヨーロッパで2番目に大きな墓地で、約330,000人が埋葬されている。墓地と聞くと暗いイメージがあるかもしれないが、ここは緑豊かな公園のような雰囲気で、ウィーン市民の憩いの場にもなっている。音楽家の墓は「名誉墓区」にまとめられており、地図を見ながら効率的に回ることができる。市内からトラムと地下鉄で約30分、音楽ファンなら外せない聖地だ。
シュタットパルクには金色のヨハン・シュトラウス像があり、ウィーンで最も写真に撮られるスポットの一つだ。「ワルツ王」がヴァイオリンを弾く姿を捉えたこの像は、花に囲まれた美しいフレームとなっている。公園自体は1862年に開園したウィーン最初の市立公園で、池や小川、様々な種類の木々が植えられている。春には桜が咲き、秋には紅葉が美しい。クアサロン(カジノではなく、温泉施設の意味)ではウィンナーワルツのディナーショーが毎晩開催されている。
シェーンブルン宮殿は、ハプスブルク家の夏の離宮として1696年から建設が始まった。マリア・テレジア女帝の時代に現在の姿になり、彼女の16人の子供たちがここで育った。その一人がマリー・アントワネットで、彼女はここで6歳のモーツァルトと出会ったと言われている。見学は「インペリアル・ツアー」(22室)と「グランド・ツアー」(40室)の2種類があり、オーディオガイドは日本語も選択できる。庭園は無料で入場でき、迷路庭園、動物園、グロリエッテ展望台など一日中楽しめる。
シェーンブルン動物園は1752年創設の世界最古の動物園で、パンダの繁殖にも成功している。バロック様式のパビリオンの中に現代的な動物舎が配置されており、建築としても見応えがある。約700種、8,500匹の動物が飼育されており、特にパンダ、コアラ、シベリアトラ、アフリカゾウが人気だ。宮殿とセットで訪れれば、一日たっぷり楽しめる。子供連れの家族旅行なら外せないスポットだ。
ザルツブルク地域:モーツァルトの故郷とサウンド・オブ・ミュージックの舞台
ザルツブルクは、その名の通り「塩の城」を意味する。アルプスから産出される岩塩の交易で栄えたこの街は、今やモーツァルトとサウンド・オブ・ミュージックの聖地として世界中から観光客を集めている。旧市街全体がユネスコ世界遺産に登録されており、バロック建築の宝庫だ。街の規模はウィーンより小さく、主要な観光スポットは徒歩で回れる。だが、その小ささゆえに凝縮された美しさがあり、多くの旅行者がウィーンよりザルツブルクを好むと言う。
モーツァルトの生家はゲトライデガッセに位置し、彼が1756年1月27日に生まれた部屋が公開されている。黄色い外壁が目印のこの建物には、モーツァルトの幼少期の楽譜や楽器が展示されている。特に注目すべきは、彼が3歳の時に使っていた小さなヴァイオリンと、オペラ「魔笛」の初演時に使われたとされる楽譜だ。通りは鍛鉄製の看板で知られ、中世の雰囲気を今に伝えている。マクドナルドやスターバックスですら、この通りでは伝統的なデザインの看板を掲げている。
モーツァルト一家は1773年にザルツァッハ川の対岸、マカルト広場8番地に引っ越した。この「モーツァルトの住居」も博物館として公開されており、彼が17歳から25歳まで住んだ場所だ。ここで彼は多くの交響曲や協奏曲を作曲した。生家との共通チケットを購入すると割引になる。
ホーエンザルツブルク城塞は中央ヨーロッパで最大かつ最も保存状態の良い城塞の一つだ。1077年に建設が始まり、約600年かけて現在の姿になった。ケーブルカーで山頂まで登れば、ザルツブルク市街とアルプスの絶景が広がる。もちろん徒歩でも登れるが、かなりの急坂なので覚悟が必要だ。城塞内には博物館、拷問具の展示室、マリオネット博物館などがあり、見学には2~3時間を見込んでおくとよい。夏には城塞コンサートも開催され、中世の雰囲気の中でクラシック音楽を楽しめる。
ミラベル宮殿と庭園は、映画「サウンド・オブ・ミュージック」で子供たちが「ドレミの歌」を歌いながら駆け回った場所として有名だ。1606年に大司教が愛人のために建てた宮殿だが、現在は市役所として使われている。バロック様式の庭園は四季折々の花々で彩られ、結婚式の人気スポットでもある。毎週土曜日には、ここで結婚式を挙げるカップルを見かけることができる。庭園から見る城塞の姿は、ザルツブルクを象徴する景観として、無数のポストカードに使われている。宮殿内の「マルモアザール」(大理石の間)は世界で最も美しい結婚式場の一つとされ、モーツァルトも演奏したことがある。
ザルツブルク大聖堂は、モーツァルトが1756年1月28日に洗礼を受けた教会だ。イタリア・バロック様式の内装は荘厳で、6,000本以上のパイプを持つオルガンは圧巻だ。4基のオルガンを使った演奏会も開催される。大聖堂の前の広場は、ザルツブルク音楽祭のオープニングセレモニーが行われる場所で、毎年夏には「イェーダーマン」(誰でも)という中世の道徳劇が上演される。雨天中止ではなく、雨が降っても続行されるのがザルツブルク流だ。
隣接するドムクヴァルティーアでは、大聖堂と旧レジデンツを繋ぐギャラリーを巡ることができる。かつて大司教だけが歩くことを許された通路を通り、15の部屋と3つの博物館を見学する約1時間半のルートだ。大聖堂を上から見下ろせるテラスもあり、通常では見られない角度から街を眺められる。
ザルツブルク・レジデンツは大司教の宮殿で、180以上の部屋には豪華なフレスコ画や家具が残されている。15世紀から18世紀にかけて、ザルツブルクは独立した教会国家であり、大司教は世俗的な権力も持っていた。その富と権力を示すために建てられたこの宮殿は、ウィーンの宮殿にも引けを取らない豪華さだ。ザルツブルク博物館は新レジデンツに入っており、街の歴史を詳しく学べる。
ザルツブルク祝祭劇場では毎年夏に世界最高峰の音楽祭が開催される。1920年に始まったこの音楽祭は、オペラ、演劇、コンサートを約6週間にわたって上演する。チケットは数カ月前から売り切れ始め、特にオペラの人気公演は抽選になることもある。音楽祭の期間外でも、祝祭劇場のガイドツアーに参加すれば内部を見学できる。岩山をくり抜いて作られた大ホールは、音響と視覚の両面で圧巻だ。
聖ペーター修道院と墓地は、696年創設のドイツ語圏最古の修道院だ。修道院教会はロマネスク様式を基本としながら、バロック様式の装飾が加えられている。墓地は岩壁に穿たれた墓所があり、独特の雰囲気を醸し出している。映画「サウンド・オブ・ミュージック」でトラップ一家がナチスから逃れるシーンに使われたのは、実はこの墓地ではなく映画セットだが、多くの観光客がここを訪れる。修道院のレストラン「シュティフツケラー」は、803年の記録が残るヨーロッパ最古のレストランの一つだ。洞窟のような空間で、ザルツブルク料理とワインを楽しめる。
ヘルブルン宮殿は「トリックの泉」で有名だ。17世紀の大司教マルクス・シュティクスが客人を驚かせるために作った仕掛け噴水は、今でも訪問者を水浸しにする。テーブルの椅子から水が噴き出したり、庭園のあちこちから突然水が飛んできたりする。ガイドが意地悪な笑みを浮かべながらスイッチを入れるので、気を抜いていると間違いなく濡れる。夏は着替えを持参するか、濡れても良い服装で訪れることをお勧めする。子供も大人も楽しめるアトラクションだ。庭園には「サウンド・オブ・ミュージック」で使われたガゼボのレプリカもある。オリジナルは別の場所にあったが、映画ファンのためにここに移設された。
ウンタースベルク・ケーブルカーで標高1,853メートルまで登れば、晴れた日にはドイツとの国境、さらにはスロヴェニアのアルプスまで見渡せる。ウンタースベルクはザルツブルクの「家庭の山」と呼ばれ、地元の人々に愛されている。伝説によると、この山の洞窟には皇帝カール大帝が眠っており、世界が危機に瀕した時に目覚めるという。ハイキングコースも整備されており、夏は登山者で賑わう。上級者向けの岩場から、家族連れでも楽しめる緩やかなトレイルまで、様々なルートがある。
自然の家は自然科学博物館と水族館を兼ねた施設で、恐竜の骨格標本やプラネタリウム、インタラクティブな科学展示が子供たちに人気だ。特に「科学センター」エリアでは、物理学や生物学の原理を体験しながら学べる展示が充実している。水族館では、サメやタコ、熱帯魚を見ることができる。おもちゃ博物館も子連れ旅行にお勧めできる。歴史的なおもちゃのコレクションに加え、プレイエリアでは実際におもちゃで遊ぶことができる。
レッドブル・ハンガー7は、エネルギードリンク企業の創業者ディートリヒ・マテシッツが趣味で集めた航空機コレクションを展示する、未来的なガラス張りの建物だ。F1マシン(レッドブル・レーシング)、ヴィンテージ飛行機、ヘリコプターが並び、定期的に展示内容が入れ替わる。3つのミシュラン星を持つレストラン「イカルス」も併設されており、毎月異なる国際的シェフが料理を提供する革新的なコンセプトだ。カフェでの軽食なら、より手頃な価格で楽しめる。空港の滑走路のすぐそばにあり、建物自体が一種のアート作品だ。無料で入場できるのも嬉しい。
シュティーグル・ブラウヴェルトは、オーストリア最大の私営ビール醸造所の見学施設だ。1492年に創業したシュティーグルは、オーストリアで最も人気のあるビールブランドの一つ。ビールの歴史を学び、醸造所を見学し、最後にできたてのビールを試飲できる。試飲は複数種類あり、飲み比べを楽しめる。併設のレストランでは、ビールに合うオーストリア料理を提供している。ビール好きには外せないスポットだ。
ノンベルク修道院は、映画「サウンド・オブ・ミュージック」でマリアが修練女として過ごした修道院のモデルとなった場所だ。714年創設のベネディクト会女子修道院で、現在も約30人の修道女たちが暮らしている。静謐な雰囲気の中、ゴシック様式の教会を見学できる。映画のシーンは実際にはスタジオで撮影されたが、外観のいくつかのショットはここで撮影された。修道院からはザルツブルク旧市街を見下ろす美しい景色が広がる。
カプツィーナーベルクとメンヒスベルクは、ザルツブルクを囲む二つの丘だ。どちらも散策路が整備されており、地元の人々のジョギングコースにもなっている。カプツィーナーベルクにはカプチン会修道院があり、その前の展望台からは旧市街の絶景が広がる。メンヒスベルクの頂上には近代美術館があり、現代アートのコレクションを展示している。エレベーターで上がることもできるが、旧市街から歩いて登るルートもあり、途中で街を見下ろす素晴らしいビューポイントがいくつかある。
ヴォルフガング湖はザルツブルク近郊の美しい湖で、レトロな蒸気船での遊覧や、シャーフベルク登山鉄道での山頂への旅が楽しめる。この蒸気船は1873年から運航しており、ヨーロッパで最も古い現役の蒸気船の一つだ。シャーフベルク登山鉄道も同様に歴史があり、1893年から蒸気機関車が山頂(標高1,783メートル)まで登っている。湖畔の村々は絵葉書のような美しさで、特にザンクト・ヴォルフガングは必見だ。「白馬亭」というオペレッタで有名になったホテルが今も営業している。
アイスリーゼンヴェルトは世界最大の氷の洞窟で、ザルツブルクから日帰りで訪れることができる。「氷の巨人の世界」という意味の名前を持つこの洞窟は、全長42キロメートルのうち約1キロメートルを見学できる。洞窟内の気温は夏でも0度以下なので、暖かい服装が必須だ。ガイドツアーは約1時間15分で、急な階段を1,400段以上登ることになる。体力に自信のない方には厳しいかもしれないが、氷の彫刻のような内部は幻想的で、その価値は十分にある。洞窟の入口までケーブルカーで上がり、さらに15分ほど歩く必要がある。5月から10月のみ開放されている。
