について
スイス完全旅行ガイド - アルプスの宝石を巡る究極の旅
スイスという国の名前を聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。雪に覆われたアルプスの峰々、精密な時計、濃厚なチョコレート、それとも穴の開いたチーズだろうか。実際にスイスを旅してみると、これらのイメージはすべて正しいのだが、それはこの国の魅力のほんの一部に過ぎないことに気づくはずだ。
私は過去15年間で20回以上スイスを訪れ、四季を通じてこの国のほぼすべての地域を歩き回ってきた。最初は典型的な観光客としてユングフラウヨッホに登り、ツェルマットでマッターホルンを眺めていたが、回を重ねるごとにこの国の奥深さに魅了されていった。このガイドでは、私が実際に体験して得た知識と、日本人旅行者の視点から本当に役立つ情報を余すところなくお伝えしたい。
1. スイスに行くべき理由
世界最高レベルの自然景観
スイスの自然の美しさは、写真や映像で見るよりも実際に目にした方が何倍も感動的だ。これは決して誇張ではない。私が初めてグリンデルワルトからアイガー北壁を見上げたとき、その圧倒的なスケールに言葉を失った。日本にも美しい山岳風景はたくさんあるが、スイスアルプスには独特の迫力がある。氷河が削り出した深い谷、標高4000メートルを超える峰々が連なる稜線、エメラルドグリーンの氷河湖、そして花が咲き乱れる高山草原が織りなす景観は、まさに地球が作り出した芸術作品だ。
特筆すべきは、この素晴らしい自然へのアクセスの良さだ。日本のアルプスでは、絶景を見るために何時間もの登山が必要なことが多いが、スイスでは登山鉄道やロープウェイを使って、体力に自信がない人でも標高3000メートル以上の展望台に簡単に到達できる。ユングフラウヨッホ、ゴルナーグラート、シルトホルン、ティトリスなど、世界的に有名な展望台はすべて公共交通機関でアクセス可能だ。これは、スイスが100年以上かけて整備してきた山岳観光インフラの賜物であり、世界でも類を見ない充実度を誇っている。
信頼性の高い公共交通機関
日本人として海外を旅行するとき、最も不満を感じることの一つが公共交通機関の不正確さだろう。電車が時刻表通りに来ない、バスがいつ来るかわからない、そもそも時刻表が存在しないといった経験は、多くの国で珍しくない。しかし、スイスは例外だ。スイスの公共交通機関は、日本と同等か、場合によってはそれ以上の正確さで運行されている。
スイス連邦鉄道(SBB)の定時運行率は90%を超えており、1分の遅れでも謝罪のアナウンスが流れることがある。これは日本人にとって非常に安心できるポイントだ。さらに、鉄道、バス、船、ロープウェイがすべて一つのシステムとして統合されており、乗り換えがスムーズに設計されている。例えば、ルツェルンからリギ山頂に行く場合、船で湖を渡り、登山鉄道に乗り継ぎ、最後にロープウェイで山頂に到達するという経路があるが、これらの接続がすべて計算されており、待ち時間は最小限で済む。
治安の良さと清潔さ
スイスは世界で最も治安の良い国の一つだ。夜遅くに一人で街を歩いても、ほとんど危険を感じることはない。もちろん、観光地では他の国と同様にスリや置き引きに注意する必要があるが、それ以外の犯罪に巻き込まれるリスクは極めて低い。私はスイスで何度も夜遅くまで出歩いたが、一度も怖い思いをしたことがない。
清潔さについても、日本人の基準を満たすレベルだ。街中にゴミはほとんど落ちておらず、公衆トイレも比較的きれいに保たれている。レストランやホテルの衛生水準も高く、生水を直接飲むことができる(これは実は世界では珍しいことだ)。アルプスの湧き水は特に美味しく、街中の噴水から流れる水も飲料可能なものが多い。ただし、念のため確認することをお勧めする。
多様な文化体験
スイスは小さな国だが、その中に4つの公用語圏がある。ドイツ語圏(約63%)、フランス語圏(約23%)、イタリア語圏(約8%)、そしてロマンシュ語圏(約0.5%)だ。これは単に言語が違うというだけでなく、文化、食事、建築様式、人々の気質まで異なることを意味する。チューリッヒとジュネーブでは全く違う雰囲気を感じるし、ティチーノに行けばイタリアにいるような錯覚を覚える。一つの国を旅しながら、複数の文化圏を体験できるのは、スイスならではの魅力だ。
この文化的多様性は、スイスの歴史と深く結びついている。スイスは1291年に3つの州(カントン)が同盟を結んで始まり、その後徐々に他の地域を吸収して現在の26州体制になった。それぞれの州が高度な自治権を持っており、地域のアイデンティティを強く保持している。この連邦制の仕組みは、日本の都道府県制度よりもはるかに地方分権的で、各カントンが独自の法律や教育制度を持っているほどだ。
四季を通じた魅力
スイスには明確な四季があり、どの季節に訪れても異なる魅力がある。夏(6月から8月)はハイキングの最適期で、標高2000メートル以上の高山草原が花で覆われる。春(4月から5月)は野の花が咲き始め、雪解け水で滝が最も美しくなる時期だ。秋(9月から10月)は紅葉が美しく、ブドウの収穫祭が各地で開催される。そして冬(12月から3月)は言うまでもなくスキーシーズンで、世界最高クラスのスキーリゾートが待っている。
特に日本人観光客にとって嬉しいのは、日本と気候が似ていることだ。緯度は北海道より北だが、標高の低い地域は比較的温暖で、夏は日本より過ごしやすく、冬は思ったほど寒くない(もちろん山岳地帯は除く)。湿度が低いので、夏でもカラッとしていて快適だ。ただし、紫外線は強いので日焼け対策は必須だ。
日本からのアクセス
日本からスイスへは、チューリッヒへの直行便が週に数便運航されている。飛行時間は約12時間半で、ヨーロッパの主要都市の中ではアクセスしやすい部類に入る。直行便がない日でも、フランクフルト、パリ、アムステルダムなど、ヨーロッパの主要ハブ空港を経由すれば、比較的スムーズにスイスに到着できる。
ビザについては、日本国籍保持者は90日以内の観光目的であればビザなしで入国できる。これはシェンゲン協定に基づくもので、スイスはEU加盟国ではないがシェンゲン圏に含まれている。パスポートの残存期間はシェンゲン圏出国予定日から3ヶ月以上必要なので、旅行前に確認しておこう。
日本人が感じる居心地の良さ
スイス人の気質は、日本人と通じるところがある。時間に正確で、約束を守り、仕事に誠実に取り組む。サービスの質も高く、日本のおもてなしとは少し違うが、プロフェッショナルで信頼できる対応が期待できる。また、静かで落ち着いた環境を好む傾向があり、電車内での通話や大声での会話は控えめだ。これは、他のヨーロッパ諸国と比べると日本人にとって居心地が良いポイントだ。
もちろん、文化の違いから戸惑うこともある。例えば、日曜日はほとんどの店が閉まる(これは法律で定められている)、レストランでの食事は日本より時間がかかる、チップの習慣がある(義務ではないが)などだ。しかし、これらは事前に知っておけば問題ない程度の違いであり、全体としてスイスは日本人にとって旅行しやすい国だと言える。
2. スイスの地域
チューリッヒ地域
