アレクサンドリア
アレクサンドリア2026:出発前に知っておくべきこと
カイロから電車で約2時間半、地中海に面したエジプト第二の都市アレクサンドリア。古代世界の七不思議のひとつ「ファロスの灯台」があった場所であり、かつてはクレオパトラが歩いた街でもある。しかし正直に言うと、現代のアレクサンドリアは古代の栄光とはかなり違う姿を見せている。それでも、この街には独特の魅力がある。カイロの喧騒とは異なる、どこかヨーロッパ的な空気感。地中海から吹く涼しい風。そして、観光地化されすぎていない「本物のエジプト」を体験できる場所だ。
日本からアレクサンドリアへは直行便がない。成田・羽田からカイロへはエジプト航空の直行便(約14時間)か、ドバイやドーハ経由の便を利用する。2026年現在、往復で15万円から25万円程度(約1,000〜1,700USD)が相場だ。カイロ国際空港からアレクサンドリアまでは、タクシーで約3時間(2,000〜3,000エジプトポンド、約40〜60USD)、またはラムセス駅から特急列車で約2時間半(ファーストクラスで約150エジプトポンド、約3USD)という選択肢がある。個人的には、エジプトの車窓からナイルデルタの風景を眺められる列車をおすすめしたい。
アレクサンドリアで最初に驚くのは、カイロよりもずっと過ごしやすい気候だ。夏でも地中海からの風があり、冬は温暖で雨も少ない。ただし、12月から2月は予想外に寒くなることもあるので、薄手のジャケットは必携だ。私が1月に訪れた時は、夜の海沿いで震えた経験がある。
治安について言えば、アレクサンドリアはカイロよりも落ち着いている。観光客を狙った軽犯罪は存在するが、暴力犯罪は稀だ。女性の一人旅でも、基本的な注意を払えば問題ない。ただし、夜遅くの一人歩きは避け、人通りの少ない路地には入らないこと。これはどの都市でも同じだろう。
JCBカードについては、残念ながらエジプトでの使用は限定的だ。主要ホテルや一部の高級レストランでは使えることもあるが、VISAかMastercardを持っていく方が無難だ。また、現金社会なので、ATMでエジプトポンドを引き出しておくことを強くおすすめする。空港や銀行で日本円からの両替も可能だが、レートは良くない。
エリア:どこに泊まるか
アレクサンドリアは東西に長く伸びた沿岸都市で、宿泊エリアの選択が旅の快適さを大きく左右する。観光の利便性、雰囲気、予算によって、最適なエリアは異なってくる。ここでは主要な5つのエリアを詳しく解説しよう。
ダウンタウン(El-Manshiyya / Raml Station周辺)
アレクサンドリア観光の中心地であり、初めての訪問者に最もおすすめしたいエリアだ。アレクサンドリア・コーニッシュ沿いに位置し、アレクサンドリア図書館やローマ円形劇場まで徒歩圏内。19世紀から20世紀初頭に建てられたコロニアル様式の建物が並び、どこかノスタルジックな雰囲気が漂う。
このエリアの魅力は、なんといってもアクセスの良さだ。ラムセス駅からの列車が到着するミスル駅(Misr Station)もすぐ近くにあり、トラムの路線も充実している。朝は海沿いを散歩し、午後は旧市街を探索し、夜はレストランでシーフードを楽しむ——そんな理想的な観光プランが歩いて完結する。
宿泊施設は、歴史あるソフィテル・セシル・アレクサンドリア(1泊約150〜250USD、約22,000〜37,000円)から、中級のパラダイス・イン・ル・メトロポール(1泊約60〜100USD、約9,000〜15,000円)、さらにバックパッカー向けのホステル(1泊約15〜25USD、約2,200〜3,700円)まで幅広い。ソフィテル・セシルは1930年代の雰囲気を残す名門ホテルで、アガサ・クリスティやウィンストン・チャーチルも宿泊したという歴史がある。海に面した部屋からの眺めは格別だ。
デメリットとしては、交通量が多く、特に夕方のラッシュ時は騒がしいこと。また、観光客が多いエリアなので、土産物の売り込みや「ガイドしてあげる」という声かけも頻繁にある。これらをうまくかわす術を身につける必要がある。
スタンレー(Stanley)
スタンレー橋周辺のこのエリアは、ダウンタウンから東へ約3kmに位置する。地元の富裕層が多く住む高級住宅街で、海沿いには近代的なカフェやレストランが並ぶ。観光地というよりは、アレクサンドリアの「今」を感じられる場所だ。