チロル地域:アルプスの心臓部
インスブルックは、チロル州の州都にしてアルプスの玄関口だ。街の中心部からケーブルカーで20分で標高2,000メートルの山頂に立てる、この立地の良さが最大の魅力だ。1964年と1976年の冬季オリンピック開催地としての歴史を持ち、冬のスポーツインフラは世界最高水準だ。2012年には冬季ユースオリンピックも開催された。しかしインスブルックは冬だけの街ではない。夏のハイキング、サイクリング、パラグライディングなど、アウトドアアクティビティが一年中楽しめる。
黄金の小屋根は、2,657枚の金メッキ銅板で覆われた出窓で、1500年にマクシミリアン1世皇帝のために作られた。皇帝はこのバルコニーから広場で行われる祭りや馬上槍試合を観覧したという。旧市街の中心に位置し、周囲にはパステルカラーの家々が並ぶ。建物内には小さな博物館があり、マクシミリアン1世の生涯と当時のチロルの歴史を学べる。マリア・テレジア通りからの眺めは、背景にノルトケッテ山脈を従えたインスブルックを象徴する景観だ。この通りは現在も商業の中心で、カフェやショップが並んでいる。
ホーフブルク宮殿はハプスブルク家の別邸で、マリア・テレジア女帝が愛したロココ様式の内装が見事だ。女帝は16人の子供を産み、その多くがヨーロッパ各地の王室に嫁いだ。この宮殿の「巨人の間」には、女帝の家族の肖像画が並んでいる。宮廷教会には、28体の等身大のブロンズ像に守られたマクシミリアン1世の記念墓がある。像の一つ一つが歴史的人物を表しており、アーサー王やテオドリック大王など、実在しない人物も含まれている。この国の歴史の深さと、当時の皇帝の野望を感じさせる。
ノルトケッテ・ケーブルカーは、ザハ・ハディド設計の未来的な駅舎が印象的だ。彼女の流線型のデザインは、アルプスの雪と氷からインスピレーションを得たという。市内中心部のコングレス駅から出発し、フンガーブルク、ゼーグルーベを経て、ハーフェレカール駅(標高2,334メートル)まで20分で到達する。夏はハイキング、冬はフリースタイルスキーのメッカとなる。天気が良ければ、頂上からドイツ、イタリア、スイスの山々まで見渡せる。レストランもあり、アルプスの絶景を眺めながら食事を楽しめる。
ベルクイーゼル・スキージャンプ台もザハ・ハディド設計で、その流線型のフォルムは現代建築の傑作だ。頂上のカフェからはインスブルック市街を一望でき、オリンピックの歴史を感じながらコーヒーを楽しめる。エレベーターとケーブルカーで上まで行けるので、体力に自信がなくても大丈夫だ。毎年1月の「4ヒルズ・トーナメント」では、世界トップクラスのジャンパーが競い合う。この大会はドイツとオーストリアの4カ所で行われ、インスブルックはその中で最も標高が高い会場だ。
アンブラス城は、フェルディナント2世大公のコレクションを収蔵する、ルネサンス様式の美しい城だ。16世紀、大公は世界中から珍しいものを集めることに情熱を傾けた。「珍品の部屋」には、王侯貴族が集めた奇妙な品々が展示されている。サンゴの枝に彫刻を施したもの、巨大な貝殻で作った杯、当時の人々が信じていた「竜の骨」(実際にはマンモスの骨)など、驚きの連続だ。甲冑のコレクションは世界有数で、特に巨人症の人物が着用したとされる2.6メートルの甲冑は必見だ。庭園も見応えがあり、ハプスブルク家の肖像画ギャラリーも併設されている。
スワロフスキー・クリスタルワールドは、クリスタルの巨人の顔が目印のテーマパークだ。1995年のスワロフスキー創業100周年を記念して作られた。巨人の口から滝が流れ落ち、その中にトンネルがある。地下の「驚異の部屋」には、世界的アーティストが手がけたインスタレーションが並ぶ。ブライアン・イーノの光のインスタレーション、草間彌生の無限の鏡の部屋風の空間、巨大なクリスタルドームなど、幻想的な体験が続く。ショップではスワロフスキー製品を購入でき、中にはここでしか買えない限定品もある。インスブルックから無料シャトルバスで約20分、半日は楽しめる。
チロル・パノラマ博物館には、1809年のチロル独立戦争を描いた巨大なパノラマ画が展示されている。周囲約100メートルの円形の絵画は、当時の戦いの様子を臨場感たっぷりに伝える。チロルの農民たちがナポレオン軍とバイエルン軍に対して蜂起し、一時的に独立を勝ち取った歴史的事件だ。指導者アンドレアス・ホーファーは、今もチロルの英雄として讃えられている。隣接する皇帝猟兵博物館とセットで見学できる。
アルペン動物園は、アルプスに生息する動物だけを集めたユニークな動物園だ。標高727メートルに位置し、ヨーロッパで最も高い場所にある動物園の一つだ。アイベックス、シャモア、ヒグマ、オオカミ、アルプスサラマンダーなど、約2,000匹の動物が飼育されている。多くの動物はアルプスの自然環境を再現した広い囲いの中で暮らしており、野生に近い姿を観察できる。動物園からインスブルック市街を見下ろす眺めも素晴らしい。
市庁舎塔からは、旧市街を360度見渡せる。1450年に建てられた高さ51メートルのこの塔は、かつて火災監視塔として使われていた。133段の階段を登る必要があるが、その価値は十分にある。上からは黄金の小屋根、周囲の山々、そして旧市街の赤い屋根が一望できる。ヘルブリングハウスのロココ様式のスタッコ装飾、凱旋門、聖アンナの柱など、旧市街の見どころは徒歩圏内に集中している。凱旋門は1765年にマリア・テレジアの息子レオポルトの結婚を祝って建てられたが、同時に夫フランツ1世の死を悼むものでもあり、片面は祝賀、もう片面は追悼のモチーフが彫られている。
ザルツカンマーグート地域:湖と山の絶景
ハルシュタットは、世界で最も美しい湖畔の村として知られる。人口わずか800人の小さな村だが、年間100万人以上の観光客が訪れる。ユネスコ世界遺産にも登録され、その景観は中国の広東省にレプリカが作られるほど愛されている。アルプスの山々に囲まれた湖畔に、カラフルな木造家屋がひしめき合う様子は、まるで絵本の中の世界だ。
ただし、その人気ゆえに観光公害が問題になっている。特に夏のハイシーズンには、狭い通りが観光客で溢れかえり、地元住民の生活に支障をきたしている。2020年からは観光バスの台数制限が導入された。静かな村を楽しみたいなら、早朝か夕方、あるいはオフシーズン(11月~3月)に訪れることをお勧めする。
ハルシュタット絶景ポイントは、尖塔を持つ教会と湖に映る家々を一枚の写真に収められる場所だ。この景色は世界中のインスタグラムで見かけるが、実際に目にすると、その美しさは写真以上だ。早朝、観光客が少ない時間帯に訪れることをお勧めする。朝もやの中に浮かぶ村の姿は、神秘的だ。マルクト広場は村の中心で、カフェやショップが軒を連ねている。広場を囲む建物の多くは16~17世紀に建てられたもので、よく見ると壁に彫刻や絵が描かれている。
ハルシュタット岩塩坑は、世界最古の岩塩坑だ。7,000年前から塩の採掘が行われており、「ハルシュタット」という名前自体が「塩の町」を意味する。先史時代、塩は「白い金」と呼ばれるほど貴重で、この村を豊かにした。見学ツアーでは、坑道を歩き、木製スライダーで下り、地底湖を船で渡る。スライダーは最長で64メートルあり、かなりのスピードが出るのでスリル満点だ。坑内では、3,000年前の保存状態の良い道具や、ケルト時代の鉱夫の遺体のレプリカも見ることができる。
ハルシュタット・スカイウォークは、塩坑の上に設置された展望台で、湖と村を見下ろす絶景が広がる。高さ360メートルの崖から突き出たプラットフォームは、足元がガラス張りになっている部分もあり、高所恐怖症の人には厳しいかもしれない。ケーブルカー(ザルツベルクバーン)で上がれるので、体力に自信がない人でも安心だ。ファイブフィンガーズ展望台はさらに壮大で、5本の指のような形の展望デッキが崖から突き出している。ダッハシュタイン山塊にあるこの展望台は、ハルシュタットから車かバスで約30分の場所にある。
ハルシュタット湖では、ボートレンタルや遊覧船でのクルーズが楽しめる。湖の透明度は高く、夏には泳ぐこともできる。湖には公式の遊泳区域がいくつかあり、桟橋から飛び込む人々の姿も見られる。水温は夏でも20度前後と冷たいが、アルプスの景色を眺めながらの水泳は格別だ。エッヒェルン渓谷は、村から徒歩で行ける美しいハイキングコースだ。ヴァルトバッハストルプ滝まで片道約1時間、森の中を歩く気持ちの良いトレイルだ。滝は3段に分かれ、落差は約90メートル。周囲の緑と相まって、清涼感たっぷりだ。
ダッハシュタイン巨大氷洞窟とマンムート洞窟は、ハルシュタット近郊の必見スポットだ。ケーブルカーでクリッペンシュタインまで上がり、そこから徒歩で洞窟入口に向かう。氷洞窟の内部は青白く輝き、自然が作り出した氷の彫刻は息をのむ美しさだ。照明が巧みに配置されており、まるで氷の宮殿にいるような気分になる。マンムート洞窟は氷洞窟とは異なり、石灰�ite形成された鍾乳洞だ。「マンムート」はマンモスを意味するが、これは洞窟の巨大さを表現したもので、実際にマンモスがいたわけではない。ハルシュタット氷河庭園では、氷河が削った岩の芸術を見ることができる。
ハルシュタット納骨堂は、墓地のスペース不足から生まれた独特の文化だ。約1,200個の頭蓋骨が整然と並べられ、その多くには花や十字架、故人の名前が描かれている。ハルシュタットは山と湖に挟まれた狭い土地で、墓地を拡張する余地がなかった。そのため、埋葬後10~15年で遺骨を掘り起こし、洗浄して納骨堂に安置する習慣が生まれた。不気味に感じるかもしれないが、これは死者への敬意を表すこの地域の伝統だ。最も新しい頭蓋骨は1995年に追加されたもので、遺言でこの伝統を続けることを希望した女性のものだ。
ハルシュタット世界遺産博物館では、この地域の7,000年の歴史を学べる。塩の交易で栄えた先史時代、ケルト人の文化、ローマ時代の遺物などが展示されている。考古学的に「ハルシュタット文化」という用語があるほど、この地域は先史時代の研究において重要だ。紀元前800年~450年頃のヨーロッパ鉄器時代初期は、ハルシュタットで発見された遺物にちなんで「ハルシュタット期」と呼ばれている。マリア・アム・ベルク教会と福音派教会は、どちらも湖のパノラマを背景にした美しい教会だ。
シュタイアーマルク地域:緑の心臓と美食の宝庫
グラーツはオーストリア第2の都市で、旧市街全体がユネスコ世界遺産に登録されている。人口約30万人、6つの大学を抱える学生の街として活気に満ちている。ウィーンの陰に隠れがちだが、イタリアに近い温暖な気候、そして美食の街としての評判を持つ。シュタイアーマルク州はオーストリアのトスカーナと呼ばれ、ワイン、カボチャの種油、りんごの産地として知られる。2003年には欧州文化首都に選ばれ、その際に建設された現代建築が街に新しい魅力を加えている。