スイス最大の都市チューリッヒは、多くの日本人旅行者がスイスの旅を始める場所だ。チューリッヒ空港は日本からの直行便が発着する唯一のスイスの空港であり、ここから各地への鉄道網が放射状に伸びている。空港から中央駅までは直通電車でわずか10分という便利さだ。
チューリッヒは金融と文化の中心地として知られ、高層ビルが立ち並ぶビジネス街と、中世の面影を残す旧市街が共存している。私が初めてチューリッヒを訪れたとき、その洗練された雰囲気に感銘を受けた。リマト川沿いを歩けば、グロスミュンスター大聖堂の双塔が目に入り、細い路地を抜ければ高級ブランドショップが並ぶバーンホフ通りに出る。この街は一日あれば主要な観光スポットを回ることができるが、美術館好きなら数日滞在する価値がある。
チューリッヒ美術館(Kunsthaus Zurich)は、モネ、ピカソ、シャガールなどの名作を所蔵する国内最大級の美術館だ。2021年に新館がオープンし、展示スペースが大幅に拡大された。また、スイス国立博物館ではスイスの歴史と文化を体系的に学ぶことができる。建物自体が城のような外観で、一見の価値がある。
チューリッヒ湖は市民の憩いの場であり、天気の良い日には湖畔でピクニックをする人々や、泳いでいる人々を見かける。そう、チューリッヒ湖は泳げるほど水がきれいなのだ。夏には無料の湖水浴場が開放され、地元の人々で賑わう。観光客として訪れても、足を水につけて涼むだけで気持ちが良い。湖上遊覧船に乗れば、周囲の山々と湖畔の街並みを眺めながらのんびりとした時間を過ごせる。
食事については、チューリッヒはスイスで最も国際的な都市だけあって、世界各国の料理が楽しめる。和食レストランも複数あり、寿司や焼き鳥など、日本食が恋しくなったときには助かる。ただし、価格は日本の2から3倍は覚悟しておこう。伝統的なスイス料理を試したいなら、旧市街のレストランでチューリッヒ風仔牛肉(Zurcher Geschnetzeltes)をお勧めする。クリームソースで煮込んだ仔牛肉をロスティ(ジャガイモのパンケーキ)と一緒に食べる、チューリッヒの名物料理だ。
ベルン
スイスの首都ベルンは、多くの旅行者が見落としがちな宝石のような街だ。チューリッヒやジュネーブほど知名度はないが、ユネスコ世界遺産に登録された旧市街は、中世ヨーロッパの雰囲気を最も良く保存している場所の一つだ。アーレ川が大きく湾曲して形成した半島状の地形に、12世紀からの歴史が詰まっている。
ベルンを歩いて最初に気づくのは、6キロメートルに及ぶアーケード(Lauben)だ。建物の1階部分がアーケードになっており、雨の日でも傘なしで買い物やそぞろ歩きが楽しめる。これは日本の商店街の屋根付き通路に似ているが、数百年前から存在し、石造りの建物と調和した美しさがある。アーケードの下には様々な店が並び、高級時計店から地元のベーカリーまで、あらゆるものが見つかる。
ベルンのシンボルといえば、時計塔(Zytglogge)だ。この塔は1530年から動き続けている天文時計を持ち、毎時56分から始まる仕掛け時計のショーは観光客の人気を集めている。熊や道化師の人形が動き、最後に鐘が鳴る様子は、何度見ても楽しい。塔の内部ツアーに参加すれば、複雑な時計の仕組みを間近で見ることができる。
アインシュタインがスイス特許庁で働きながら相対性理論を発表したのは、このベルンだった。クラムガッセ49番地にあるアインシュタインハウスは、彼が1903年から1905年まで住んでいたアパートを博物館として公開している。特別な展示物があるわけではないが、天才物理学者が家賃を払いながら革命的な論文を書いていたという事実は、なんとも親しみを感じさせる。
ベルンには熊公園(Barenpark)がある。これは偶然ではなく、ベルンの名前の由来が熊(Bar)だからだ。1513年からベルンは熊を飼育しており、現在は旧市街の橋を渡ったアーレ川のほとりに広々とした公園が設けられている。以前は狭い熊の穴で飼育されていたが、動物愛護の観点から2009年に現在の公園が作られた。熊たちがのびのびと過ごしている様子を見るのは、なんとも心が和む。
食事では、ベルンの名物はベルナープラッテ(Berner Platte)だ。これは牛肉、豚肉、ソーセージ、ハムなどの肉類を塩漬けキャベツや豆と一緒に盛り合わせた豪快な料理で、もともとは戦争の勝利を祝って食べられたものだという。一人で食べるには量が多いので、シェアすることをお勧めする。ベルンのレストランは全体的にチューリッヒよりも少し安い傾向がある。
ベルナーオーバーラント(ユングフラウ地域)
スイスアルプスの象徴的存在であるユングフラウ地域は、多くの日本人旅行者にとってスイス旅行のハイライトだ。アイガー(3970m)、メンヒ(4107m)、ユングフラウ(4158m)の三山が連なる景観は、世界で最も有名な山岳風景の一つであり、毎年何百万人もの観光客がこの絶景を求めて訪れる。
この地域の拠点となる街はいくつかあるが、最も便利なのはインターラーケン(Interlaken)だ。文字通り「湖の間」を意味するこの街は、トゥーン湖とブリエンツ湖に挟まれた平野に位置し、ユングフラウ地域への玄関口として機能している。大型ホテルやレストランが多く、英語も広く通じるので、初めてスイスを訪れる旅行者にも安心だ。ただし、観光地化が進んでいるため、本来のスイスらしさを求める人には物足りないかもしれない。
私が個人的にお勧めするのは、グリンデルワルト(Grindelwald)を拠点にすることだ。インターラーケンから登山鉄道で約30分、アイガー北壁を間近に望むこの村は、観光客向けの施設も充実していながら、本物のアルプスの村の雰囲気を保っている。朝、窓を開けるとアイガーの岩壁が目の前に広がる体験は、インターラーケンでは味わえない。また、2020年に開業したアイガー・エクスプレス(Eiger Express)により、グリンデルワルトからユングフラウヨッホへのアクセスが大幅に改善された。
ユングフラウヨッホ(Jungfraujoch、3454m)は「ヨーロッパの屋根」と呼ばれ、ヨーロッパ最高地点の鉄道駅がある。ここに登る登山鉄道は1912年に開通し、100年以上の歴史を持つ。アイガーの内部をトンネルで貫き、途中のアイガーヴァント駅とアイスメーア駅では、岩壁に開けられた窓から外の景色を眺めることができる。山頂駅には展望テラス、氷の宮殿、レストラン、土産物店があり、一日中楽しめる。ただし、標高が高いので高山病に注意が必要だ。息切れや頭痛を感じたら、無理せず休憩しよう。
ラウターブルンネン(Lauterbrunnen)は「72の滝の谷」として知られる、断崖絶壁に囲まれた谷間の村だ。村に降り立つと、まず目に入るのはシュタウバッハの滝(Staubbachfall)だ。高さ297メートルの崖から流れ落ちる水は、途中で霧のように舞い上がり、日光を受けて虹を作る。この滝はゲーテに「魂の歌」という詩を書かせたことでも知られている。ラウターブルンネンからはケーブルカーでグリュッチアルプに上がり、そこから登山鉄道でミューレンへ行くことができる。