このエリアの最大の魅力は、地元の人々の日常に触れられること。夕暮れ時にスタンレー橋を渡りながら、釣りを楽しむ人々や、海を眺���ながらコーヒーを飲むカップル、子供たちと散歩する家族を眺めていると、観光客としてではなく、この街の一員になったような気分になる。
宿泊施設は、フォーシーズンズ・アレクサンドリア・アット・サンステファーノ(1泊約200〜400USD、約30,000〜60,000円)が代表格。地中海を一望するラグジュアリーホテルで、プライベートビーチやスパも完備している。日本のサービス水準に慣れた方でも満足できるクオリティだ。中級ホテルも増えてきており、1泊約80〜120USD(約12,000〜18,000円)で快適に滞在できる。
デメリットは、主要観光スポットから少し離れていること。タクシーやUber(エジプトではCareem)の利用が必要になる場面が多い。また、飲食店の選択肢はダウンタウンほど多くない。
モンタザ(Montazah)
アレクサンドリアの東端に位置するこのエリアは、モンタザ宮殿と庭園で知られる。かつての王家の避暑地であり、今も緑豊かな庭園と美しいビーチが残っている。ダウンタウンから約15km離れているが、のんびりとした滞在を求める方には最適だ。
モンタザ宮殿の敷地内には、パレスチナ・ホテル(1泊約80〜150USD、約12,000〜22,000円)があり、宮殿の庭園を散策しながら滞在できるという贅沢な体験ができる。周辺にはビーチリゾートホテルもいくつかあり、海水浴やビーチでのんびり過ごしたい方に向いている。
ただし、このエリアに滞在する場合、観光のたびにタクシーで30〜40分かけてダウンタウンに出る必要がある。往復で約200〜300エジプトポンド(約4〜6USD)はかかるので、移動コストと時間を考慮すべきだ。アレクサンドリアの街歩きを楽しみたい方よりも、リゾート的な滞在を求める方向けのエリアと言える。
エル・アガミ(El Agami)
ダウンタウンから西へ約20km、アレクサンドリアのローカルたちが夏のバカンスに訪れるビーチリゾートエリアだ。観光客はほとんどおらず、エジプト人家族でにぎわう。7月から8月のピークシーズンには、カイロやアレクサンドリアの中産階級が長期滞在する。
このエリアは、いわゆる「観光」をしたい人には向かない。主要スポットから遠すぎるし、英語もほとんど通じない。しかし、エジプトの家族連れの休暇風景を体験したい、または長期滞在でアパートを借りたいという方には面白い選択肢だ。アパートは1ヶ月約300〜600USD(約45,000〜90,000円)で借りられ、キッチン付きで自炊もできる。
コム・エル・ディッカ(Kom El Dikka)周辺
ローマ円形劇場がある歴史地区。ダウンタウンに隣接しており、古代アレクサンドリアの遺跡が点在する。宿泊施設は少ないが、中級のホテルがいくつかあり、歴史好きの方には魅力的なエリアだ。1泊約40〜80USD(約6,000〜12,000円)で滞在できる。
このエリアのメリットは、ローマ時代の遺跡を間近に感じられること。朝早くにポンペイの柱を訪れ、観光客が少ない静かな時間を楽しむことができる。デメリットは、夜の飲食店の選択肢が限られていること。夕食はダウンタウンまで出る方がよいだろう。
宿泊エリア選びのまとめ
初めてのアレクサンドリアで3〜4日の滞在なら、ダウンタウン一択だ。観光の効率が圧倒的に良い。5日以上の滞在なら、前半をダウンタウン、後半をスタンレーかモンタザに移動するのも良いプランだ。リゾート目的ならモンタザ、地元の生活に溶け込みたいならスタンレーを選ぼう。予算重視なら、ダウンタウンのホステルか、エル・アガミのアパートという選択肢もある。
ベストシーズン
アレクサンドリアを訪れるベストシーズンは、間違いなく3月から5月と9月から11月だ。この時期は気温が20〜28度で過ごしやすく、雨も少ない。地中海からの風が心地よく、街歩きには最適だ。
春(3月〜5月)は特におすすめだ。冬の雨季が終わり、モンタザ宮殿の庭園では花が咲き乱れる。海はまだ泳ぐには冷たいが、コーニッシュを散歩するには絶好の気候だ。ただし、3月下旬から4月にかけては「ハムシーン」と呼ばれる砂嵐が発生することがある。サハラ砂漠から吹き込む熱風で、視界が悪くなり、目や喉を痛める可能性がある。この時期は、サングラスとマスクを持参しておくと安心だ。