シュロスベルク(城山)は、グラーツのシンボルだ。標高473メートルのこの丘からは、グラーツ市街のパノラマが広がる。頂上には時計塔がそびえ、その独特なシルエットは街のどこからでも見える。ケーブルカー(シュロスベルクバーン)かエレベーター(ガラス張りで景色が楽しめる)、または260段の階段で登ることができる。時計塔の針は長針と短針が逆になっている。これは、遠くからでも「時」がわかるようにデザインされたからだ。当初は時針だけだったが、後から分針を追加したためこのような形になった。
シュロスベルクにはかつて巨大な城塞があったが、ナポレオン軍に破壊された。ただし、時計塔と鐘楼は住民たちが身代金を支払って残した。今でも毎日7時、12時、19時に101回の鐘が鳴る。丘の内部には、第二次世界大戦中に掘られた地下トンネルがあり、一部は見学可能だ。夏には野外劇場やカフェも営業している。
クンストハウス・グラーツは「フレンドリー・エイリアン」の愛称を持つ、青い泡状の外観が特徴的な現代美術館だ。2003年の欧州文化首都記念に建設され、周囲の歴史的建造物との対比が議論を呼んだが、今ではグラーツのランドマークとして親しまれている。イギリス人建築家ピーター・クックとコリン・フルニエの設計で、外壁には約1,000個のLEDが埋め込まれており、夜には様々なパターンが表示される。内部では現代アートの企画展が開催されており、コレクションは持っていない。建物自体がアートであり、展示よりも建築を見に来る人も多い。
ハウプトプラッツ(中央広場)は、旧市街の中心で、グロッケンシュピールの仕掛け時計が観光客を集める。毎日11時、15時、18時に、民族衣装を着た人形が踊る。もともとこの建物は薬局で、当時の薬局主が時計を設置したという。旧市街は、イタリアン・ルネサンスの影響を受けた建築が美しく、散策するだけで楽しい。中庭(インナーホフ)を持つ建物が多く、通りから奥に入ると思わぬ空間が広がっていることがある。
エッゲンベルク宮殿は、グラーツ郊外にあるバロック様式の宮殿で、ユネスコ世界遺産にも登録されている。17世紀に建設されたこの宮殿は、天文学と時間の象徴で満ちている。24のステート・ルーム(1日24時間)、365の窓(1年365日)、52の扉(1年52週)、4つの塔(四季)。内装のフレスコ画やスタッコ装飾は見事で、特に「惑星の間」は必見だ。庭園には孔雀が放し飼いにされており、のどかな雰囲気だ。併設の考古学博物館と古銭博物館も興味深い。
シュタイアーマルク武器庫は、32,000点もの武具を収蔵する世界最大の歴史的武器庫だ。16~17世紀、オスマン帝国の脅威に備えるために集められた武器がそのまま残されている。甲冑、剣、銃、大砲がオリジナルの場所に展示されており、まるで中世の武器庫に迷い込んだような感覚になる。特に印象的なのは、何列にも並んだ甲冑の列だ。当時の兵士たちが実際に着用していたものが、400年以上経った今も整然と並んでいる。
ムーリンゼルは、ムール川に浮かぶ人工の島で、カフェと劇場が併設されている。2003年の欧州文化首都を記念して建設されたもので、ニューヨークの建築家ヴィト・アコンチの設計だ。流線型のデザインは、水に浮かぶ貝殻のようだ。両岸と橋で繋がっており、川の流れを眺めながらコーヒーを楽しめる。夜にはライトアップされ、幻想的な雰囲気になる。今では地元の人々にも親しまれ、デートスポットとしても人気だ。
グラーツ大聖堂は、15世紀に建設されたゴシック様式の教会で、外壁には「神の災い」を描いた中世のフレスコ画が残っている。1485年に描かれたこのフレスコ画は、ペスト、オスマン帝国の侵攻、イナゴの大群という当時グラーツを脅かした3つの災いを表現している。内部は後にバロック様式に改装されたが、ゴシックの骨格は残っている。フェルディナント2世の霊廟は、隣接するマニエリスム様式の傑作で、ハプスブルク皇帝の墓所となっている。17世紀初頭に建設されたこの霊廟は、イタリア人建築家の設計で、当時の最先端のスタイルだった。
二重らせん階段は、1499年に建設された建築の驚異だ。旧市庁舎の中庭にあるこの階段は、二つの階段が絡み合いながら上昇し、各階で出会っては離れる。その幾何学的な美しさは、中世の建築技術の高さを示している。恋人たちがそれぞれの階段を登り、各階で出会うロマンチックな場所としても知られている。無料で見学でき、グラーツの隠れた名所だ。
ザルツブルガーラント地域:アルプスの湖と氷河
ツェル・アム・ゼーは、同名の湖のほとりにあるリゾート町だ。夏は水泳、セーリング、ハイキング、冬はスキーと、一年中アウトドアアクティビティが楽しめる。人口約1万人の小さな町だが、観光インフラは充実しており、高級ホテルからホステルまで様々な宿泊施設がある。近年は中東(特に湾岸諸国)やアジアからの観光客にも人気で、国際色豊かな雰囲気がある。町の中心部はコンパクトで歩きやすく、湖畔の遊歩道は散策に最適だ。
ツェラー湖は、アルプスの山々に囲まれた青く美しい湖だ。周囲約12キロメートル、水深68メートルの湖は、夏には水温が最高25度まで上がり、泳ぐことができる。湖畔には遊歩道が整備されており、散策やサイクリングに最適だ。湖水浴場がいくつかあり、飛び込み台やウォータースライダーが設置された場所もある。レンタルボートやスタンドアップパドルボードも楽しめる。冬には湖が凍結すると、アイススケートやカーリングのリンクとして使われることもある(ただし毎年凍るわけではない)。
キッツシュタインホルン氷河は、年間を通じてスキーが可能なオーストリアで数少ない場所の一つだ。ケーブルカーで標高3,029メートルまで登れば、トップ・オブ・ザルツブルクと呼ばれる展望台からアルプスの360度パノラマが広がる。晴れた日には、オーストリア最高峰のグロースグロックナー(3,798メートル)を含む30以上の3,000メートル級の山々が見渡せる。夏でもスキーを楽しむ人々で賑わい、ナショナルチームの合宿地としても使われている。スキー以外にも、氷河ハイキングやアイスアリーナ(氷の洞窟を再現した施設)を楽しめる。
カプルン・スキーリゾートは、ツェル・アム・ゼーと合わせて一つの巨大なスキーエリア「スキー・アレナ・ツェル・アム・ゼー・カプルン」を形成している。138キロメートルのゲレンデ、ビギナーからエキスパートまで対応する多様なコース、そして最新のリフト設備。日本のスキーヤーにとっては、パウダースノーと広大なゲレンデが魅力だ。スキーパスは共通で、キッツシュタインホルン氷河も含まれる。町からスキー場へのアクセスはスキーバスが便利で、朝から夜まで頻繁に運行している。
オーストリアの自然遺産:アルプスと湖水の魅力
オーストリアの国土の約62%は山岳地帯で、アルプスの東端に位置する。その景観は、スイスの険しい山々とは異なり、緑豊かな牧草地と点在する村々が織りなす穏やかな美しさだ。標高3,798メートルのグロースグロックナーはオーストリア最高峰で、氷河を抱くその姿は畏敬の念を抱かせる。オーストリアのアルプスは3つの主要な山脈で構成されている。北アルプス(石灰岩質、ハイキングに最適)、中央アルプス(結晶片岩質、最も高い山々)、南アルプス(カルニック・アルプスなど)だ。
グロースグロックナー・ホッホアルペン道路は、ヨーロッパで最も美しいドライブルートの一つだ。全長48キロメートル、36のヘアピンカーブを持つこの道路は、通常5月下旬から10月中旬まで開通している。1935年に完成したこの道路は、当時の土木技術の粋を集めたもので、今でもその設計の美しさは色褪せない。フランツ・ヨーゼフス・ヘーエ展望台からは、パステルツェ氷河を間近に見ることができる。ただし、この氷河は気候変動の影響で急速に後退しており、1850年以降、長さが4キロメートル以上縮小している。入場料は車1台につき約40ユーロで、道路沿いには展示館やレストラン、展望台が点在している。バイク、自転車、ハイキングでの通過も可能だ。
ザルツカンマーグートには76の湖が点在し、それぞれが独自の魅力を持つ。トラウン湖は最も深く(最大水深191メートル)、アッター湖は最も大きく(面積約46平方キロメートル)、モント湖は「サウンド・オブ・ミュージック」で使われた(映画冒頭の有名なシーンで、山の上からマリアが歌いながら駆け下りてくる場所)。これらの湖は、氷河期に氷河が削ったU字谷に水が溜まってできたもので、水の透明度は驚くほど高い。夏には泳ぐことができ、水温は場所によっては25度を超えることもある。
ザンクト・ヴォルフガングからのシャーフベルク登山鉄道は、1893年から運行する蒸気機関車で、湖を見下ろす絶景の旅だ。山頂(標高1,783メートル)までは約35分、蒸気機関車が急勾配を登っていく姿は、タイムスリップしたような気分になる。山頂からはザルツカンマーグートの湖々と、晴れた日には遠くアルプスの峰々まで見渡せる。現在でも一部の列車は蒸気機関車で運行されているが、効率のためディーゼル車両も使われている。蒸気機関車に乗りたい場合は、運行スケジュールを事前に確認しよう。
ホーエ・タウエルン国立公園は、オーストリア最大の自然保護区で、面積1,856平方キロメートル。グロースグロックナーを含む342の氷河、300以上の山頂、多様な高山植物と野生動物が生息する。アイベックス(野生のヤギ)、シャモア(カモシカの一種)、マーモット、アルプスヒバリ、ワシミミズクなど、アルプス固有の動物を見ることができる。国立公園内には300キロメートル以上のハイキングトレイルが整備されており、日帰りハイキングから数日間の縦走まで、様々なルートがある。公園入口にはビジターセンターがあり、地図やガイド、最新の天気情報を入手できる。
クリムル滝は、落差380メートルでヨーロッパ最大の滝だ。3段に分かれた滝は、毎秒平均5立方メートルの水が流れ落ちる。滝沿いには遊歩道が整備されており、各展望台からは異なる角度で滝を眺められる。最上段まで登ると約1時間半かかるが、その価値は十分にある。滝の水しぶきにはマイナスイオンが含まれており、喘息などの呼吸器疾患に効果があるという研究もある。そのため、「滝療法」として医療的に処方されることもある。滝は4月から11月まで見学可能で、特に雪解け水が多い5~6月が最も水量が多い。
ノルトケッテ自然公園はインスブルック近郊にあり、街の中心部から30分でアルプスの大自然に浸ることができる。面積727ヘクタールの公園には、カルスト地形が広がり、エーデルワイス、リンドウ、アルペンローゼなどの高山植物が咲く。シュタインボック(アルプスアイベックス)の群れが生息しており、運が良ければ見ることができる。公園内にはいくつかのハイキングルートがあり、初心者向けの平坦なコースから上級者向けの岩場まで多様だ。
ドナウ渓谷のヴァッハウ地方は、ワイン生産地としてユネスコ世界遺産に登録されている。メルク修道院からクレムスまでの36キロメートルは、ドナウ川クルーズの人気区間だ。急峻な斜面に段々畑が広がり、中世の城が川を見下ろす景観は、ヨーロッパの原風景そのものだ。この地域で生産されるグリューナー・フェルトリーナー種の白ワインは、世界的に高い評価を受けている。秋にはワインフェスティバルが開催され、新酒を祝う賑やかな雰囲気に包まれる。メルク修道院は11世紀創設のベネディクト会修道院で、バロック様式の図書館と教会は必見だ。