ミューレン(Murren)は、車が入れない崖の上の小さな村だ。標高1650メートルに位置し、アイガー、メンヒ、ユングフラウを正面から眺める最高のロケーションを持つ。村自体は徒歩で一周できるほど小さいが、静かで穏やかな雰囲気は格別だ。ここからロープウェイでシルトホルン(Schilthorn、2970m)に上がることができる。シルトホルンの山頂には回転レストラン「ピッツ・グロリア」があり、007シリーズの映画「女王陛下の007」のロケ地として有名だ。360度のパノラマを見ながら食事ができる贅沢な体験だ。
ハイキングが好きな人にとって、この地域は天国だ。何百キロもの整備されたトレイルがあり、難易度も様々だ。初心者にお勧めなのは、メンリッヒェン(Mannlichen)からクライネ・シャイデック(Kleine Scheidegg)への約1時間半のコース。ほぼ平坦な道を歩きながら、アイガー北壁を真正面に見ることができる。中級者には、ファウルホルン(Faulhorn)経由でフィルスト(First)からシーニゲ・プラッテ(Schynige Platte)への約6時間のコースがお勧めだ。ブリエンツ湖を見下ろしながら歩く稜線は、息を呑む美しさだ。
中央スイス/ルツェルン
中央スイスは、1291年にスイス連邦が誕生した場所であり、スイス人にとって精神的な故郷とも言える地域だ。その中心がルツェルン(Luzern)で、多くの旅行者がスイスで最も美しい街として挙げる場所だ。私もその意見に同意する。ルツェルン湖(フィアヴァルトシュテッター湖)のほとりに位置するこの街は、中世の街並み、雄大な山々、青い湖、そして現代的な文化施設が見事に調和している。
ルツェルンの象徴は、カペル橋(Kapellbrucke)だ。1333年に建設されたこの木造橋は、ヨーロッパ最古の屋根付き木橋で、橋の天井には17世紀に描かれた三角形の板絵が並んでいる。橋の中程にある八角形の水の塔は、もともと監視塔や牢獄として使われていたものだ。1993年の火災で橋の大部分が焼失したが、見事に復元され、今も街のシンボルとして多くの観光客を魅了している。夕暮れ時、街灯がともり始める頃のカペル橋は特に美しい。
旧市街にはフレスコ画で装飾された建物が並び、そぞろ歩きが楽しい。ワイン市場広場(Weinmarktplatz)周辺は特に絵になる場所で、カフェのテラスで休憩しながら行き交う人々を眺めるのも良い。少し足を延ばせば、ムーゼック城壁(Museggmauer)に登ることができる。中世の城壁がほぼ完全な形で残っており、塔の一部は公開されている。城壁の上からは、赤い屋根が連なる旧市街と、その向こうに広がるピラトゥス山を一望できる。
ルツェルンから日帰りで行ける山は複数あるが、最も人気があるのはピラトゥス(Pilatus、2132m)とリギ(Rigi、1798m)だ。ピラトゥスへは、世界で最も急勾配の歯車式登山鉄道(勾配48%)でアルプナッハシュタットから登るか、クリエンスからロープウェイで登ることができる。「ゴールデン・ラウンドトリップ」と呼ばれる周遊コースでは、船、登山鉄道、ロープウェイを組み合わせて、ルツェルンを起点に一周できる。山頂からの眺めは素晴らしく、晴れた日にはアイガー、メンヒ、ユングフラウまで見渡せる。
リギ山は「山の女王」と呼ばれ、ヨーロッパで最初の登山鉄道が開通した場所だ(1871年)。ルツェルンから船でフィッツナウに行き、そこから登山鉄道で山頂へ。または、船でヴェギスに行き、ロープウェイで登ることもできる。リギは山頂が比較的平らで、ハイキングコースも穏やかなものが多いので、初心者にお勧めだ。特に日の出を見るためにリギに泊まるのは、忘れられない体験になる。マーク・トウェインもかつてリギに滞在し、その体験を著書に記している。
ティトリス(Titlis、3238m)は、中央スイスで唯一の氷河を持つ山で、一年中雪が楽しめる。エンゲルベルクからロープウェイを乗り継いで山頂に達するが、最後の区間は世界初の回転ゴンドラ「ロットエア」で、360度回転しながら上昇する。山頂には氷河洞窟やヨーロッパ最高地点の吊り橋「ティトリス・クリフ・ウォーク」があり、スリル満点の体験ができる。夏でも山頂は氷点下になることがあるので、防寒具を忘れずに。
ジュネーブとロマンディ(フランス語圏)
スイスのフランス語圏、ロマンディは、ドイツ語圏とは全く異なる雰囲気を持つ。言葉だけでなく、食事、ワイン、人々の気質、街の雰囲気まで、フランス的な優雅さが感じられる。もしスイスの別の顔を見たいなら、この地域を訪れることをお勧めする。
ジュネーブ(Geneva)は、国際機関が集中する世界都市だ。国連欧州本部、世界保健機関(WHO)、赤十字国際委員会など、140以上の国際機関がここに拠点を置いている。レマン湖(ジュネーブ湖)のほとりに位置し、対岸にはモンブランをはじめとするフランスアルプスが見える。湖面から噴き上げる大噴水(Jet d eau)は高さ140メートルに達し、ジュネーブのシンボルとなっている。
ジュネーブの旧市街は丘の上にあり、サン・ピエール大聖堂を中心に中世の街並みが広がる。大聖堂の塔に登れば、赤い屋根が連なる旧市街、青いレマン湖、そして遠くにアルプスの峰々という絶景が広がる。宗教改革者ジャン・カルヴァンがここで活動したことから、大聖堂の地下には宗教改革博物館がある。また、旧市街の一角には、宗教改革記念碑がある公園もある。
ジュネーブは高級時計の街でもある。パテック・フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ロレックスなど、世界的に有名な時計メーカーの本社がここにある。パテック・フィリップ美術館は、時計の歴史と芸術を学ぶのに最適な場所だ。展示されている歴史的な時計のコレクションは圧巻で、時計好きでなくても楽しめる。
ローザンヌ(Lausanne)は、ジュネーブから電車で約40分のところにある、レマン湖北岸の美しい街だ。急な坂道と階段が多く、「スイスのサンフランシスコ」とも呼ばれる。国際オリンピック委員会(IOC)の本部があり、オリンピック博物館は必見だ。歴代オリンピックの資料や、実際に使われた聖火トーチなどが展示されており、スポーツファンならずとも楽しめる。
ローザンヌ大聖堂はスイスで最も美しいゴシック建築とされ、13世紀に建てられた。毎晩午後10時から午前2時まで、塔の上から番人が四方に向かって時刻を叫ぶ伝統が700年以上続いている。これは実際に聞くことができ、中世にタイムスリップしたような気分になる。
モントルー(Montreux)は、レマン湖東端に位置するリゾート都市で、「スイスのリビエラ」と呼ばれる温暖な気候で知られる。湖畔のプロムナードには椰子の木が並び、地中海の雰囲気すら感じられる。毎年7月に開催されるモントルー・ジャズ・フェスティバルは世界的に有名で、期間中は街全体が音楽に包まれる。フレディ・マーキュリーは晩年をモントルーで過ごし、湖畔には彼の銅像が立っている。
モントルーから徒歩15分ほどのところにあるシヨン城(Chateau de Chillon)は、スイスで最も訪問者の多い城だ。レマン湖に浮かぶように建つこの城は、12世紀から13世紀にかけて建設され、サヴォイ家の居城として使われた。バイロン卿の詩「シヨンの囚人」で有名になり、地下牢には詩に登場するボニヴァールが繋がれていた柱が残っている。城内の見学は約2時間かかり、中世の生活を垣間見ることができる。