秋(9月〜11月)も素晴らしい時期だ。夏の猛暑が去り、海水温もまだ温かいので、9月なら泳ぐこともできる。観光客も比較的少なく、アレクサンドリア図書館やコム・エル・シュカファのカタコンベをゆっくり見学できる。私が最も好きなのは10月のアレクサンドリアだ。空気が澄んでいて、夕暮れの地中海が美しい。
避けるべき時期は、7月と8月だ。気温は35度を超え、湿度も高い。エアコンのないタクシーやミニバスでの移動は拷問に近い。また、この時期はエジプト国内からの観光客で、ビーチやレストランが混雑する。ホテルの料金も高騰し、予約も取りにくい。
冬(12月〜2月)は、カイロやルクソールを訪れるには良い時期だが、アレクサンドリアはおすすめしない。地中海性気候のため、この時期は雨が多く、風も強い。私が1月に訪れた時は、3日間のうち2日が雨で、カイトベイの要塞は風で荒れる海を背景に、なかなか荒々しい姿を見せていた。それはそれで印象的だったが、写真映えする青い海を期待していた身としては、少し残念だった。
ラマダン期間中の訪問については、一長一短がある。2026年のラマダンは2月下旬から3月下旬頃の見込みだ。日中は多くのレストランが閉まり、食事の選択肢が限られる。しかし、日没後のイフタール(断食明けの食事)の時間帯は、街全体がお祭りムードになり、特別な体験ができる。ローカルのレストランでイフタールに招かれることもあるかもしれない。ただし、公共の場での飲食は控え、現地の習慣を尊重することが大切だ。
日本のゴールデンウィーク(4月下旬〜5月上旬)にアレクサンドリアを訪れるのは良いタイミングだ。気候は快適で、観光地も混みすぎていない。ただし、日本からのツアーが集中する時期でもあるので、ホテルや列車は早めに予約しておこう。
モデルコース:2日から5日
2日間コース:駆け足でハイライトを
時間がない旅行者のための凝縮プラン。アレクサンドリアの魅力を2日間で体験するには、効率的な動きが求められる。
1日目:古代と現代のアレクサンドリア
午前8時、ホテルで軽い朝食を済ませたら、まずコム・エル・シュカファのカタコンベへ向かおう。開館直後の9時に到着すれば、団体客が来る前に静かに見学できる。2世紀に造られたこの地下墓地は、エジプト、ギリシャ、ローマの様式が混在する不思議な空間だ。らせん階段を降りていくと、ひんやりとした空気に包まれる。所要時間は約1時間。入場料は約180エジプトポンド(約360円、約2.4USD)。
カタコンベから徒歩15分でポンペイの柱に到着する。高さ約27メートルの巨大な花崗岩の柱は、アレクサンドリアに現存する最大の古代遺跡だ。実際にはポンペイとは無関係で、ディオクレティアヌス帝に捧げられたものだが、中世の十字軍がポンペイの墓と誤解したことからこの名がついた。周辺にはスフィンクス像や古代神殿の遺構も残っている。所要時間は約30分。
昼食は、近くのローカル食堂でコシャリ(エジプトの国民食、米とパスタと豆のミックス)を食べよう。一皿約30〜50エジプトポンド(約60〜100円)で満腹になる。観光地価格ではない、本物の味だ。
午後はアレクサンドリア図書館へ。2002年に再建されたこの現代建築は、古代の「知の殿堂」を現代に蘇らせたものだ。傾斜した円盤型の屋根が印象的で、内部には800万冊以上の蔵書を収容できる。古代文明博物館や写本博物館も併設されており、じっくり見ると2〜3時間は必要だ。入場料は約70エジプトポンド(約140円)。閉館は午後7時なので、時間に余裕を持って訪れよう。
夕方、コーニッシュを散歩しながら夕日を眺める。約15kmにわたる海沿いの遊歩道は、アレクサンドリアの顔とも言える場所だ。地元の人々がジョギングしたり、釣りをしたり、ベンチでおしゃべりしたりする姿を眺めながら、ゆっくりと歩こう。
夕食は、コーニッシュ沿いのシーフードレストランで。新鮮な魚を選んで、グリルかフライにしてもらう。一人約200〜400エジプトポンド(約400〜800円)で、素晴らしいディナーを楽しめる。
2日目:要塞と博物館
午前中はカイトベイの要塞へ。15世紀にマムルーク朝のスルタン、カーイトバーイによって建設されたこの要塞は、かつてファロスの灯台があった場所に建っている。灯台の石材が要塞の建設に再利用されたとも言われている。地中海を一望できる眺望は素晴らしく、特に朝の光の中で見る要塞は美しい。所要時間は約1時間。入場料は約60エジプトポンド(約120円)。