ノイジードラー湖は中央ヨーロッパ最大のステップ湖で、ハンガリーとの国境にまたがる。面積約315平方キロメートル、最深部でもわずか1.8メートルの浅い湖は、独特の生態系を育んでいる。湖の周囲は広大な葦原に囲まれており、野鳥観察の名所として知られている。320種以上の鳥類が記録されており、特にヨーロッパヘラサギ、コウノトリ、白鷺などが見られる。湖畔の村々は、パンノニア平原の文化を今に伝えており、ワイン生産も盛んだ。この地域もユネスコ世界遺産に登録されている。
ベストシーズン:季節ごとの魅力
オーストリアは四季がはっきりしており、それぞれの季節に独自の魅力がある。いつ訪れても何かしらの楽しみがあるが、目的に応じて最適な時期を選ぶことで、旅の満足度は大きく変わる。
春(4月~5月)は、ウィーンの公園で桜やチューリップが咲き乱れる季節だ。シェーンブルン宮殿の庭園、フォルクスガルテン、シュタットパルクは花で彩られ、カフェのテラス席が賑わい始める。観光客は夏ほど多くなく、価格も比較的抑えめ。ただし、アルプスの高地はまだ雪が残っていることがあり、ハイキングには早いかもしれない。山小屋の多くは6月中旬にならないと開かない。イースターの時期(3月下旬~4月)には各地で市が立ち、華やかな雰囲気に包まれる。ウィーンのシェーンブルン宮殿前やシュテファン大聖堂前では、イースターマーケットが開催される。
夏(6月~8月)は観光のハイシーズンだ。ザルツブルク音楽祭(7月下旬~8月)は世界最高峰の音楽祭で、この期間中はホテルの予約が困難になり、価格も通常の2~3倍に跳ね上がる。早めの計画が必須だ。アルプスのハイキングシーズンで、山小屋も開いている。長いトレイルを歩く計画なら、山小屋の予約も事前に行うことをお勧めする。ウィーンは非常に暑くなることがあり(30度超え)、エアコンのない古い建物では寝苦しい夜もある。特に7~8月は熱波が来ることがあるので、水分補給をしっかりと。湖での水泳やアウトドアプールは最高の季節だ。
秋(9月~10月)は、個人的に最もお勧めの季節だ。観光客が減り始め、価格も下がる。ブドウの収穫期で、ワイン産地ではホイリゲ(新酒酒場)が賑わう。シュトゥルム(発酵途中の新酒)は、この季節だけの味わいだ。紅葉がアルプスの山々を彩り、黄金色のカラマツ林は息をのむ美しさだ。写真撮影には最高の季節で、晴れた日にはアルプスの山々がくっきりと見える。ただし、10月後半からは天気が不安定になり、雨が増える。この時期に訪れるなら、折りたたみ傘は必携だ。
冬(11月~3月)は、スキーヤーにとっての天国だ。オーストリアには400以上のスキー場があり、合計7,000キロメートル以上のゲレンデがある。特に有名なのは、サンクト・アントン、ゼルデン、キッツビューエル、レッヒ、ザールバッハなど。12月からはクリスマスマーケットが各地で開かれ、ホットワイン(グリューワイン)とジンジャーブレッドの香りが漂う。ウィーンのクリスマスマーケットは特に有名で、市庁舎前広場には約150の店舗が並ぶ。11月中旬から12月26日まで開催される。大晦日にはウィーンの旧市街が巨大なパーティー会場と化し、シュテファン大聖堂の鐘の音で新年を迎える「シルヴェスターパーティー」が開催される。
避けるべき時期はあまりないが、11月は中途半端な季節だ。紅葉は終わり、クリスマスマーケットはまだ始まっていない。スキー場も多くは11月下旬まで開かない。天気も悪く、日照時間が短い(日没は16時頃)。この時期にはウィーンやグラーツの室内観光に徹するか、いっそ避けた方が賢明だ。また、8月中旬のお盆の時期は日本人観光客で混雑し、航空券も高騰する。可能であれば、9月の方が快適に旅行できる。
オーストリアの祝日にも注意が必要だ。12月25~26日、1月1日、イースター(日付は年により異なる、3月下旬~4月)、5月1日(メーデー)、昇天祭(イースターの40日後)、聖体祭(5月~6月)、8月15日(聖母被昇天祭)、10月26日(国民の日)、11月1日(諸聖人の日)は多くの店舗が閉まる。特にウィーンでは日曜日と祝日は基本的にスーパーも閉店するので、事前に食料を確保しておくことをお勧めする。駅や空港のスーパーは日曜も営業していることが多い。
アクセスガイド:日本からの行き方
日本からオーストリアへのアクセスは、主にウィーン国際空港(VIE)を利用する。ウィーン国際空港はオーストリア最大の空港で、年間約3,000万人が利用する。直行便はオーストリア航空(ANA共同運航)が成田から毎日運航しており、所要時間は約12時間だ。全日空(ANA)も直行便を運航している。直行便の価格は往復で15~25万円程度が相場だが、繁忙期(夏休み、年末年始、ゴールデンウィーク)はさらに高くなる。
乗り継ぎ便を利用すれば、価格を抑えることができる。ルフトハンザ(フランクフルト、ミュンヘン経由)、エミレーツ(ドバイ経由)、カタール航空(ドーハ経由)、ターキッシュエアラインズ(イスタンブール経由)などが主な選択肢だ。乗り継ぎ時間を含めると16~20時間かかるが、8~15万円程度で購入できることもある。エミレーツやカタール航空は機内サービスの質が高く、長時間のフライトでも快適に過ごせる。トルコ航空は価格が比較的安く、イスタンブールでの乗り継ぎ時間が長い場合は無料の市内観光ツアーも提供している。
ザルツブルク空港(SZG)はウィーンよりコンパクトで、ザルツブルクやチロル地方を目的地とする場合は便利だ。日本からの直行便はないが、ミュンヘンやフランクフルトで乗り継げる。特にミュンヘンからザルツブルクまでは電車で約1時間30分なので、ミュンヘン着便を利用してそのまま電車でザルツブルクに向かうのも現実的だ。ミュンヘン空港には駅が直結しており、乗り換えも簡単だ。
インスブルック空港(INN)は小規模だが、冬季はスキー客向けのチャーター便が増える。夏はウィーンやフランクフルトからの国内線・近距離便が主だ。空港から市内までバスで約20分と便利な立地で、タクシーでも約15分、20ユーロ程度だ。チロル地方でのスキーを計画している場合は、インスブルック空港の利用を検討する価値がある。
鉄道でのアクセスも現実的だ。ヨーロッパ内を旅行している場合、列車でオーストリアに入国するのは快適で景色も楽しめる。ミュンヘンからザルツブルクは特急(ユーロシティ)で約1時間30分、ウィーンは約4時間。チューリッヒからウィーンは約8時間だが、寝台列車のナイトジェットを利用すれば、寝ている間に移動できる。ナイトジェットは個室寝台、簡易寝台、座席の3タイプがあり、個室寝台には朝食も付いている。パリからも同様にナイトジェットが運行しており、夜出発して朝ウィーンに到着する。
ウィーン国際空港から市内へは、CAT(シティエアポートトレイン)で約16分、ウィーンミッテ駅に到着する。料金は片道12ユーロ(往復21ユーロ)だ。専用ホームからノンストップで走るので、荷物が多い場合や時間が読めない場合に便利だ。より安い選択肢としてはS7(Sバーン)があり、片道4.40ユーロで約25分、ウィーンミッテ駅に到着する。途中駅に停車するが、料金は1/3以下だ。タクシーは約30~40ユーロ、所要時間20~30分。Uberも利用可能で、タクシーとほぼ同じ料金だがアプリで事前に料金が確定するのが安心だ。リムジンバスは7ユーロで、ウィーン中央駅やシュヴェヒャートプラッツに停車する。
国内交通:効率的な移動方法
オーストリア国内の移動は、鉄道が最も便利で効率的だ。OBB(オーストリア連邦鉄道)が全国を網羅しており、主要都市間は高速列車Railjetで結ばれている。Railjetは最高時速230キロメートルで走り、快適なシートと電源コンセント、WiFi(品質は路線による)を備えている。ウィーン~ザルツブルク間は約2時間30分、ウィーン~インスブルック間は約4時間30分、ウィーン~グラーツ間は約2時間30分だ。列車は通常30分~1時間間隔で運行されており、予約なしでも乗車できる(ただし繁忙期は座席が埋まることもある)。
鉄道チケットは早期予約で大幅に割引される。通常料金(フレックス)と比べ、スパルシュニー(格安運賃)なら最大50%オフになることもある。スパルシュニーは指定列車のみ有効で、変更・払い戻し不可だが、旅程が確定しているなら使わない手はない。OBBのウェブサイトやアプリで簡単に予約・購入できる。日本語対応はないが、英語で問題なく利用できる。チケットはPDFまたはアプリ内のQRコードで表示でき、印刷する必要はない。
1等車(Erste Klasse)と2等車(Zweite Klasse)の違いは、座席の広さとコンセントの有無、車内サービスなどだ。1等車は座席が2+1配列で、2等車は2+2配列。2等車でも十分快適だが、長距離移動では1等車の余裕ある座席は魅力的だ。1等車には無料のコーヒーやスナックのサービスがある(ビジネスクラスと同様)。また、1等車の乗客はラウンジ(ウィーン中央駅など)を利用できる。
鉄道パスも検討に値する。ユーレイル・オーストリアパス(3~8日間の移動が可能)や、ユーレイル・グローバルパス(ヨーロッパ33カ国で使用可能)は、頻繁に列車を利用する場合はお得になることがある。ただし、計算してみると個別にチケットを買った方が安いこともあるので、事前に比較することをお勧めする。
レンタカーはアルプスの小さな村々を巡るには便利だが、いくつかの注意点がある。まず、オーストリアのアウトバーン(高速道路)はヴィニエット(通行証)が必要で、10日間で9.90ユーロ、2カ月間で29.00ユーロだ。国境の給油所やオンラインで購入できる。デジタル・ヴィニエット(オンライン購入)は車のナンバープレートに紐付けられるので、貼り付ける必要がない。このステッカーがないと最大240ユーロの罰金を科せられる。チェックは自動カメラで行われるので、逃れることは難しい。
冬季(11月~4月)には冬用タイヤの装着が義務付けられている。レンタカーには標準装備されているはずだが、受け取り時に確認することをお勧めする。アルプスの峠道は、特に冬は積雪や凍結があり、運転には注意が必要だ。主要な峠には通行止めや時間規制の情報が掲示されている。グロースグロックナー・ホッホアルペン道路など、多くの峠道は冬季は閉鎖される。山岳地帯の道路状況は、OAMTCのウェブサイトやアプリで確認できる。
市内の移動は、各都市の公共交通機関を利用するのが便利だ。ウィーンは地下鉄(Uバーン)5路線、トラム(路面電車)29路線、バスが充実しており、ほぼどこへでも行ける。24時間券(8ユーロ)、48時間券(14.10ユーロ)、72時間券(17.10ユーロ)がお得だ。チケットは駅の自動販売機、タバコ店(Tabak-Trafik)、アプリで購入できる。乗車前に刻印機でチケットに打刻することを忘れずに。打刻しないと無賃乗車と見なされ、約100ユーロの罰金を科せられる。ザルツブルク、インスブルック、グラーツも同様に便利なバス・トラム網がある。
タクシーは比較的高額だが、安全で信頼できる。メーター制で、初乗りは約4ユーロ、1キロあたり約2ユーロだ。夜間(22時~6時)と日祝日は割増料金がかかる。Uberもウィーンで利用可能だ。料金はタクシーとほぼ同じだが、アプリで事前に料金がわかるのは安心だ。ただし、ピーク時(雨天時、イベント終了後など)には価格が上昇することがある。Boltというライドシェアアプリも利用可能で、Uberより若干安いことが多い。