この地域のワイン産地、ラヴォー(Lavaux)は見逃せない。レマン湖に面した急斜面に階段状のブドウ畑が広がる景観は、ユネスコ世界遺産に登録されている。ローザンヌとモントルーの間に位置し、電車の車窓からも見えるが、できれば実際に歩いてみることをお勧めする。ブドウ畑の間を縫うように小道があり、途中のワイナリーでテイスティングも楽しめる。この地域で作られるシャスラ種の白ワインは、フルーティーで飲みやすい。
ヴァレー/ツェルマット
ヴァレー州は、スイスで最も高い山々が集中する地域だ。スイス国内の4000メートル峰41座のうち、実に38座がこの州にある。その中でも最も有名なのが、ツェルマット(Zermatt)とマッターホルン(Matterhorn、4478m)だ。
マッターホルンは、その完璧なピラミッド型のシルエットで世界中の人々を魅了してきた。トブラローネのチョコレートのパッケージにも描かれているこの山は、スイスの象徴とも言える存在だ。私が初めてマッターホルンを見たのは曇りの日で、雲の間から頂上だけがちらりと見えた。翌朝、晴れ渡った空の下で全容を見たときの感動は今でも忘れられない。朝日に染まるマッターホルンは、何時間でも眺めていられるほど美しい。
ツェルマットは環境保護のため、ガソリン車の乗り入れが禁止されている。村内の移動は徒歩か電気自動車、または馬車だ。そのため空気が澄んでおり、静かで落ち着いた雰囲気がある。村のどこからでもマッターホルンが見え、特に夕暮れ時、山が赤く染まる「アルペングリュー」は必見だ。
ゴルナーグラート(Gornergrat、3089m)は、ツェルマットからの最も人気のある展望台だ。1898年開通の登山鉄道で約33分、終点のゴルナーグラート駅はマッターホルンを含む29座の4000メートル峰を一望できる。駅前には3100クルム・ホテル・ゴルナーグラートがあり、ここに泊まればご来光を独り占めできる(もちろん宿泊料金は高いが、一生の思い出になる)。
マッターホルン・グレッシャー・パラダイス(Klein Matterhorn、3883m)は、ヨーロッパ最高地点のロープウェイ駅だ。ここからはマッターホルンを間近に見られるだけでなく、夏でもスキーができる氷河がある。展望台にはレストランや土産物店があり、氷河の中を歩く「氷河宮殿」も人気だ。ただし、標高が非常に高いので、高山病の症状が出やすい。ゆっくり動き、水分を十分に取ることをお勧めする。
ツェルマット周辺はハイキング天国でもある。最も人気のあるコースの一つが「5湖巡り」(5-Seenweg)で、ゴルナーグラートから出発し、5つの湖を巡りながら下山する約2時間半のコースだ。湖面にマッターホルンが映る絶景スポットが点在しており、特にシュテリ湖(Stellisee)とリッフェルゼー(Riffelsee)は有名だ。風のない穏やかな朝が最も美しい写真が撮れる。
ツェルマットへのアクセスは、通常ブリーク(Brig)またはフィスプ(Visp)で乗り換えて、マッターホルン・ゴッタルド鉄道で向かう。車で来る場合は、テッシュ(Tasch)に駐車し、そこからシャトル列車に乗る。このアプローチも旅の一部と考えれば、徐々にマッターホルンが近づいてくる期待感を楽しめる。
ティチーノ(イタリア語圏)
アルプスの南側に位置するティチーノ州は、スイスの中のイタリアだ。言語、食事、建築、気候、すべてがイタリア的で、アルプスを越えると別の国に来たような気分になる。地中海性気候のおかげで、スイスで最も温暖な地域であり、ヤシの木やオリーブ、時にはレモンの木さえ見られる。
ルガノ(Lugano)はティチーノ最大の都市で、同名の湖のほとりに位置する。チューリッヒやジュネーブとは全く異なる雰囲気で、カラフルな建物、狭い路地、広場でエスプレッソを飲む人々など、まさにイタリアの街を歩いているようだ。ただし、ここはスイスなので、電車は時間通りに来るし、街は清潔で、英語も通じる。イタリアの魅力とスイスの効率性を兼ね備えた、いいとこどりの街だ。
ルガノ湖の遊覧船に乗れば、湖畔の小さな村々を訪れることができる。モルコーテ(Morcote)は「ルガノ湖の真珠」と呼ばれる美しい村で、丘の上の教会サンタ・マリア・デル・サッソへ続く石段は、ティチーノで最も絵になる風景の一つだ。ガンドリア(Gandria)は崖にへばりつくように建つ漁村で、車が入れないため昔ながらの雰囲気を残している。
ルガノからフニコラーレ(ケーブルカー)で登るサン・サルヴァトーレ山(Monte San Salvatore、912m)からは、ルガノ湖と周囲の山々を一望できる。反対側のブレ山(Monte Bre、933m)も同様にフニコラーレでアクセスでき、こちらからはルガノの街並みがよく見える。どちらも山頂にレストランがあり、絶景を眺めながらの食事は格別だ。
ロカルノ(Locarno)はスイスで最も日照時間が長い街として知られ、毎年8月に開催されるロカルノ映画祭は、カンヌ、ベネチアに次ぐ歴史を持つ。湖畔のピアッツァ・グランデ(大広場)に巨大スクリーンが設置され、8000人以上が屋外で映画を楽しむ。映画祭以外の時期も、広場はカフェやレストランで賑わう。
ロカルノからロープウェイで登るカルダダ(Cardada、1340m)とチメッタ(Cimetta、1670m)は、マッジョーレ湖とロカルノ市街を見下ろす絶好の展望台だ。設計はマリオ・ボッタで、彼の建築も見どころの一つだ。
アスコナ(Ascona)はマッジョーレ湖畔のリゾート地で、ルガノよりもさらにのんびりした雰囲気がある。パステルカラーの建物が湖畔に並び、カフェのテラスで読書をしたり、ただぼんやりと湖を眺めたりするのに最適だ。20世紀初頭にはモンテ・ヴェリタに芸術家や思想家のコミュニティがあり、ヘルマン・ヘッセやカール・ユングもここを訪れた。
ティチーノの食事は明らかにイタリア風だ。リゾット、ポレンタ、パスタが定番で、特に「リゾット・ティチネーゼ」は地元の名物だ。また、グロット(Grotto)と呼ばれる伝統的な居酒屋では、石のテーブルで地元のワインと料理を楽しむことができる。本格的なイタリア料理よりは素朴だが、それがまた味わい深い。
グラウビュンデン
スイス最大の州、グラウビュンデンは、スイスで最も「スイスらしい」地域かもしれない。アルプスの山々に囲まれた深い谷に点在する村々、何世紀も前から使われている山小屋、澄んだ空気と星空、そして独特の文化。ここにはスイスの原風景がある。
サンモリッツ(St. Moritz)は、1928年と1948年に冬季オリンピックが開催された世界的なスキーリゾートだ。標高1822メートルに位置するこの街は、年間322日晴天という恵まれた気候を持ち、「シャンパン気候」と呼ばれる乾燥した空気が特徴だ。冬は世界中からセレブリティが集まり、夏はハイキングや湖水浴が楽しめる。
サンモリッツは「ウィンターリゾートの発祥地」を自称している。1864年、地元のホテルオーナーがロンドンからの客に「冬もスイスは美しい」と約束し、もし満足しなければ旅費を払い戻すと言った。客は冬を過ごし、大いに満足して帰った。これがウィンターリゾートの始まりだという。この逸話が本当かどうかはともかく、サンモリッツが冬の観光を開拓した先駆者であることは間違いない。