要塞の周辺には漁港があり、漁師たちが網を修理したり、魚を売ったりしている。観光客向けではない、生きた港町の風景を見ることができる。ここで新鮮な魚を買って、近くのレストランで調理してもらうという手もある。
昼食後、アレクサンドリア国立博物館へ。ファラオ時代からグレコ・ローマン期、イスラム時代まで、アレクサンドリアの歴史を網羅する展示が見られる。地下にはアレクサンドリア沖で発見された水中遺跡からの出土品が展示されており、必見だ。所要時間は約2時間。
午後遅く、時間があれば王立宝石博物館を訪れよう。ムハンマド・アリー朝の王族が所有していた豪華な宝石コレクションを、美しいパレスで鑑賞できる。所要時間は約1時間。
3日間コース:余裕を持った探索
2日間コースに加えて、3日目はローカル体験を深めよう。
3日目:地元の暮らしと隠れスポット
午前中は、アンフシの魚市場を訪れる。早朝が最も活気があり、その日の漁獲が並ぶ。観光客はほとんどいないが、フレンドリーな漁師たちが笑顔で迎えてくれる。アラビア語が分からなくても、指差しと笑顔でコミュニケーションは成り立つ。
その後、ダウンタウンの旧市街を散策。コロニアル建築の並ぶ通りを歩き、地元のカフェでシャイ(紅茶)を飲みながら、バックギャモンに興じる老人たちを眺める。時間がゆっくりと流れる、アレクサンドリアらしい午前中だ。
昼食は、ダウンタウンの老舗レストラン「モハメド・アーメド」でフール(そら豆の煮込み)とターメイヤ(エジプト風ファラフェル)を。1950年代から続く名店で、一人約100エジプトポンド(約200円)で伝統的なエジプト朝食を楽しめる。
午後はモンタザ宮殿と庭園へ。ダウンタウンからタクシーで約30分(約100エジプトポンド)。150エーカーの広大な庭園を散策し、地中海を眺めながらのんびりと過ごす。王家のプライベートビーチは、入場料を払えば一般にも開放されている。夏なら泳ぐこともできる。
夕方、スタンレー橋で夕日を眺め、周辺のカフェでディナー。地元の若者たちに人気のエリアで、アレクサンドリアの「今」を感じられる。
4〜5日間コース:深掘りと周辺エリアへ
4日目以降は、アレクサンドリア周辺の見どころや、よりディープな体験を加えよう。
4日目:ローマ時代の遺跡と美術館
午前中はローマ円形劇場をじっくり見学。エジプトで唯一のローマ式円形劇場で、2世紀に建設された。13列の大理石の座席が残り、かつての栄華を偲ばせる。周辺では発掘作業が続いており、新たな発見があるかもしれない。所要時間は約1時間。
その後、アレクサンドリア・アート・センターや、ダウンタウンのギャラリーを巡る。現代エジプトのアートシーンに触れることができる。特に、若手アーティストの作品を扱うギャラリーは興味深い。
午後はエル・ナビ・ダニエル・モスクを外から見学し、その周辺の旧市街を散策。このモスクの地下にアレクサンダー大王の墓があるという伝説があり、今も探索が続いている。残念ながら内部の見学は制限されているが、建物の外観と周囲の雰囲気を楽しもう。
5日目:エル・アラメインまたはロゼッタへの日帰り旅行
アレクサンドリアから西へ約100km、エル・アラメインには第二次世界大戦の戦跡が残る。連合軍、ドイツ軍、イタリア軍の墓地や戦争博物館があり、歴史に興味がある方には感慨深い場所だ。タクシーをチャーターして往復約1,500〜2,000エジプトポンド(約30〜40USD)。
歴史よりも文化に興味があるなら、ロゼッタ(ラシード)への日帰りがおすすめだ。アレクサンドリアから東へ約65km、ロゼッタストーンが発見された町だ。オスマン朝時代の美しい建築が残り、ナイル川沿いの静かな雰囲気を楽しめる。ミニバスで片道約1時間、往復約50エジプトポンド(約1USD)。
グルメ:レストラン
アレクサンドリアの食は、地中海の恵みと中東の伝統が融合した独自のスタイルを持っている。カイロとは異なり、シーフードが主役だ。ここでは、実際に訪れて印象的だったレストランを紹介しよう。
高級レストラン(一人約800〜2,000エジプトポンド / 16〜40USD / 約2,400〜6,000円)
Byblos:スタンレー地区にあるレバノン・地中海料理の名店。メゼ(前菜の盛り合わせ)からグリル料理まで、どれも洗練された味わいだ。特にフムスとババガヌーシュは絶品。海を望むテラス席は予約必須。ドレスコードはスマートカジュアル。アルコールも提供している(エジプトでは珍しい)。