自転車での移動もお勧めだ。ウィーンには1,500キロメートル以上の自転車道が整備されており、シェアサイクル「WienMobil Rad」(旧Citybike Wien)があり、最初の30分は無料で利用できる。アプリで自転車を探し、解錠し、任意のステーションに返却できる。ザルツブルク、インスブルック、グラーツにも同様のシステムがある。ドナウ川沿いのサイクリングロード(ドナウラートヴェーク)はヨーロッパで最も人気のあるルートの一つで、パッサウ(ドイツ)からウィーンまで約320キロメートルの快適な道のりだ。ウィーンからメルク修道院まで約80キロメートルは、初心者でも1~2日で走破できる平坦なコースだ。
文化とマナー:オーストリア流のふるまい
オーストリア人は礼儀正しく、形式を重んじる傾向がある。ドイツ人より柔らかく、イタリア人より控えめというのが一般的な印象だ。初対面では握手が基本で、しっかりと目を見て握手する。親しくなるとほおへの軽いキス(左右1回ずつ)をすることもある(女性同士、男女間)。挨拶は「グリュース・ゴット」(神のご加護を)が一般的で、「ハロー」よりフォーマルな印象を与える。店に入る時、エレベーターに乗る時なども「グリュース・ゴット」と言うのがマナーだ。別れ際は「アウフ・ヴィーダーゼーエン」(またお会いしましょう)や、より親しい間柄なら「チュス」(じゃあね)を使う。
名前の呼び方にも注意が必要だ。ドイツ語では「Sie」(敬称)と「Du」(親称)の使い分けがあり、初対面やビジネスシーンでは常に「Sie」を使う。「Du」は家族、親しい友人、子供に対して使うものだ。相手から「Du」への切り替えを提案されて初めて、ファーストネームで呼び合うようになる。この提案は通常、年上の人や地位の高い人からなされる。職場では何年も一緒に働いていても「Sie」のままということもある。観光客として短期間滞在する分には、常に「Sie」を使っていれば問題ない。
タイトル(称号)を使うことも重要だ。医師、教授、博士号を持つ人には「Herr Doktor」「Frau Professor」などと呼びかける。複数のタイトルを持つ人には、最も重要なものを使う。これは特に年配の世代では重要視される。オーストリア人はタイトルに誇りを持っており、省略するのは失礼にあたることがある。
レストランでのチップは、料金の5~10%程度が目安だ。サービスが良ければ10%、普通なら5%程度。現金で支払う場合は、お釣りから「刺激」(チップ分を引いた金額)を言って受け取る。例えば38ユーロの請求に50ユーロを出して「40で」と言えば、10ユーロのお釣りとなり、2ユーロがチップになる。カード払いの場合は、別途現金でテーブルに置く(ウェイターの前で)か、会計時にチップ込みの金額を言う。タクシーやホテルのポーターにも同様のチップを渡すのがマナーだ(1~2ユーロが目安)。
オーストリアでは時間厳守が美徳とされる。約束の時間に遅れるのは失礼にあたり、特にビジネスでは致命的だ。列車やバスも時刻通りに運行することが多い(遅延がある場合はアナウンスされる)。ただし、社交的な場(ディナーパーティーなど)では、ちょうどの時間ではなく15分程度遅れて到着するのがエチケットとされることもある。早すぎる到着はホストを慌てさせる可能性がある。招待された場合は、ワインや花(ただし赤いバラは恋愛を意味するので避ける)、チョコレートなどの手土産を持参するのがマナーだ。
カフェ文化はオーストリアの重要な要素だ。ウィーンのカフェハウスはユネスコ無形文化遺産に登録されており、コーヒー1杯で何時間でも過ごすことができる。ウェイターに急かされることはなく、新聞を読みながらゆったりと過ごすのが伝統だ。新聞は店内に備え付けのものを自由に読める(木製のホルダーに挟まっている)。コーヒーを注文する際は、ウィーン独自の名前を覚えておくと便利だ。「メランジェ」(カプチーノに似たもの)、「アインシュペナー」(ホイップクリーム入りエスプレッソ)、「ブラウナー」(エスプレッソにミルク少々)、「フェアレンガーター」(薄めのコーヒー)など。コーヒーと一緒に水のグラスが出てくるのが伝統で、コーヒーの苦味を中和するためだ。この水は無料でおかわりもできる。
オペラやコンサートに行く際は、ドレスコードに注意しよう。ウィーン国立歌劇場や楽友協会の主要公演(プレミエ、ガラ)では、男性はダークスーツにネクタイ、女性はイブニングドレスやカクテルドレスが望ましい。ただし、一般公演や立ち見席ではカジュアルスマートで問題ない。短パン、サンダル、ビーチウェアは避けるべきだ。開演後は入場できないことが多いので、余裕を持って到着しよう。上演中は私語を慎み、拍手は曲が完全に終わってから。オペラでは幕間に「ブラボー」の掛け声をかけることもある。
教会を訪問する際は、肩と膝を覆う服装が求められる。夏でもタンクトップや短パンでは入場を拒否されることがある。ストールやカーディガンを持参しておくと便利だ。ミサ中の観光は控え、写真撮影も遠慮するのがマナーだ。ただし、観光客向けに開放されている時間帯であれば、静かに見学し、フラッシュを使わなければ写真撮影は問題ないことが多い。
オーストリアでは日曜日は「静かな日」(Ruhetag)とされている。芝刈りや大きな音を立てる作業は法律で禁止されており、多くの店舗も閉まっている。大型スーパー、デパート、一般の商店は日曜日は閉店だ。ただし、観光地のレストランやカフェ、一部のスーパー(駅構内、空港など)は営業している。また、ミュージアムやアトラクションの多くは日曜日も開いている。日曜日は家族で過ごす日という伝統が今も残っており、公園やハイキングコースは家族連れで賑わう。
安全情報:安心して旅を楽しむために
オーストリアは世界で最も安全な国の一つだ。世界平和度指数で常にトップ10に入っており、犯罪率は低く、女性の一人旅でも安心して楽しめる。街を深夜に歩いていても、特に危険を感じることはない。ただし、観光地でのスリや置き引きには注意が必要だ。特にウィーンの地下鉄(特にU3とU6の一部)、ナッシュマルクト周辺、シェーンブルン宮殿、シュテファン大聖堂周辺など観光客が集まる場所では、貴重品は体の前で持ち、バッグは常に目の届く場所に置くようにしよう。スリはグループで行動し、一人が注意をそらしている間に別の一人が盗むという手口が多い。
警察は「Polizei」と呼ばれ、紺色の制服を着ている。緊急番号は133だ。救急車は144、消防は122、統一緊急電話は112(EU共通)。112は携帯電話のSIMカードがなくても、電波が入れば通じる。英語が通じる場合がほとんどだが、混雑時は少し待たされることがある。観光客が多いエリアには「ツーリストポリス」のオフィスもある。
日本大使館はウィーンのへッシング通り6番地(Hessgasse 6, 1010 Wien)にあり、緊急連絡先は+43 1 531 92 0だ。パスポートの紛失、盗難、緊急事態の際は連絡を。領事窓口は平日9:00~12:30、13:30~17:00。ただし、日本の祝日とオーストリアの祝日は閉館するので注意。緊急時(逮捕、事故など)は時間外でも対応してくれる。
医療費は日本と比べてやや高額だが、EU基準では中程度だ。旅行保険への加入を強くお勧めする。処方箋なしで買える薬は「Apotheke」(薬局)で購入できるが、日本の市販薬と成分が異なることがあるので注意が必要だ。痛み止め(パラセタモール、イブプロフェン)、風邪薬、胃腸薬などは薬局で購入できる。持病のある方は、英語で書かれた処方箋のコピーと、薬の一般名(ブランド名ではなく)のリストを持参することをお勧めする。緊急の場合は、病院の救急外来(Notaufnahme)に行くことができる。
水道水は全土で飲料可能で、アルプスの湧き水がそのまま蛇口から出てくる。ウィーンの水道水は、100キロメートル以上離れたアルプスから引かれた新鮮な湧き水だ。ボトル入りの水を買う必要はなく、マイボトルを持参すれば経済的だ。街中には公共の飲料水噴水もある。レストランで水を頼むと、有料のミネラルウォーター(Mineralwasser)が出てくるので、水道水が欲しい場合は「Leitungswasser」(水道水)と言えばよい。無料で出してくれる。
山岳地帯では天候の急変に注意が必要だ。午後になると雷雨が発生しやすく、標高の高い場所では夏でも低体温症の危険がある。ハイキングに出かける際は、天気予報を確認し、防寒具(フリースやウインドブレーカー)と雨具を必ず携行しよう。登山道は整備されているが、岩場や急斜面では滑落の危険もある。コースから外れないことが基本だ。携帯電話の電波が届かない場所も多いので、単独行動は避け、予定ルートを誰かに伝えておくこと。山岳救助隊(Bergrettung)の緊急電話は140。
アルプスでのスキーやスノーボードは、保険への加入を強くお勧めする。ゲレンデ外(オフピステ)での事故は自己責任となり、ヘリコプターでの救助は数千ユーロの費用がかかることがある。また、雪崩のリスクがある地域では、ビーコン(雪崩探知機)、プローブ(探り棒)、シャベルの携行が推奨される。スキーパトロールは常にゲレンデを監視しており、危険な箇所はロープやサインで示されている。酔っ払ってのスキーは危険なだけでなく、法律違反となることもある。
夜間の外出は基本的に安全だが、ウィーンのカールスプラッツ駅周辺(特にオペラ座の反対側)やプラーターの一部は、夜遅くなると雰囲気が変わることがある。薬物関連の問題がある地域で、危険というほどではないが、一人での深夜の外出は避け、タクシーを利用するのが賢明だ。酔客によるトラブルは、大きなイベント(サッカー試合、コンサートなど)の後に増える傾向がある。
医療と健康:旅行前の準備
オーストリアへの旅行に必要な予防接種は特にないが、いくつかの推奨事項がある。破傷風とジフテリアの予防接種が最新であることを確認しておくと安心だ。これらは通常10年ごとに追加接種が必要だ。山岳地帯でダニに咬まれる可能性があるため、ダニ脳炎(FSME/TBE)のワクチンも検討に値する。このワクチンはヨーロッパで広く推奨されており、オーストリアでは人口の約85%が接種している。日本では一般的でないため、かかりつけ医やトラベルクリニックに相談するとよい。ダニは春から秋にかけて活発で、森林や草むらを歩く予定がある場合は特に注意が必要だ。
EU加盟国間ではEHIC(欧州健康保険カード)が相互に有効だが、日本人旅行者はこの恩恵を受けられない。海外旅行保険への加入を強くお勧めする。特に、医療費と緊急搬送をカバーするプランを選ぶことが重要だ。山岳地帯でのヘリコプター救助は1回で1万ユーロ以上かかることがあり、保険なしでは大きな負担になる。クレジットカード付帯の保険だけでは補償額が不十分な場合があるので、内容を確認しておこう。
薬局(Apotheke)は緑の十字マークが目印だ。処方箋なしで買える薬(OTC)も扱っているが、日本とは成分や用量が異なることがある。例えば、日本で一般的な「総合感冒薬」のようなものはなく、症状ごとに薬を選ぶ必要がある。薬剤師は英語を話せることが多く、症状を説明すれば適切な薬を勧めてくれる。営業時間は通常、平日8:00~18:00、土曜は12:00まで。日曜・祝日は閉まっているが、輪番で夜間・休日営業(Nacht-/Notdienst)の薬局がある。薬局の入口に、最寄りの営業中の薬局の情報が掲示されている。