グラウビュンデンを走る氷河急行(Glacier Express)は、世界で最も遅い急行列車として知られる。サンモリッツからツェルマットまでの約290キロを約8時間かけて走り、291の橋と91のトンネルを通過する。車窓からはアルプスの絶景が次々と現れ、特にランドヴァッサー橋(Landwasserviadukt)は必見だ。高さ65メートルの石造りの橋を列車が渡る様子は、まさに絵葉書のような光景だ。食堂車で食事をしながらの旅は、鉄道ファンでなくても感動する体験だ。
ダボス(Davos)は世界経済フォーラムの開催地として知られ、冬は各国の首脳や経済人が集まる。しかし、それ以外の時期は静かなリゾート地で、スキーやハイキングが楽しめる。トーマス・マンの小説「魔の山」の舞台となったサナトリウムもここにあった(現在はホテルになっている)。
クール(Chur)はスイス最古の都市とされ、5000年以上の歴史を持つ。グラウビュンデンの州都であり、氷河急行やベルニナ急行の始発駅でもある。旧市街は歩行者専用で、中世の建物が並ぶ路地を歩くと、時代を超えた旅をしているような気分になる。観光客で溢れることもなく、のんびりと街歩きが楽しめる。
ベルニナ急行(Bernina Express)は、クールからティラノ(イタリア)までを結ぶ観光列車で、ユネスコ世界遺産に登録されているベルニナ線を走る。最高地点はオスピツィオ・ベルニナ駅(2253m)で、アルプスの氷河を間近に見ることができる。360度のパノラマが楽しめるパノラマ車両は人気が高いので、事前予約をお勧めする。
グラウビュンデンはロマンシュ語が話される唯一の地域でもある。ロマンシュ語はラテン語から派生した言語で、約6万人が使用している。グラウビュンデンの一部の村では今でも日常的に使われており、道路標識や店の看板でこの珍しい言語を目にすることができる。
バーゼル
スイス、ドイツ、フランスの3か国が国境を接するバーゼルは、独特の国際的雰囲気を持つ街だ。ライン川がここで大きく曲がり、ドイツとフランスに向かって流れていく。路面電車に乗れば、隣国のドイツの街に行くこともできる。
バーゼルは「スイスの文化首都」と呼ばれることがある。人口わずか17万人の街に40以上の美術館があり、その密度は世界でもトップクラスだ。バイエラー財団(Fondation Beyeler)は、印象派から現代美術までの傑作を所蔵し、レンゾ・ピアノが設計した建物自体も見どころだ。ティンゲリー美術館では、動く彫刻で知られるジャン・ティンゲリーの作品を楽しめる。
毎年6月に開催されるアート・バーゼルは、世界最大の現代美術フェアで、世界中からコレクター、ギャラリスト、アーティストが集まる。この期間中、街全体がアート一色になり、美術館やギャラリーでも特別展示が行われる。アートに興味があるなら、この時期のバーゼル訪問は特にお勧めだ。
バーゼルの旧市街は、ライン川に面した丘の上に広がる。赤い砂岩で作られた大聖堂(Basler Munster)は街のシンボルで、塔に登ればライン川と3か国にまたがる景色を一望できる。市庁舎(Rathaus)の鮮やかな赤い外壁は、バーゼルで最も写真映えするスポットの一つだ。
ライン川での「遊泳」は、バーゼルならではの夏の楽しみ方だ。地元の人々は防水バッグに服を詰め、上流から川に入って流れに身を任せ、下流で岸に上がる。水は驚くほどきれいで、夏には何百人もの人々が川で泳いでいる。観光客でも参加できるが、流れが速いので泳ぎに自信がない人は要注意だ。
バーゼルはまた、スイス有数の製薬産業の中心地でもある。ロシュやノバルティスの本社があり、街の経済を支えている。ノバルティス・キャンパスには一般公開されているエリアがあり、世界的な建築家が設計した建物群を見学できる。
3. ユニークな体験
氷河急行と絶景鉄道の旅
スイスの鉄道旅行は、単なる移動手段ではなく、それ自体が目的地になる体験だ。特に有名なのが氷河急行(Glacier Express)で、ツェルマットからサンモリッツまでの約290キロを8時間かけて走る。「世界で最も遅い急行列車」という愛称は、この列車がゆっくりと景色を楽しむためにあることを示している。
私が初めて氷河急行に乗ったのは冬だった。雪に覆われたアルプスの谷を、ゆっくりと列車が進んでいく。暖かい車内から見る雪景色は、まるで動く絵画のようだった。食堂車でスイスワインとロスティを楽しみながら、次々と現れる絶景に見とれていると、8時間があっという間に過ぎてしまう。
氷河急行のハイライトの一つが、オーバーアルプ峠(Oberalppass、2033m)の通過だ。列車はループトンネルを駆使して高度を稼ぎ、雪に埋もれた峠を越える。また、ランドヴァッサー橋(Landwasserviadukt)は、高さ65メートルの石造りの橋で、列車がカーブしながら渡る様子は絶好のシャッターチャンスだ。
ベルニナ急行(Bernina Express)は、クールからイタリアのティラノまでを結ぶ路線で、ユネスコ世界遺産に登録されている。氷河急行より短い距離だが、景色の変化は劇的だ。スイスのアルプスの氷河地帯から、イタリアの温暖な渓谷まで、わずか数時間で気候が変わる。最高地点のオスピツィオ・ベルニナ(2253m)では、白い氷河と青い湖が目の前に広がる。
ゴールデンパス・ライン(GoldenPass Line)は、ルツェルンからモントルーまでを結ぶ路線で、スイス中央部からフランス語圏への旅が楽しめる。2022年に開業したゴールデンパス・エクスプレスにより、従来のブリークでの乗り換えなしで直通運転が可能になった。車内には世界初のプレステージクラスがあり、最前列の席からは運転手の視点で景色を楽しめる。
アルプスでのハイキング
スイスには65000キロ以上の整備されたハイキングコースがある。これは地球を1周半できる距離だ。初心者向けの平坦な道から、経験者向けの岩場まで、あらゆるレベルのハイカーが楽しめる。道標は全国で統一されており、黄色い標識が一般のハイキングコース、白と赤の標識が山岳コースを示す。
私のお気に入りのコースの一つが、グリンデルワルト近くのフィルスト(First)からバッハアルプゼー(Bachalpsee)への往復約3時間のコースだ。フィルストまではゴンドラで上がり、そこから緩やかな坂道を歩く。約1時間でたどり着くバッハアルプゼーは、アイガー、シュレックホルン、ヴェッターホルンを映す絶景の湖だ。風のない朝は特に美しく、山々が水面に完璧に映る。
ツェルマット周辺では、「5湖巡り」(5-Seenweg)が人気だ。ブラウヘルト(Blauherd)からシュテリゼー(Stellisee)、グリンジゼー(Grindjisee)、グリュンゼー(Grunsee)、モースイェゼー(Moosjisee)、ライゼー(Leisee)を巡る約2時間半のコース。どの湖からもマッターホルンが見え、それぞれ異なる角度からの姿を楽しめる。
上級者向けには、オートルート(Haute Route)がある。シャモニー(フランス)からツェルマットまでの約180キロを、約2週間かけて歩く長距離コースだ。氷河を越え、いくつもの峠を越えるこのルートは、アルプスハイキングの最高峰とされる。経験と装備が必要だが、完走したときの達成感は格別だ。
スキーとウィンタースポーツ
スイスは世界有数のスキー大国だ。200以上のスキーリゾートがあり、シーズンは通常12月から4月まで続く。標高の高い氷河リゾートでは、夏でもスキーができる場所もある。