Kadoura:カイトベイの要塞近くのシーフードレストラン。1946年創業の老舗で、新鮮な魚を選んで調理してもらうスタイル。地元の富裕層や外国人駐在員に人気がある。私のおすすめは、丸ごとグリルしたシーバス(スズキの一種)。シンプルな調理だが、素材の良さが際立つ。一人約1,000エジプトポンド前後。
White and Blue:コーニッシュ沿いにあるギリシャ風シーフードレストラン。白と青を基調としたインテリアが地中海の雰囲気を演出している。タコのグリルとシーフードパスタが特に美味しい。夕日の時間帯のテラス席は最高だ。
中級レストラン(一人約200〜500エジプトポンド / 4〜10USD / 約600〜1,500円)
Fish Market:その名の通り、魚市場のような雰囲気のレストラン。ショーケースに並んだ新鮮な魚介を選び、調理法(グリル、フライ、煮込み)を指定する。価格は重量制で分かりやすい。観光客も多いが、味は本物だ。コーニッシュ沿いに複数店舗がある。
Hosny:ダウンタウンにある地元で愛される中級レストラン。シーフードだけでなく、エジプト伝統料理も充実している。モロヘイヤスープ(緑の葉野菜のとろみスープ)とご飯、グリルチキンの組み合わせは、エジプトの家庭料理の定番だ。日本人の口にも合うと思う。
Abou Ashraf:バハリ地区にある知る人ぞ知るシーフードの名店。観光客はほとんどおらず、地元のファミリーでにぎわう。メニューはアラビア語のみだが、魚のショーケースを指差せば大丈夫。エビのガーリックソテーとフライドカラマリは必食だ。
カジュアル・ローカル(一人約50〜150エジプトポンド / 1〜3USD / 約150〜450円)
Mohamed Ahmed:ダウンタウンのサアド・ザグルール広場近くにある伝説的な朝食店。1950年代の創業以来、フール(そら豆の煮込み)とターメイヤ(エジプト風ファラフェル)を提供し続けている。朝7時から営業しており、地元の人々で常に混み合っている。注文は簡単——フールとターメイヤのセットを頼めばよい。パン(アエーシュ)と一緒に食べるのがエジプト流だ。
Gad:エジプト全土にチェーン展開するファストフード店。コシャリ、シャワルマ(中東風ケバブ)、グリルチキンなど、手軽にエジプト料理を楽しめる。味は安定しており、清潔で、メニューに写真があるので観光客にも利用しやすい。24時間営業の店舗もある。
コーニッシュの屋台:夕方から夜にかけて、コーニッシュ沿いには屋台が並ぶ。焼きとうもろこし(約10エジプトポンド)、ルピン豆(約20エジプトポンド)、サトウキビジュース(約15エジプトポンド)など、スナックを楽しみながら海沿いを散歩するのがアレクサンドリア流だ。衛生面が気になる方は避けた方がよいが、私は問題なかった。
カフェ文化
アレクサンドリアには、長い歴史を持つカフェ文化がある。かつてはギリシャ系やイタリア系の住民が経営するヨーロッパ風カフェが並んでいたが、今ではほとんどが閉店してしまった。しかし、いくつかの老舗は今も営業を続けている。
Trianon:1905年創業のカフェ・パティスリー。ダウンタウンのサアド・ザグルール広場に面している。アールデコ調の内装は往時の栄華を偲ばせる。ケーキとコーヒーのセットで約100〜150エジプトポンド。映画「イングリッシュ・ペイシェント」のロケ地としても使われた。
Brazilian Coffee Stores:アレクサンドリア発祥のコーヒーチェーン。1929年創業で、新鮮なローストコーヒーを提供している。トルコ式コーヒーはもちろん、エスプレッソも美味しい。ダウンタウンに複数店舗あり。一杯約30〜50エジプトポンド。
食べるべき料理
アレクサンドリアを訪れたら、ぜひ試してほしい料理がある。地中海の恵みを活かしたシーフード、エジプトの伝統料理、そしてこの街ならではの名物料理を紹介しよう。
シーフード
サヤディア(Sayadeya):アレクサンドリアを代表する魚料理。白身魚(通常はボラやナイルパーチ)を玉ねぎとスパイスで煮込み、香り高いイエローライスと一緒に提供される。玉ねぎをじっくりと炒めて作るソースが深い味わいを生み出す。家庭によってレシピが異なり、レストランでも店ごとに個性がある。私のおすすめは、バハリ地区の地元食堂で食べるシンプルなサヤディアだ。