常用薬がある場合は、旅行期間分+予備を持参し、英語の処方箋コピーも携行しよう。薬の一般名(ジェネリック名)を知っておくと、海外で同等の薬を探す際に役立つ。液体の薬を機内持ち込みする場合は、100ml以下の容器に分けるか、医師の診断書を用意しておく必要がある(診断書があれば100mlを超える医薬品も持ち込める)。インスリンや注射器も同様に、医師の証明書があれば持ち込める。
高山病は、標高2,500メートル以上の場所に急激に上がった場合に起こりうる。キッツシュタインホルン氷河(標高3,029メートル)やノルトケッテ山頂(標高2,334メートル)を訪れる際は、ゆっくりと順応する時間を取り、頭痛や吐き気を感じたら下山することが大切だ。水分を十分に取り、アルコールは控えめにする。心臓疾患や呼吸器疾患がある方は、医師に相談してから高地を訪れることをお勧めする。
食物アレルギーがある場合は、ドイツ語でアレルゲンを説明できるカードを用意しておくと便利だ。EUの規制により、レストランのメニューにはアレルゲン情報(グルテン、ナッツ、乳製品、卵、甲殻類など14種類)がコード(A~Rのアルファベット)で表示されていることが多い。各アレルゲンに対応するコードを覚えておくか、ウェイターに確認しよう。ベジタリアンやビーガンの選択肢は年々増えているが、伝統的なオーストリア料理は肉中心であることを念頭に置いておこう。ウィーンやグラーツではベジタリアン/ビーガンレストランも増えているが、地方では選択肢が限られる。
予算と費用:賢くお金を使う
オーストリアの物価は西ヨーロッパの平均的なレベルで、スイスよりは安く(約30~40%安い)、東欧(チェコ、ハンガリーなど)よりは高い(約50~100%高い)。ドイツやフランスとほぼ同程度か、やや高い印象だ。1日あたりの予算は、バックパッカー(ホステル泊、自炊中心、無料の観光地)なら60~80ユーロ、ミッドレンジ(中級ホテル、レストランでの食事、主要観光地)で120~180ユーロ、快適な旅(高級ホテル、良いレストラン、オペラ等)なら200ユーロ以上を見込んでおくとよい。
宿泊費は場所と季節により大きく変動する。ウィーンの中級ホテル(3~4つ星)は1泊100~150ユーロ、ホステルのドミトリーは25~40ユーロが目安だ。Airbnbはホテルより安いことが多く、アパートメントタイプなら自炊もできる。ザルツブルク音楽祭の期間中(7月下旬~8月)や、スキーリゾートのハイシーズン(クリスマス~新年、2月)は価格が2倍以上になることもある。逆に、オフシーズン(11月、1月後半~2月前半)は大幅な割引が期待できる。Booking.comやAirbnbでの早期予約がお得だ。
食事は、ランチを安く抑えるのがコツだ。多くのレストランでは「Mittagsmenu」(ランチセット)を10~15ユーロで提供している。スープ、メイン、時にはデザートも付いてこの価格は、ディナーの半額以下だ。スーパー(Billa、Spar、Hoferなど)でサンドイッチやサラダを買えば5ユーロ以下で済む。ベーカリー(Anker、Stroeckなど)のパンも安くて美味しい。ディナーは本格的なレストランで25~50ユーロ(ドリンク込み)、高級店では100ユーロ以上だ。チップ(5~10%)を含めて予算を立てよう。
カフェでのコーヒーは4~6ユーロ、ケーキを添えると10ユーロ程度になる。ウィーンの有名カフェ(ザッハー、ツェントラル、デメルなど)は観光地価格で高めだが、一度は体験する価値がある。地元の人が通うような小さなカフェなら、より安く、同様に美味しいコーヒーとケーキを楽しめる。ホイリゲ(ワイン居酒屋)では、グラスワイン(1/8リットル)が3~4ユーロ、1/4リットルで5~6ユーロ、軽食とともに楽しめる。地ビールは居酒屋で1パイント(0.5リットル)4~5ユーロだ。
観光のコストを抑えるには、各都市のシティカードが便利だ。ウィーンパスは1日69ユーロ、2日89ユーロ、3日99ユーロ、6日134ユーロで、60以上のアトラクションの入場料と、ホップオン・ホップオフバスが含まれる。公共交通機関は別途購入する必要がある(Vienna City Cardは公共交通機関が含まれるが、アトラクション入場は割引のみ)。ザルツブルクカードは24時間29ユーロ、48時間38ユーロ、72時間44ユーロで、主要観光地への入場と公共交通機関(市内バス、ケーブルカーなど)が無料になる。滞在日数と訪問予定地を考慮して、元が取れるかどうかを計算しよう。
クレジットカードは広く使えるが、小さな店舗やカフェでは現金のみの場合もある。特にホイリゲや小規模な飲食店は現金が必要なことが多い。VISAとMastercardが最も普及しており、American Expressは一部で使えないこともある。JCBはほとんど使えない。ATMは「Bankomat」と呼ばれ、街中に多数ある。多くの銀行ATMは24時間利用可能だ。海外ATM手数料(1回200~500円程度)を確認しておこう。一度に多めに引き出した方が、手数料の面ではお得だ。両替は銀行か正規の両替所で。空港やホテルの両替所はレートが悪いことが多い。
チップは法律上義務ではないが、サービスに満足したら5~10%を渡すのがマナーだ。レストラン、タクシー、ホテルのポーター、美容師などに適用される。カフェでテーブルサービスを受けた場合も、端数を切り上げる程度のチップを置くことが多い。例えば、3.40ユーロの会計なら4ユーロを渡して「Stimmt so」(お釣りはいりません)と言う。
ショッピングでは、EU圏外居住者は付加価値税(VAT、オーストリアでは20%)の還付を受けられる。1店舗で75.01ユーロ以上の購入が対象で、「Tax Free」「Global Blue」「Planet」などのサインがある店で手続きできる。購入時にパスポートを提示し、免税書類(Tax Free Form)をもらう。空港の税関(Zoll)で商品を見せてスタンプをもらい、還付カウンター(Global Blue、Planetなど)で現金またはクレジットカードに返金される。還付額は商品価格の約12~15%。出国直前に購入した商品は未使用・未開封で持ち出す必要がある。
おすすめモデルルート:日数別プラン
7日間ルート:黄金のトライアングル
オーストリア初心者に最適な、主要都市を効率よく巡るルートだ。ウィーン、ザルツブルク、ハルシュタット、そして可能であればインスブルックを1週間で回る。移動は主に鉄道を利用し、効率的でありながら、各都市の魅力を十分に味わえるプランだ。
1日目:ウィーン到着
到着日は移動の疲れを考慮して、軽めの観光にとどめる。空港からホテルにチェックインしたら、シュテファン大聖堂周辺の旧市街を散策しよう。グラーベン通り、ケルントナー通りを歩き、ウィーンの雰囲気を感じる。夕方には伝統的なカフェでザッハトルテとコーヒーを楽しみながら時差ボケを解消。カフェ・ザッハー、カフェ・デメル、カフェ・ツェントラルなどが有名だが、どこも混雑するので、事前に調べた穴場のカフェに行くのも良い。夜は早めに休んで翌日に備えよう。
2日目:ウィーン
午前中はシェーンブルン宮殿で過ごす。グランドツアー(40室見学)を選び、マリア・テレジアの時代に思いを馳せよう。庭園も散策し、グロリエッテ展望台まで足を延ばす。時間があれば動物園も。午後は市内中心部に戻り、ホーフブルク宮殿の皇帝の居室とシシィ博物館を見学。美術史美術館は見逃せない(特にブリューゲルのコレクション)。夜はウィーン国立歌劇場で公演を楽しむ。立ち見席なら当日でも入手可能だ。オペラに興味がなければ、ホイリゲ(ワイン居酒屋)でウィーンの夜を楽しむのも良い。
3日目:ウィーンからザルツブルクへ
午前中に見逃した観光地を訪問。ベルヴェデーレ宮殿でクリムトの「接吻」を鑑賞するか、ナッシュマルクトで食べ歩きを楽しむ。ミュージアムスクォーターのレオポルド美術館でシーレの作品を見るのもお勧めだ。昼過ぎの列車(Railjet)でザルツブルクへ移動(約2時間30分)。ウィーン中央駅から乗車し、ザルツブルク中央駅で下車。夕方にはザルツブルク旧市街に到着。ゲトライデガッセを散策し、ホーエンザルツブルク城塞の夜景を楽しむ。城塞はライトアップされ、街のどこからでも見える。
4日目:ザルツブルク
午前中はモーツァルトの生家、ザルツブルク大聖堂、レジデンツ、ドムクヴァルティーアを巡る。城塞にも登ろう(ケーブルカーが便利)。ランチは旧市街のレストランでザルツブルク料理を。午後はミラベル宮殿と庭園を訪問し、「サウンド・オブ・ミュージック」の撮影地を巡る。時間があればヘルブルン宮殿のトリックの泉へ(バスで約20分)。「サウンド・オブ・ミュージック」のファンなら、半日ツアー(約4時間、約50ユーロ)に参加するのもお勧め。映画のロケ地を効率よく回ってくれる。
5日目:ハルシュタット日帰り
早朝にザルツブルクを出発し、列車とバスでハルシュタットへ(約2時間30分)。ザルツブルク中央駅からアットナング・プッハイム(Attnang-Puchheim)で乗り換え、ハルシュタット駅へ。駅から村へはフェリーで渡る(約5分、往復6ユーロ程度)。村に到着したら、まず絶景ポイントで写真撮影。午前中の柔らかい光が最も美しい。岩塩坑とスカイウォークを見学(約2時間)。マルクト広場でランチを取り、世界遺産博物館、納骨堂を訪問。時間があればエッヒェルン渓谷をハイキング。夕方のフェリーと列車でザルツブルクに戻る。
6日目:インスブルック(またはザルツブルク追加観光)
朝の列車でインスブルックへ(約2時間)。到着後、黄金の小屋根、ホーフブルク宮殿、宮廷教会を見学。マリア・テレジア通りを散策し、アルプスを背景にした景色を楽しむ。午後はノルトケッテ・ケーブルカーでアルプスの絶景を堪能。天気が良ければ、山頂の景色は一生の思い出になるだろう。夕方の列車でウィーンへ戻る(約4時間30分)。または、インスブルックを省略して、ザルツブルク周辺(アイスリーゼンヴェルトやヴォルフガング湖)を追加観光し、夕方ウィーンへ戻ることもできる。
7日目:ウィーン出発
出発時間に応じて、最後の観光を。午前中にナッシュマルクトで最後の買い物をするか、見逃した美術館(アルベルティーナなど)を訪問。お土産を買い忘れていたら、ケルントナー通りやグラーベン通りの店舗へ。空港へは余裕を持って出発しよう(フライトの2~3時間前には到着)。
10日間ルート:深掘りオーストリア
7日間ルートに、グラーツとワインカントリーを追加した充実のプランだ。時間に余裕があれば、各都市でより深く文化に触れることができる。
1~3日目:ウィーン
7日間ルートのウィーン部分をより深く。1日目は到着と旧市街散策。2日目はシェーンブルン宮殿と動物園で一日。3日目午前はベルヴェデーレ宮殿と美術史美術館。午後は電車でドナウ渓谷のヴァッハウ地方へ日帰り旅行。メルク修道院(バロック建築の傑作)を見学し、ドナウ川沿いをクレムスまで移動(船またはバス)。クレムス周辺のワイナリーでグリューナー・フェルトリーナーのテイスティングを楽しむ。夕方ウィーンに戻る。プラーター公園の大観覧車、フンデルトヴァッサーハウス、ナッシュマルクトでの食べ歩きも追加。夜はムジークフェラインのコンサートへ。
4日目:グラーツ