ツェルマットは、マッターホルンを眺めながら滑れる唯一のスキーリゾートだ。標高3883メートルのクライン・マッターホルンまでリフトが通じており、イタリア側のチェルビニア(Cervinia)と合わせると、400キロ以上の滑走路が広がる。春から初夏にかけても氷河スキーが可能で、多くのプロスキーヤーがトレーニングに訪れる。
フェルビエ(Verbier)は、上級者向けの急斜面で知られるリゾートだ。モンフォール(Mont Fort、3329m)からのオフピステは、エキスパートスキーヤーの憧れだ。また、フリーライドワールドツアーの開催地としても有名で、世界最高のフリーライダーたちが競い合う。
サンモリッツは、1928年と1948年の冬季オリンピック開催地として知られる老舗リゾートだ。コルヴィリア(Corviglia)、コルヴァッチュ(Corvatsch)、ディアヴォレッツァ(Diavolezza)の3つのスキーエリアがあり、初心者から上級者まで楽しめる。また、クレスタ・ランやボブスレーなど、冬のスポーツの発祥地でもある。
家族連れには、グリンデルワルト(Grindelwald)やアデルボーデン(Adelboden)がお勧めだ。初心者向けのコースが充実しており、スキースクールも多い。子供向けのスノーパークやソリコースもあり、スキーをしない家族も楽しめる。
湖での水上アクティビティ
スイスには1500以上の湖があり、その多くで水上アクティビティが楽しめる。夏の暑い日には、湖水浴は地元の人々にとって日常の楽しみだ。公共のビーチ(Badi)が各地にあり、少額の入場料で利用できる。
チューリッヒ湖、ジュネーブ湖(レマン湖)、ルツェルン湖などでは、パドルボード(SUP)やカヤックが人気だ。レンタル店も多く、初心者でも気軽に試せる。特にルツェルン湖でのパドルボードは、周囲の山々を眺めながら水上散歩ができる贅沢な体験だ。
ジュネーブ湖では、ウェイクボードやウォータースキーも盛んだ。モントルーやローザンヌ周辺にはスクールがあり、初心者向けのレッスンも提供している。風が安定している日には、ウィンドサーフィンやカイトサーフィンも楽しめる。
チーズとチョコレートの世界
スイスのチーズとチョコレートは、世界的に有名だ。単に食べるだけでなく、その製造過程を見学できる施設も多い。
グリュイエール(Gruyeres)は、同名のチーズの産地だ。中世の城が見下ろす小さな村には、ラ・メゾン・デュ・グリュイエール(La Maison du Gruyere)というチーズ工場がある。ここでは、毎日行われるチーズ作りの様子を見学でき、できたてのチーズを試食することもできる。村自体も美しく、城の見学や、H.R.ギーガー博物館(エイリアンのデザイナーとして知られる)もある。
エメンタール(Emmental)地方は、穴の開いたチーズで有名なエメンタールチーズの産地だ。この地域の小さな乳製品工場(Schaukasergi)では、伝統的な製法でチーズが作られる様子を見学できる。緑の丘陵地帯に点在する農家の風景も美しく、ドライブやサイクリングで巡るのも楽しい。
チョコレートについては、スイス各地に工場見学ができる施設がある。ブロック(Broc)にあるカイエ(Cailler)チョコレート工場は、最も人気のある見学施設の一つだ。インタラクティブな展示でチョコレートの歴史を学び、製造工程を見学し、最後にはたっぷりの試食が待っている。キロック(Kilchberg)のリンツ博物館(Lindt Home of Chocolate)は、2020年にオープンした最新の施設で、高さ9メートルのチョコレートの噴水がシンボルだ。
ワインテイスティング
スイスはワイン生産国としてはあまり知られていないが、質の高いワインを生産している。生産量の少なさから国外にはほとんど輸出されないため、スイスでしか飲めないワインが多い。
ラヴォー(Lavaux)は、ジュネーブ湖北岸に広がるブドウ畑で、ユネスコ世界遺産に登録されている。急斜面に階段状に広がるブドウ畑の景観は圧巻で、シャスラ種の白ワインが主に生産されている。小さなワイナリーが点在しており、テイスティングを楽しみながら散策できる。
ヴァレー州も重要なワイン産地だ。シオン(Sion)周辺のブドウ畑では、フェンダン(Fendant)と呼ばれるシャスラ種の白ワインや、ピノ・ノワールの赤ワインが生産されている。また、スイス固有のブドウ品種であるコルナリン(Cornalin)やウマーニュ・ルージュ(Humagne Rouge)も試す価値がある。
時計工房の見学
スイスは高級時計の産地として世界的に有名だ。ジュラ山脈沿いの「時計の谷」(Vallee de Joux)や、ラ・ショー・ド・フォン(La Chaux-de-Fonds)は、時計産業の中心地だ。
ラ・ショー・ド・フォンは、ユネスコ世界遺産に登録された時計製造都市だ。国際時計博物館(Musee international d horlogerie)には、4500点以上の時計コレクションがあり、時計の歴史を体系的に学ぶことができる。一部のブランドでは、予約制で工房見学も可能だ。
ジュネーブでは、パテック・フィリップ美術館が必見だ。16世紀からの時計コレクションは圧巻で、時計の芸術的側面を堪能できる。ただし、撮影禁止なので、目に焼き付けるしかない。
温泉とスパ
スイスには天然温泉がいくつもあり、アルプスの絶景を眺めながらの入浴は格別の体験だ。
ロイカーバート(Leukerbad)は、ヨーロッパ最大のアルプス温泉リゾートだ。標高1411メートルの谷に位置し、毎日390万リットルの温泉水が湧き出る。公共の温泉施設がいくつもあり、冬には雪景色を眺めながら露天風呂に浸かることができる。日本の温泉とは異なり水着着用だが、泉質は良く、リラックスできる。
ヴァルス(Vals)の7132テルメは、建築家ペーター・ツムトールが設計した温泉施設として有名だ。地元産の石を60000枚以上使用した建物は、それ自体がアート作品だ。温泉としての体験も素晴らしく、異なる温度の浴槽を巡りながら、山の景色を楽しめる。事前予約が必要だが、建築好きには特にお勧めだ。
4. ベストシーズン
夏(6月から8月)
スイスの夏は、ハイキングや観光に最適な季節だ。標高の高い山岳地帯でも雪が溶け、高山植物が花を咲かせる。日が長く、午後9時頃まで明るいので、一日を最大限に活用できる。
ただし、夏はスイス旅行のハイシーズンでもある。特に7月後半から8月中旬は、ヨーロッパ各地からの観光客で人気スポットは混雑する。ユングフラウヨッホやマッターホルン周辺のホテルは、数ヶ月前から予約でいっぱいになることも珍しくない。この時期に旅行するなら、早めの予約が必須だ。
気温は、低地で25から30度、山岳地帯で15から20度程度だ。ただし、山の天気は変わりやすく、晴れていても急に雨が降ることがある。また、標高が上がると気温が下がるので、山に行くときは羽織るものを忘れずに。標高が100メートル上がるごとに気温は約0.6度下がるので、ユングフラウヨッホ(3454m)では、真夏でも氷点下になることがある。
春(4月から5月)
春は観光客が比較的少なく、穴場の季節だ。低地では花が咲き始め、山ではまだ雪が残っているので、両方の景色を楽しめる。雪解け水で滝が最も美しく流れるのもこの時期だ。