フィッシュ・タジン(Tagine Samak):魚と野菜のオーブン焼き。土鍋(タジン)でじっくりと焼き上げる。トマト、玉ねぎ、ピーマン、そしてたっぷりのニンニクが魚の旨味を引き立てる。エジプトでは珍しいオーブン料理だが、アレクサンドリアでは定番だ。
ガンバリ・マクリ(Gambari Magli):ガーリックバターで炒めたエビ。シンプルだが、新鮮なエビを使うとこれが絶品になる。アエーシュ(エジプトのパン)でソースを拭いながら食べるのが流儀だ。
カラマリ(Calamari):イカのフライは地中海料理の定番だが、アレクサンドリアのカラマリは特に美味しい。衣が軽く、イカの甘みが引き立つ。レモンを絞って、タヒーニソース(ゴマペースト)をつけて食べる。
エジプト伝統料理
フール・メダメス(Ful Medames):エジプトの国民的朝食。そら豆をオリーブオイル、ニンニク、レモンで味付けした素朴な料理だが、毎日食べても飽きない。クミンや唐辛子を加えることもある。アエーシュと一緒に、ターメイヤ(エジプト風ファラフェル)を添えて食べるのが定番だ。
コシャリ(Koshari):米、マカロニ、スパゲッティ、レンズ豆、ひよこ豆を混ぜ合わせ、トマトソースとフライドオニオンをかけた庶民の味。見た目は地味だが、各材料の食感とトマトソースの酸味、フライドオニオンの香ばしさが絶妙にマッチする。カイロ発祥だが、アレクサンドリアでも人気がある。一皿約30〜50エジプトポンドで満腹になれる。
モロヘイヤ(Molokhia):緑色の葉野菜を刻んでスープにしたもの。独特のとろみがあり、ニンニクとコリアンダーの香りが食欲をそそる。ご飯やパンと一緒に、チキンやラビット(うさぎ肉)と食べるのが一般的だ。見た目は少し奇妙だが、味は日本人にも受け入れやすい。
ターメイヤ(Ta'meya):エジプト風ファラフェル。中東のファラフェル(ひよこ豆ベース)とは異なり、そら豆とハーブで作る。外はカリカリ、中はふんわり。朝食の定番だが、軽食としていつでも食べられる。
スイーツとドリンク
ウム・アリ(Om Ali):エジプト風のブレッドプディング。パイ生地をミルクに浸し、ナッツとレーズンを加えてオーブンで焼く。温かいうちに食べると最高だ。名前は「アリの母」という意味で、アイユーブ朝のスルタンの妻に由来するという。
バスブーサ(Basbousa):セモリナ粉で作るシロップケーキ。しっとりとした食感と、ほどよい甘さが特徴。コーヒーや紅茶との相性が良い。
カルカデ(Karkade):ハイビスカスティー。鮮やかな赤色で、酸味があり爽やか。冷たくして飲むことが多いが、温かくしても美味しい。暑い日の水分補給にぴったりだ。
サトウキビジュース(Aseer Asab):街角の屋台で絞りたてを提供している。青臭さと甘さが混ざった独特の味で、好みが分かれるかもしれないが、私は好きだ。一杯約10〜15エジプトポンド。
トルコ式コーヒー(Ahwa Turki):エジプトでは「アフワ」と呼ばれる。砂糖の量を指定して注文する——ジアーダ(とても甘い)、マズブート(中程度)、サーダ(砂糖なし)。カフェインを楽しむだけでなく、コーヒーの粉が沈むのを待ちながら会話を楽しむのがエジプト流だ。
地元の秘密:インサイダーのヒント
ガイドブックには載っていない、アレクサンドリアをより深く楽しむためのヒントを紹介しよう。これらは私が現地で暮らし、地元の人々と交流する中で学んだことだ。
値段交渉のコツ
タクシー、市場での買い物、観光地での土産物——アレクサンドリアでは値段交渉が日常だ。日本人旅行者は交渉に慣れていないことが多いが、いくつかのコツを押さえれば楽しめるようになる。
まず、最初に提示された価格の50〜60%が「適正価格」と考えよう。例えば、タクシー運転手が「100ポンド」と言ったら、「50ポンド」から交渉を始める。最終的に60〜70ポンドで落ち着くことが多い。笑顔で、しかし毅然とした態度で交渉することが大切だ。怒ったり、イライラしたりしても、相手は引かない。
重要なのは、「ノー」と言って立ち去る準備があることを見せること。本当に立ち去ろうとすると、多くの場合、売り手が妥協してくる。これは駆け引きの一部であり、失礼ではない。
ただし、数十円の差で延々と交渉するのは時間の無駄だ。100ポンドと80ポンドの差は約40円。現地の人の生活水準を考えれば、その40円が彼らにとってはより大きな意味を持つこともある。
写真撮影のエチケット