朝の列車でグラーツへ(約2時間30分)。シュロスベルク(ケーブルカーかエレベーターで)に登り、時計塔と市街のパノラマを楽しむ。クンストハウス・グラーツの現代アートを見学。ハウプトプラッツと旧市街を散策し、武器庫のコレクションを堪能。二重らせん階段も見逃さないように。夜は地元のワイン(シュタイアーマルク産)とシュタイアーマルク料理を楽しむ。カボチャの種油をかけたサラダ、バックヘンドル(鶏のカツレツ)などがお勧めだ。
5日目:グラーツからザルツブルクへ
午前中はエッゲンベルク宮殿を見学(トラムで約15分)。宮殿と庭園で2~3時間を見込む。午後の列車でザルツブルクへ(約4時間、グラーツ中央駅からリンツ経由)。乗り換えが1回あるが、景色の良いルートだ。到着後は旧市街を散策。
6~7日目:ザルツブルクとハルシュタット
7日間ルートの4~5日目と同様。6日目はザルツブルク市内観光、7日目はハルシュタット日帰り。時間に余裕があれば、ハルシュタットでダッハシュタイン氷洞窟にも足を延ばす(バスで約30分+ケーブルカー)。
8日目:ザルツブルクからインスブルックへ
朝、アイスリーゼンヴェルト氷の洞窟に立ち寄る(ザルツブルクからバスで約1時間+ケーブルカー。5月~10月のみ営業、要確認)。洞窟見学後、インスブルック方面へ移動。インスブルック到着は夕方。旧市街を軽く散策し、夕食はチロル料理を。
9日目:インスブルックとチロル
午前中は旧市街観光。黄金の小屋根、ホーフブルク宮殿、宮廷教会。午後は選択肢が複数ある。(A)スワロフスキー・クリスタルワールド(シャトルバスで約20分)、(B)アンブラス城(バスで約20分)、(C)ノルトケッテでハイキング。アクティブ派にはノルトケッテがお勧め。天気が良ければ、一生の思い出になる景色が待っている。
10日目:インスブルックからウィーンへ、出発
早朝の列車でウィーンへ(約4時間30分)。ウィーン中央駅で下車し、荷物を預けてから最後の観光。または、空港へ直行(ウィーン空港行きの列車に乗り換え)。時間があれば、市内でお土産の買い忘れをチェック。
14日間ルート:オーストリア周遊の旅
オーストリアの主要地域をすべてカバーする、贅沢な2週間の旅だ。急ぐ必要がなく、各地の文化にゆっくり浸ることができる。
1~4日目:ウィーン
初日は到着と休息、旧市街散策。2日目はシェーンブルン宮殿と動物園で一日。3日目はホーフブルク宮殿、アルベルティーナ美術館、美術史美術館、夜は国立歌劇場。4日目はドナウ渓谷へ日帰り旅行。メルク修道院からクレムスまでドナウ川クルーズ(約3時間)を楽しみ、デュルンシュタインの街を散策。ワインテイスティングも忘れずに。夕方ウィーンに戻る。
5~6日目:グラーツとシュタイアーマルク
5日目の朝、列車でグラーツへ(約2時間30分)。午後はシュロスベルク、旧市街、クンストハウスを巡る。6日目はエッゲンベルク宮殿と、レンタカーで南シュタイアーマルクのワイン街道へ日帰りドライブ。緑の丘陵地帯にブドウ畑が広がる景色は「オーストリアのトスカーナ」と呼ばれる。ガムリッツやエーレンハウゼンの村でワインテイスティング。
7~9日目:ザルツブルクとザルツカンマーグート
7日目、グラーツからザルツブルクへ(約4時間)。到着後、旧市街散策。8日目はザルツブルク市内観光。モーツァルトの生家、ホーエンザルツブルク城塞、ミラベル宮殿、ヘルブルン宮殿。9日目はハルシュタットとダッハシュタイン氷洞窟への日帰り旅行。早朝出発すれば、両方訪問可能。
10~11日目:ザルツカンマーグート深掘り
10日目はヴォルフガング湖エリアへ。シャーフベルク登山鉄道で山頂へ(往復約2時間)、蒸気船でザンクト・ギルゲン→ザンクト・ヴォルフガング→シュトローブルを巡る。「白馬亭」でランチも。11日目はアイスリーゼンヴェルト氷の洞窟と周辺のハイキング。または、ゴーザウゼー湖まで足を延ばす(ダッハシュタイン山塊の麓にある美しい湖)。
12~13日目:インスブルックとチロル
12日目、ザルツブルクからインスブルックへ(約2時間)。旧市街観光とノルトケッテ。13日目は選択肢多数。(A)スワロフスキー・クリスタルワールドとアンブラス城、(B)シュトゥーバイ渓谷のハイキング(インスブルックからバスで約1時間)、(C)ゼーフェルト高原の散策(電車で約40分、美しいプラトーでウォーキング)。
14日目:ウィーンへ戻り、出発
早朝の列車でウィーンへ(約4時間30分)。空港へ向かうか、時間があれば最後の買い物タイム。
21日間ルート:オーストリア完全制覇
3週間あれば、主要観光地だけでなく、知られざる宝石のような場所も訪れることができる。季節限定のアクティビティや、地方の小さな村々まで足を延ばせる贅沢なプランだ。
1~5日目:ウィーンとその周辺
14日間ルートのウィーン部分に加え、さらに深掘り。ブルゲンラント州のノイジードラー湖へ日帰り(ウィーンから電車で約1時間)。湖畔のワイン産地を自転車で巡り、野鳥観察を楽しむ。エステルハージ宮殿(アイゼンシュタット)でハイドンの足跡をたどる。ワイン好きなら、ゴルス村やルスト村のホイリゲ巡りも。
6~8日目:グラーツと南部
グラーツ観光に加え、南シュタイアーマルクのワイン街道を2日かけてレンタカーでドライブ。エーレンハウゼン、ガムリッツ、ラトシュ、ライプニッツなどの村を巡り、ブドウ畑の間のワイナリーでテイスティング。カボチャの種油の生産者(Olmuehle)も訪問。シュタイアーマルク名物のヴァニラ・キプフェルル(バニラクロワッサン型クッキー)やキュルビスケルンブロート(カボチャの種のパン)も試そう。
9~13日目:ザルツブルクとザルツカンマーグート
14日間ルートに加え、さらに日程を追加。バート・イシュル(皇帝フランツ・ヨーゼフの夏の別荘地)、トラウン湖(水の透明度が高く、ダイビングスポット)、アッター湖(最大の湖、グスタフ・クリムトが夏を過ごした場所)も訪問。時間があれば、ゴーザウゼー湖でのハイキング(ダッハシュタインを背景にした絶景)もお勧め。
14~17日目:チロル
インスブルックに3泊し、周辺を徹底探索。ベルクイーゼル・スキージャンプ台、チロル・パノラマ博物館、アルペン動物園も訪問。日帰りでシュトゥーバイ氷河(夏でもスキー可能)、ゼーフェルト高原(ハイキングとゴルフ)、またはグロースグロックナー・ホッホアルペン道路をドライブ(レンタカー必要、丸一日かかる壮大な旅)。
18~19日目:フォアアールベルク州
インスブルックからブレゲンツへ移動(電車で約2時間)。ボーデン湖(コンスタンツ湖)畔の街を散策し、プフェンダー山(ケーブルカーで登れる)からの眺望を楽しむ。近くのリンダウ(ドイツ、電車で約15分)やザンクト・ガレン(スイス、電車で約1時間)への日帰りも可能(パスポート持参)。夏には湖上のオペラステージでブレゲンツ音楽祭が開催される。
20日目:ツェル・アム・ゼー
ブレゲンツから列車で移動(約3時間、インスブルック経由)。ツェラー湖でボート遊びか、キッツシュタインホルン氷河でパノラマを楽しむ(ケーブルカーで標高3,029メートルまで)。夏なら湖水浴、冬ならスキーと、季節によって楽しみ方が変わる。
21日目:ウィーンへ戻り、出発
ツェル・アム・ゼーからウィーンへ(約4時間30分、ザルツブルク経由)。フライトに合わせて移動。3週間の旅を振り返りながら、帰路につく。
通信と接続:旅先でのネット環境
オーストリアではEU圏のローミング規制が適用されるため、EU圏の携帯プランを持っている人は追加料金なしで自国と同様に利用できる。日本から来る旅行者の場合は、いくつかの選択肢がある。事前に準備しておけば、現地での通信に困ることはない。
最も手軽なのは、現地でSIMカードを購入することだ。A1(オーストリア最大のキャリア)、Magenta(旧T-Mobile)、Drei(スリー)の3大キャリアがあり、空港や市内の店舗で購入できる。ウィーン国際空港の到着ロビーにはA1とMagentaのショップがある。プリペイドSIMは10~20ユーロで、数GBのデータと通話が含まれる。パスポートの提示が必要で、その場でアクティベーションしてくれる。HoT(ホファーのブランド)やSpeakout(Dreiのブランド)はスーパーで買え、より安価だが、自分でセットアップする必要がある。
eSIM対応のスマートフォン(iPhone XS以降、Pixel 3以降など)を持っている場合は、日本でオンライン購入して出発前にセットアップしておくのが便利だ。Airalo、Holafly、Nomad、Simolなどのサービスが人気で、7日間3GB程度のプランが10~15ドルだ。ヨーロッパ周遊プラン(複数国で使える)もあり、オーストリアだけでなく周辺国も訪れる予定があれば便利だ。到着時にすぐ使えるのが最大のメリット。
海外用ポケットWiFiのレンタルも選択肢の一つだ。日本で受け取り・返却ができ、複数人でシェアできるのがメリット。グローバルWiFi、イモトのWiFi、Wi-Hoなどが主要なサービスだ。1日あたり500~1,000円程度で、データ容量は無制限または大容量のプランが選べる。ただし、バッテリー持ちが気になる(半日程度で充電が必要なことも)のと、追加の荷物になる点はデメリットだ。
無料WiFiは、ほとんどのホテル、カフェ、レストランで利用できる。接続は通常、パスワードを求められるか、利用規約に同意するだけでOK。ウィーンでは公共WiFi「wien.at Public WLAN」が市内200カ所以上(主要広場、公園、公共施設)で提供されている。最初の1時間は無料、その後も制限はあるが利用可能。ただし、セキュリティ面では注意が必要で、銀行取引などの機密性の高い操作は避けるべきだ。VPNを使うとより安全。
主要な観光地、駅、空港にはフリーWiFiスポットがある。OBBの長距離列車(Railjet)内でもWiFiが利用できるが、トンネルが多いアルプス区間では接続が不安定になることがある。1等車の方がWiFiの品質が良い傾向がある。多くのカフェではWiFiを無料提供しており、コーヒー1杯で何時間でも作業できる(ただし、混雑時は配慮を)。
オーストリア料理:味わうべき伝統の味
オーストリア料理は、ハプスブルク帝国の多民族文化を反映した豊かなものだ。ハンガリー、ボヘミア(チェコ)、イタリア、バルカンの影響を受けながら、独自の伝統を育んできた。肉料理が中心だが、地域ごとに特色がある。ウィーンはカフェ文化とケーキ、ザルツブルクはザルツブルガー・ノッケルル、チロルは山小屋料理、シュタイアーマルクはカボチャの種油と鶏料理で知られる。
ウィーナーシュニッツェルは、オーストリア料理の代表格だ。子牛肉(Kalb)を薄く叩いてパン粉をつけ、バター(またはラード)でカリッと揚げる。レモンを絞り、リンゴンベリージャム(プライゼルベーレン)を添えて食べる。本物は皿からはみ出すほど大きく、端がカールしているのが良い揚げ加減の証だ。豚肉を使う場合は「シュニッツェル・ウィーナー・アート」または「シュヴァイネシュニッツェル」と呼ばれ、本来の「ウィーナーシュニッツェル」ではない。メニューで確認しよう。付け合わせはポテトサラダ(ウィーン風は温かくてビネガーベース)かフライドポテトが定番。
ターフェルシュピッツは、牛肉のゆで煮だ。数時間かけて煮込んだ牛肉(通常はモモ肉やスネ肉)を薄切りにし、西洋わさびソース(ゼンフソース)、リンゴとわさびを混ぜたアプフェルクレン、チャイブソースなど複数のソースで味わう。シンプルだが、肉の質と調理法が問われる料理だ。ウィーンの老舗レストラン「プラーフッタ」は、ターフェルシュピッツ専門として有名。皇帝フランツ・ヨーゼフの好物だったとも言われ、彼は毎日のようにこの料理を食べていたという。