ただし、注意点もある。多くの山岳ロープウェイや登山鉄道は、冬のスキーシーズンと夏の観光シーズンの間の5月頃にメンテナンス休業することがある。また、標高の高いハイキングコースはまだ雪に覆われていることが多い。訪問前に、目的の施設が営業しているか確認しておこう。
気温は、低地で15から20度、山岳地帯で5から10度程度。天候は不安定で、晴れの日と雨の日が交互に来ることが多い。
秋(9月から10月)
秋は私が個人的に最も好きな季節だ。夏の混雑が去り、天候は比較的安定している。空気が澄んで山がくっきりと見え、紅葉が山々を彩る。
9月はまだハイキングに最適で、高山のコースも歩ける。10月になると高い山では雪が降り始めるが、低地ではまだ快適に過ごせる。ブドウの収穫時期でもあり、ワイン産地では収穫祭が開催される。
気温は、低地で10から20度、山岳地帯で5から15度程度。朝晩は冷え込むので、重ね着できる服装がお勧めだ。
冬(12月から3月)
冬はスキーヤーとスノーボーダーの季節だ。12月から4月初旬まで、各地のスキーリゾートが賑わう。クリスマスマーケットも各都市で開催され、幻想的な雰囲気を楽しめる。
スキーをしない人にとっても、冬のスイスには魅力がある。雪に覆われたアルプスの景色は格別で、ユングフラウヨッホやツェルマットなどの展望台は通年営業している。ただし、天候が悪いと視界が悪く、せっかく登っても何も見えないこともある。冬の山岳観光は、天気予報とにらめっこしながら柔軟に予定を組むことをお勧めする。
気温は、低地で0から5度、山岳地帯ではマイナス10度以下になることもある。都市部でも雪が降ることがあるが、除雪体制が整っているので交通機関への影響は少ない。
5. アクセス方法
日本からスイスへのフライト
日本からスイスへの直行便は、チューリッヒ行きのみだ。スイス インターナショナル エアラインズ(SWISS)が成田からチューリッヒへの直行便を週に数便運航している。飛行時間は約12時間半から13時間だ。
直行便は便利だが、選択肢が限られるため、価格が高くなりがちだ。経由便を利用すれば、より安いチケットが見つかることもある。主要な経由地としては、以下がある。
- フランクフルト経由(ルフトハンザ):日本からフランクフルトまで約12時間、フランクフルトからチューリッヒまで約1時間
- パリ経由(エールフランス):日本からパリまで約12時間半、パリからチューリッヒまで約1時間
- アムステルダム経由(KLM):日本からアムステルダムまで約12時間、アムステルダムからチューリッヒまで約1時間15分
- ヘルシンキ経由(フィンエアー):日本からヘルシンキまで約10時間、ヘルシンキからチューリッヒまで約2時間半
- ドーハ経由(カタール航空):日本からドーハまで約12時間、ドーハからチューリッヒまで約6時間
- ドバイ経由(エミレーツ航空):日本からドバイまで約11時間、ドバイからチューリッヒまで約6時間
ジュネーブ空港も国際線が発着するが、日本からの直行便はない。ヨーロッパの他都市を経由する場合は、ジュネーブ着も選択肢に入れると良い。特にフランス語圏を中心に旅行する場合は、ジュネーブの方が便利だ。
チケット予約は、出発の2から3ヶ月前がお勧めだ。早すぎると価格が高いことがあり、直前では安いチケットが売り切れていることが多い。スカイスキャナーやグーグルフライトなどの比較サイトを使って、複数の航空会社の価格を比較しよう。
空港から市内へ
チューリッヒ空港からチューリッヒ中央駅(Zurich HB)までは、直通電車で約10分だ。空港の地下に駅があり、到着ロビーから案内標識に従って歩けば迷わない。電車は10から15分間隔で運行しており、早朝から深夜まで利用できる。料金は片道6.80フラン程度(2等車)だ。
ジュネーブ空港からジュネーブ市内(Geneve Cornavin駅)までも電車で約6分と非常に近い。ジュネーブ空港では、到着時に「ジュネーブ・トランスポート・カード」が無料でもらえる。これは滞在中、ジュネーブ市内の公共交通機関が無料で利用できるカードなので、必ず受け取ろう。
バーゼル空港(EuroAirport)は、スイス、フランス、ドイツの3か国の国境地帯にあるユニークな空港だ。スイス側出口からバスでバーゼル中央駅(Basel SBB)まで約20分。フランス側出口からはフランスの都市へのアクセスも可能だ。
隣国からの入国
スイスはシェンゲン協定加盟国なので、他のシェンゲン圏の国からの入国時にはパスポートコントロールがない。ドイツ、フランス、イタリア、オーストリアから電車や車で国境を越える際も、特に手続きは必要ない。ただし、パスポートは常に携帯しておこう。
高速列車を利用すれば、隣国の主要都市からスイスへ快適にアクセスできる。
- パリからジュネーブ:TGV Lyria、約3時間10分
- パリからチューリッヒ:TGV Lyria、約4時間
- ミラノからチューリッヒ:EC(ユーロシティ)、約3時間半
- フランクフルトからチューリッヒ:ICE(ドイツ高速鉄道)、約4時間
- ミュンヘンからチューリッヒ:EC、約3時間半
- ウィーンからチューリッヒ:レイルジェット+EC、約8時間
ヨーロッパ周遊の一部としてスイスを訪れる場合、鉄道パスの利用も検討に値する。ユーレイルパスはスイス国内でも使えるが、スイスの山岳鉄道の多くは追加料金が必要だ。スイスのみを旅行するなら、スイストラベルパスの方がお得な場合が多い。
6. 国内交通
スイストラベルパス
スイス国内を広く旅行するなら、スイストラベルパス(Swiss Travel Pass)の購入を強くお勧めする。このパスがあれば、スイス国内のほぼすべての公共交通機関(鉄道、バス、船)が乗り放題になる。また、多くの山岳鉄道やロープウェイが25から50%割引になり、500以上の美術館や博物館が無料で入場できる。
スイストラベルパスには3日、4日、6日、8日、15日の種類がある。連続日数タイプの他に、1ヶ月以内の好きな日に使えるフレックスタイプもある。価格は時期によって変動するが、例えば8日間の連続パス(2等車)は約440フラン程度だ。
パスを使うかどうかの判断は、旅程によって変わる。一つの都市に滞在して日帰り旅行をする場合は、個別にチケットを買った方が安くなることもある。しかし、複数の都市を移動し、山岳鉄道にも乗る予定なら、パスの方がほぼ確実にお得だ。SBB(スイス連邦鉄道)のウェブサイトで個別のチケット料金を調べ、パスと比較してみると良い。
スイストラベルパスは日本でも購入できる。スイス政府観光局の日本語サイトや、主要な旅行会社で取り扱っている。現地で購入するより、日本で事前に購入した方が少し安いことが多い。
スイス連邦鉄道(SBB)
スイスの鉄道網は、効率性と正確性で世界的に知られている。スイス連邦鉄道(SBB/CFF/FFS - ドイツ語/フランス語/イタリア語)が主要路線を運行しており、ほぼすべての町や村に鉄道またはポストバス(郵便バス)でアクセスできる。