エジプトでは、人を撮影する前に必ず許可を求めよう。特に女性や子供の撮影には注意が必要だ。また、軍事施設、政府関連の建物、橋、駅などの撮影は禁止されていることが多い。カイトベイの要塞の一部区域も撮影禁止だ。警備員に注意されたら、素直に従おう。
観光地では、「写真を撮ってあげる」と近づいてくる人がいる。撮影後にチップを要求されることがほとんどなので、必要なければ丁重に断ろう。
ラマダン期間中の過ごし方
ラマダン中にアレクサンドリアを訪れる場合、いくつかの点に注意が必要だ。日中は多くのレストランやカフェが閉まる。観光客向けのホテルのレストランは営業しているが、路上で飲食するのは避けよう。地元の人々に対する配慮だ。
一方で、日没後の街は特別な雰囲気に包まれる。イフタール(断食明けの食事)の時間になると、家族や友人が集まり、街全体が祝祭ムードになる。この時期ならではの体験として、地元の家庭やレストランでイフタールを共にする機会があれば、ぜひ参加してほしい。
地元の人と仲良くなる方法
アレクサンドリアの人々は、カイロの人々よりもややシャイだが、一度打ち解けると非常に温かい。簡単なアラビア語の挨拶を覚えておくと、距離がぐっと縮まる。
- 「アッサラーム・アライクム」(こんにちは、平和がありますように)
- 「シュクラン」(ありがとう)
- 「イズム・エー?」(お名前は?)
- 「アナ・ミン・アルヤバーン」(私は日本から来ました)
日本から来たと言うと、多くのエジプト人が興味を示してくれる。アニメやサッカー(日本代表)の話題は共通の話題になりやすい。
知られざるスポット
観光客があまり訪れない、しかし魅力的な場所をいくつか紹介しよう。
エル・シャトビー墓地(El-Shatby Necropolis):紀元前3世紀の墓地遺跡。観光客はほとんどおらず、静かに古代アレクサンドリアの痕跡を感じることができる。ただし、場所が分かりにくいので、タクシー運転手に説明が必要だ。
アッタリン・アンティーク市場(Attarin Antique Market):ダウンタウンの路地裏にある骨董品市場。本物かどうかは怪しいものも多いが、眺めているだけで楽しい。値段交渉は必須だ。
夜明けの漁港:カイトベイの要塞近くの漁港に、日の出前に行ってみよう。夜通し漁をしていた漁師たちが戻ってきて、その日の水揚げを売る姿を見ることができる。観光客向けではないが、生きた港町の風景は一見の価値がある。
トラブルを避けるために
アレクサンドリアは比較的安全な都市だが、いくつかの点に注意しよう。
夜遅くの一人歩きは避けること。特に、コーニッシュの東端や、旧市街の路地裏は人通りが少なくなる。女性の場合は、肩や膝を覆う服装が望ましい。ビーチでも、地元の女性は水着で泳がない。観光客向けのプライベートビーチでは問題ないが、公共のビーチでは控えめな服装を心がけよう。
スリや置き引きには注意。特に混雑した市場やトラムの中では、貴重品を体の前に持つようにしよう。パスポートや大金はホテルのセーフティボックスに預け、必要な分だけ持ち歩くのが賢明だ。
交通と通信
カイロからアレクサンドリアへ
最も一般的なのは鉄道だ。カイロのラムセス駅からアレクサンドリアのミスル駅まで、特急列車で約2時間半。ファーストクラス(約150エジプトポンド / 約3USD)は快適で、エアコン完備。セカンドクラス(約100エジプトポンド / 約2USD)も悪くないが、混雑することがある。チケットは駅の窓口で当日購入可能だが、週末や祝日は混むので、前日までに購入しておくと安心だ。
バスは、カイロのトゥルゴマーン・バスターミナルから頻繁に運行している。所要時間は約3時間で、料金は約100〜150エジプトポンド。GoバスやSuperjetなどの会社が運行しており、エアコン完備の快適なバスだ。オンライン予約も可能だ。
タクシーやUber/Careemでの移動も可能だが、約2,000〜3,000エジプトポンド(約40〜60USD)かかる。3〜4人でシェアすれば、一人あたりのコストは列車と大差ない。荷物が多い場合や、空港から直接アレクサンドリアに向かう場合は便利だ。
市内交通
トラム:アレクサンドリアの象徴とも言える路面電車。1863年に開業した、アフリカで最も古いトラムシステムだ。青いトラム(ラムル・ライン)と黄色いトラム(東部ライン)の2系統がある。料金は一律2エジプトポンド(約4円)という驚きの安さだが、古い車両は冷房がなく、夏は蒸し暑い。観光というよりは、地元の生活を体験する手段として乗ってみるのも面白い。