グラーシュ(グヤーシュ)は、ハンガリー由来の煮込み料理だ。牛肉とタマネギをパプリカでじっくり煮込み、ゼンメルクヌーデル(パンの団子)やパンを添える。ウィーン風は肉を角切りにし、よりソースが濃厚でスープというよりシチューに近いのが特徴だ。冬の寒い日には特に美味しく感じる。バリエーションとして、ソーセージ入りの「ヴュルステルグラーシュ」もある。
ザッハトルテは、ウィーンを代表するチョコレートケーキだ。アプリコットジャムを挟んだ濃厚なチョコレートスポンジに、光沢のあるチョコレートグレーズがかかっている。1832年にホテル・ザッハーの創業者フランツ・ザッハーが考案し、その息子エドゥアルトが完成させた。ホテル・ザッハーとデメルが「オリジナル」を主張して裁判にまでなった歴史がある(1963年にザッハーが勝訴)。どちらも訪れて食べ比べてみるのが一番だ。ザッハーは三角形のチョコレートメダリオンが目印、デメルは丸いメダリオン。甘めの生クリームを添えて食べるのが伝統だ。
アプフェルシュトゥルーデルは、リンゴの薄いパイ包みだ。生地を紙のように薄く伸ばし(新聞が透けて見えるほど薄くするのが理想)、シナモンとレーズン、パン粉を加えたリンゴを巻いて焼く。温かいうちにバニラソースかアイスクリームを添えて出される。シェーンブルン宮殿ではシュトゥルーデル作りの実演を見ることができ、試食も可能だ。トプフェンシュトゥルーデル(カッテージチーズ入り)やキルシュシュトゥルーデル(チェリー入り)もある。
カイザーシュマーレンは、千切りパンケーキだ。ふわふわのパンケーキを焼きながら細かく割り、砂糖をまぶしてカラメル化する。プラムのコンポート(ツヴェッチュケンレスター)やアプフェルムス(リンゴのピューレ)を添えて食べる。皇帝フランツ・ヨーゼフの好物だったことからこの名がついた。「カイザー」は皇帝、「シュマーレン」は細切りの意味。甘い料理だが、オーストリアではメインディッシュとして食べることもある。
ザルツブルク名物のザルツブルガー・ノッケルルは、卵白のスフレだ。3つの山の形に焼き上げられ、ザルツブルクを囲む3つの山(メンヒスベルク、カプツィーナーベルク、ガイスベルク)を表している。焼きたてはふわふわで、テーブルに運ばれてくる間にも縮んでいく。バニラソースやフルーツソースを添え、2~3人でシェアして食べるほど大きい。
シュタイアーマルク州ではカボチャの種油(キュルビスケルンオイル)が欠かせない。濃い緑色(光に透かすと赤みがかって見える)のオイルは、サラダやスープ、アイスクリームにまでかけて食べる。独特の香ばしさがあり、最初は驚くかもしれないが、一度慣れると病みつきになる。本物にはPGI(地理的表示保護)マークがついている。同じくシュタイアーマルクのバックヘンドル(鶏の唐揚げ)は、シュニッツェルの鶏肉版だ。カリカリの衣とジューシーな肉の組み合わせが絶品。
チロル地方ではグレステル(ジャガイモと牛肉の炒め物)、カースシュペッツレ(チーズパスタ、アルプスのマカロニ&チーズ)、シュペックノッケルル(ベーコン入りダンプリング)が定番だ。スキーの後に山小屋で食べる熱々の料理は格別だ。チロラー・グレーストルは残り物の肉とジャガイモを炒めた家庭料理で、ホテルの朝食ビュッフェでも見かける。
飲み物では、グリューワイン(ホットワイン)が冬の定番だ。赤ワインにシナモン、クローブ、オレンジピール、砂糖を加えて温める。クリスマスマーケットでは欠かせない存在で、陶器のマグカップ(記念品になる)で提供される。夏はシュプリッツァー(白ワインのソーダ割り)が人気。アルプスの牧場では新鮮なブッターミルヒ(バターミルク)やアルムミルヒ(山の牛乳)を味わえる。オーストリアのビールも美味しく、スティーグル(ザルツブルク)、ゲッサー(シュタイアーマルク)、ジーテル(ウィーン)などの地ビールがある。
ショッピング:お土産と名品
オーストリアからのお土産は、品質の高さが魅力だ。大量生産のキッチュなものもあるが、職人技が光る逸品も多い。本物を見極めて、記念に残る品を選ぼう。
モーツァルトクーゲル(モーツァルトボール)は、ザルツブルク発祥のチョコレート菓子だ。ピスタチオマジパンとヌガーをチョコレートでコーティングしたもので、オリジナルは「フュルスト」(Furst)製。手作りで一つ一つ串に刺して作られる本物は、銀紙に青い縦縞がある。ザルツブルクの4店舗でのみ販売され、保存料を使わないため日持ちは2~3週間。スーパーで売られている赤い包みのミラベル製は大量生産品で、味は異なるが土産としては便利。
スワロフスキーのクリスタルは、チロル地方ヴァッテンスに本社を置く。クリスタルワールドの直営店では限定品も手に入る。アクセサリー、フィギュリン(動物や花の置物)、装飾品など、様々な製品がある。値段は決して安くないが、品質は保証付きだ。偽物も出回っているので、正規店での購入を勧める。
アウガルテン陶磁器は、1718年創業のヨーロッパ第2の磁器メーカーだ(マイセンに次ぐ)。ウィーンのアウガルテン宮殿に工房があり、見学も可能。リップ(バラの蕾)パターンや薔薇のパターンが有名で、ティーセットは一生ものの逸品だ。価格は高いが、何世代にも渡って使える品質。マリア・テレジアパターンやビーダーマイヤー様式のデザインもある。
ローデンコートは、伝統的なウール生地(ローデン)で作られたコートやケープだ。防水性があり、アルプスの気候に適している。灰緑色(ロードンゲルベン)が定番で、緑のフェルトハットと合わせるのが伝統スタイル。ザルツブルクのヤンツカーやウィーンのクヌイゼが老舗だ。価格は500~2,000ユーロと高額だが、何十年も着られる耐久性がある。
プチポワンは、ウィーンの伝統刺繍で、ハンドバッグや小物入れ、眼鏡ケースなどに施される。1センチ四方に最大1,400もの針目を入れる精緻な技法で、完成までに数カ月から数年かかる。グラーベン通りの専門店「マリア・ストランスキー」で購入できる。小さなポーチでも数百ユーロするが、芸術品と呼ぶにふさわしい。
カボチャの種油(シュタイアーマルク産)は、シュタイアーマルク州の特産品。深緑色のオイルは香ばしく、サラダやアイスクリームに使う。本物にはPGI(地理的表示保護)マークがついている。ナッシュマルクトやスーパーで購入できる。250mlボトルで10~15ユーロ程度。開封後は冷暗所に保存し、2~3カ月で使い切ろう。
マナー・シュニッテンは、ウェハースにヘーゼルナッツクリームを挟んだ菓子だ。1898年からウィーンで作られており、ピンクの包装が目印。軽くて持ち運びやすく、ばらまき土産に最適だ。スーパーで安価に購入できる。オリジナルのヘーゼルナッツ味のほか、チョコレート、レモン、ココナッツなど様々なフレーバーがある。
ザッハトルテは、ホテル・ザッハーの直営店(ウィーン、ザルツブルク、インスブルック)か空港で購入できる。木箱入りの正式なものは常温で6週間保存可能。価格は大きさによって35~60ユーロ程度。デメルのトルテも同様に有名で、どちらも空港の免税店で買える。
税金還付(TAX FREE)は、EU圏外居住者が1店舗で75.01ユーロ以上購入した場合に申請できる。店頭でパスポートを提示し、TAX FREEの書類(Global BlueまたはPlanet)をもらう。出国時に税関(EUの最終出国地点)でスタンプを押してもらう。空港の還付カウンターで現金(手数料あり)かクレジットカード(2~3週間で返金)に返金される。払い戻しは購入額の約12~15%だ。
便利なアプリとサービス
旅行をスムーズにするために、以下のアプリをダウンロードしておくと便利だ。
OBB(オーストリア連邦鉄道)アプリは、列車の時刻表検索、チケット購入、遅延情報の確認ができる。モバイルチケットは紙のチケットを印刷する必要がなく、QRコードを見せるだけで乗車できる。オフラインでも時刻表を確認できるので、WiFiがない場所でも便利だ。
Wiener Linienアプリは、ウィーンの公共交通機関(地下鉄、トラム、バス)のチケット購入と路線検索ができる。24時間券、48時間券、72時間券もアプリ内で購入可能。リアルタイムの運行情報も確認できる。
Google Mapsは、ナビゲーションと公共交通機関の乗り換え案内に便利だ。オフラインマップをダウンロードしておけば、データ通信がなくても地図と検索が使える(ただし、リアルタイムの交通情報は使えない)。
Sygic Travel(旧TripIt)は、オフラインで使える旅行プランナーだ。観光スポット、レストラン、ホテルの情報が充実しており、自分だけの旅程を作成できる。保存した場所を地図上に表示でき、効率的な観光ルートを計画できる。
XE Currencyは、リアルタイムの為替レートを確認できる。複数の通貨を登録しておけば、一目で換算できる。オフラインでも最後に取得したレートで換算できる。
Booking.comやAirbnbは、宿泊予約に便利だ。現地でのプラン変更にも対応しやすい。キャンセルポリシーを確認しておけば、柔軟に予定を変更できる。
GetYourGuideやViatorは、現地ツアーやアクティビティの予約ができる。ウィーンのオペラツアー、ザルツブルクのサウンド・オブ・ミュージックツアー、ワイナリー見学、料理教室など、事前予約しておくと当日スムーズだ。人気のツアーは売り切れることもあるので、早めの予約を勧める。
まとめ:オーストリアがあなたを待っている
オーストリアは、ヨーロッパの中心にありながら、独自の文化と伝統を守り続けてきた国だ。ハプスブルク帝国の栄光を今に伝えるウィーンの宮殿、モーツァルトの調べが響くザルツブルクの街並み、アルプスの雄大な自然に抱かれたインスブルック。ハルシュタットの絵画のような湖畔風景、グラーツの現代アートと美食、ツェル・アム・ゼーの氷河と湖。どこを訪れても、歴史と自然が織りなす美しさに心を奪われるだろう。
この国の魅力は、一度の旅行では味わい尽くせない。春の花々に彩られた宮殿庭園、夏の緑濃いアルプスのトレイル、秋の黄金色に輝くブドウ畑、冬の雪に覆われたクリスマスマーケット。それぞれの季節がまったく異なる表情を見せてくれる。クラシック音楽のコンサートに通い、カフェでゆったりと時間を過ごし、ホイリゲで地元のワインを傾ける。そんな贅沢な時間が、オーストリアには流れている。
日本からのアクセスも良好で、直行便なら12時間でウィーンに到着する。治安は世界トップクラスに良く、女性の一人旅でも安心だ。公共交通機関は正確で清潔、英語も広く通じる。ヨーロッパ旅行の初心者にも、何度も訪れるリピーターにも、自信を持ってお勧めできる国だ。
この記事が、あなたのオーストリア旅行の計画に役立てば幸いだ。華やかな宮殿、荘厳な教会、息をのむ山岳風景、そして温かい人々。アルプスの国オーストリアが、両手を広げてあなたを待っている。グリュース・ゴット(ようこそ)!
本記事の情報は2026年2月現在のものです。ビザ要件、入国条件、営業時間、価格などは変更される可能性があります。旅行前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。