ミニバス(ミクロバス):地元の人々の主要な移動手段。決まったルートを走り、好きな場所で乗り降りできる。料金は約3〜5エジプトポンド。ただし、行き先表示はアラビア語のみで、観光客には利用しづらい。冒険心がある方は挑戦してみてもいいだろう。
タクシー:白いタクシーが街中を走っている。メーターはあるが、使わない運転手がほとんど。乗車前に値段交渉が必要だ。ダウンタウンからスタンレーまで約50〜80エジプトポンド、モンタザまで約100〜150エジプトポンドが目安。
Uber/Careem:アプリを使った配車サービス。通常のタクシーより若干高いが、値段交渉が不要で、ルートも記録されるので安心だ。エジプトでのクレジットカード決済には対応していないことが多いので、現金払いを選択しよう。
空港からのアクセス
アレクサンドリアにはボルグ・エル・アラブ国際空港があるが、国際線は限られている。多くの旅行者はカイロ国際空港を利用する。カイロ空港からアレクサンドリアまでは、タクシーで約3時間(約2,500〜3,500エジプトポンド)。または、空港からカイロ市内に出て、ラムセス駅から列車という選択肢もある。
通信
エジプトのSIMカードは空港や街中の携帯ショップで購入できる。主要キャリアはVodafone Egypt、Orange、Etisalat(e&)の3社。観光客向けのプランは、30日間で10GBのデータと通話付きで約300〜500エジプトポンド(約6〜10USD)が相場だ。パスポートの提示が必要。
ホテルやカフェではWi-Fiが利用できることが多いが、速度は期待しない方がよい。重要なメールや調べ物は、SIMカードのモバイルデータを使う方が確実だ。
日本のスマートフォンは、SIMロックが解除されていればエジプトのSIMカードを使用できる。eSIM対応機種であれば、日本出発前にAiraloやHolaflyなどのサービスでeSIMを購入しておくと、到着後すぐにデータ通信が使える。
VPNについて
エジプトでは、一部のVoIPサービス(WhatsApp通話、FaceTime、Skypeなど)がブロックされていることがある。日本の家族や友人とビデオ通話をしたい場合は、VPNアプリを日本で事前にダウンロードしておくことをおすすめする。NordVPN、ExpressVPN、Surfsharkなどが一般的だ。
電圧とプラグ
エジプトの電圧は220V、周波数は50Hz。プラグはCタイプ(丸ピン2本)が主流だ。日本の電化製品を使う場合は、変換プラグと変圧器(日本製品が100V専用の場合)が必要。最近のスマートフォンやノートパソコンの充電器は100〜240V対応が多いので、変換プラグだけで済むことが多い。出発前に確認しておこう。
緊急連絡先
- 警察:122
- 救急車:123
- 消防:180
- 在エジプト日本国大使館(カイロ):+20-2-2528-5910
日本大使館はカイロにあり、アレクサンドリアには領事館がない。緊急時はカイロの大使館に連絡することになる。
アレクサンドリアは誰向けか:まとめ
アレクサンドリアは、すべての人に向いている街ではない。ピラミッドや王家の谷のような圧倒的なモニュメントはなく、ルクソールやアスワンのような「古代エジプト」の雰囲気も薄い。観光インフラはカイロより整っておらず、英語が通じる場面も限られる。
しかし、この街には独自の魅力がある。地中海の風、コスモポリタンな歴史の残り香、カイロの喧騒から離れた落ち着いた空気。アレクサンドリア図書館で古代の知の都に思いを馳せ、カイトベイの要塞からファロスの灯台があった海を眺め、コム・エル・シュカファのカタコンベで文明の交差点に立つ。そして夕暮れのコーニッシュを散歩しながら、新鮮なシーフードに舌鼓を打つ。
アレクサンドリアをおすすめしたいのは、こんな人だ。エジプト再訪者でカイロ以外を探索したい人。地中海文明やヘレニズム史に興味がある人。観光地化されすぎていない「本物の」体験を求める人。シーフード好き。そして、旅に「発見」を求める人。
逆に、初めてのエジプトで時間が限られている人、古代エジプト文明(ファラオ、ピラミッド、王墓)を見たい人、整備された観光インフラを求める人には、ルクソールやアスワンを優先することをおすすめする。
アレクサンドリアは、エジプトの別の顔を見せてくれる街だ。ぜひ、時間に余裕を持って訪れてほしい。