時刻表は、SBBのウェブサイトやアプリで検索できる。乗り換え案内も表示され、接続列車のプラットフォームまでわかる。アプリは日本語にも対応しており、使いやすい。オンラインで早割チケット(Supersaver)を購入すると、通常料金の半額以下になることもある。ただし、早割チケットは列車指定で、変更やキャンセルができないので注意が必要だ。
スイスの電車には1等車と2等車がある。1等車は座席が広く、混雑が少ないが、料金は2等車の1.5から2倍だ。2等車でも十分快適なので、コストを抑えたいなら2等車で問題ない。ただし、氷河急行やベルニナ急行などの観光列車は、1等車の方が眺めが良いことがある。
車内での飲食は自由で、駅のキオスクで買ったサンドイッチやコーヒーを持ち込む人も多い。長距離列車には食堂車やビストロカーがあり、食事や飲み物を購入できる。トイレもすべての列車に設置されている。
ポストバス
スイスの郵便局が運営するポストバス(PostBus/PostAuto)は、鉄道が通っていない山間の村々を結んでいる。黄色い車体が特徴で、アルプスの峠道を走るバスは、それ自体が観光体験だ。
スイストラベルパスがあれば、ほとんどのポストバスが乗り放題だ。時刻表はSBBのアプリで鉄道と一緒に検索でき、乗り換えもスムーズに設計されている。駅前にバス停があることがほとんどで、鉄道との接続が良い。
山岳地帯を走るポストバスでは、狭い峠道ですれ違う際にホルンを鳴らす伝統がある。この独特のメロディーは、スイスの旅の思い出になるだろう。
湖船
スイスの主要な湖では、遊覧船が定期運航されている。単なる観光ではなく、地元の人々の交通手段としても使われている。チューリッヒ湖、ルツェルン湖、ジュネーブ湖、トゥーン湖、ブリエンツ湖などで船が運航されており、スイストラベルパスで乗り放題だ。
私のお勧めは、ルツェルン湖の船だ。ルツェルンからピラトゥス山やリギ山へ向かう際に船を使えば、湖上からの景色を楽しみながら移動できる。特に、歴史的な外輪船(パドル蒸気船)に乗るのは、タイムスリップしたような気分になれる。
ロープウェイと登山鉄道
スイスには600以上のロープウェイ、ゴンドラ、登山鉄道がある。これらは観光客だけでなく、山の上に住む人々の日常の交通手段でもある。
スイストラベルパスを持っていれば、多くの山岳交通機関が25から50%割引になる。ユングフラウヨッホ、ティトリス、シルトホルンなどの主要な展望台は25%割引、リギ山やシュタンザーホルンなどは50%割引だ。ただし、無料になるわけではないので、山岳観光が多い旅程では、別途予算を見積もっておく必要がある。
特に人気の高い展望台(ユングフラウヨッホ、マッターホルン・グレッシャー・パラダイスなど)は、事前にオンラインで予約すると並ばずに乗れることがある。繁忙期には予約をお勧めする。
レンタカー
スイスを自分のペースで旅したいなら、レンタカーも選択肢だ。道路は整備されており、標識も明確なので、運転は比較的しやすい。ただし、いくつかの注意点がある。
まず、スイスの高速道路を走るには、年間ヴィニエット(40フラン)を購入する必要がある。レンタカーには通常付いているが、確認しておこう。また、ガソリン代は日本より高く、駐車場も都市部では高額だ。
山岳道路では、急カーブや急勾配が多い。冬はチェーンが必要な場所もある。また、ツェルマットやヴェンゲンなど、車が入れない村もある。これらの村へは、指定の駐車場に車を止めて、電車やバスで向かう必要がある。
公共交通機関が発達しているスイスでは、多くの場合、レンタカーは必要ない。しかし、人里離れた村々を巡りたい場合や、家族連れで荷物が多い場合は、車があると便利だ。
7. 文化コード
時間厳守
スイス人は時間に非常に正確だ。これは日本人にとっては馴染みやすい文化だろう。約束の時間に遅れるのは失礼とされ、5分前には到着しているのが理想だ。電車やバスも時刻表通りに運行されており、1分遅れでも珍しい。
レストランの予約やツアーの集合時間には、必ず時間通りに到着しよう。遅れると、席が他の客に回されたり、ツアーに置いていかれたりすることがある。
静けさを尊重する
スイス人は静かな環境を好む。電車内での携帯電話での通話は控えめにするのがマナーで、指定された「静かなゾーン」では通話やうるさい会話は禁止だ。住宅地では、日曜日と祝日は「安息日」として、芝刈りや洗車など騒音を出す活動は控えるべきとされている。
これは日本人にとっては違和感のない文化だろう。むしろ、他のヨーロッパ諸国より居心地が良いと感じるかもしれない。
挨拶の文化
スイスでは、店に入るときや電車で隣り合わせになったとき、エレベーターで一緒になったとき、挨拶を交わすのが一般的だ。ドイツ語圏では「Gruezi」(グリュッツィ)、フランス語圏では「Bonjour」(ボンジュール)、イタリア語圏では「Buongiorno」(ブオンジョルノ)と言う。去るときは、ドイツ語で「Auf Wiedersehen」(アウフ・ヴィーダーゼーエン)または「Ciao」(チャオ)、フランス語で「Au revoir」(オ・ルヴォワール)、イタリア語で「Arrivederci」(アリヴェデルチ)と言う。
店員や駅員に対しても、挨拶をしてから用件を言うのが礼儀だ。いきなり「チケットください」と言うのではなく、まず「Gruezi」と挨拶してから。これだけで、対応が格段に良くなることがある。
チップの習慣
スイスではチップは義務ではない。レストランやホテルの料金には、すでにサービス料が含まれている。しかし、良いサービスを受けたときに少額のチップを置くのは一般的だ。
レストランでは、請求額を切り上げる程度(例えば47フランの会計なら50フラン)か、請求額の5から10%程度が目安だ。タクシーでも同様に切り上げが一般的。ホテルのポーターには、荷物1つにつき1から2フラン程度。高級レストランやホテルでは、もう少し多めのチップを期待されることもある。
日曜日は休み
スイスでは、日曜日はほとんどの店が閉まる。これは法律で定められており、大型スーパーでさえ日曜日は営業しない。観光地の一部や、駅や空港内の店は例外だが、基本的に日曜日は買い物ができないと思っておいた方が良い。
旅行の計画を立てるとき、この点に注意しよう。土曜日のうちに必要な買い物を済ませておくか、日曜日は観光や自然を楽しむ日と割り切ろう。実際、日曜日の静かなスイスの街を歩くのも、それはそれで良い体験だ。
環境への意識
スイス人は環境問題に対する意識が高い。ゴミの分別は厳格で、指定の有料ゴミ袋を使わないと回収してもらえない。観光客として滞在する際も、ホテルや宿の分別ルールに従おう。
また、ハイキング中は「持ち帰りルール」が徹底されている。ゴミは必ず持ち帰り、植物を摘んだり、道を外れたりしないこと。スイスの美しい自然は、こうした一人一人の配慮によって守られている。
言語について
スイスには4つの公用語があるが、観光客としては英語で十分だ。主要な観光地では英語が広く通じ、駅員、ホテルスタッフ、レストランのウェイターなど、観光客と接する人々のほとんどが英語を話せる。
ただし、地域の言語で挨拶するだけで、地元の人々との距離が縮まることがある。ドイツ語圏、フランス語圏、イタリア語圏のどこにいるか意識して、簡単な挨拶だけでも覚えておくと良いだろう。
日本語は、残念ながらほとんど通じない。日本人観光客が多いユングフラウ地域などでは、一部の施設に日本語の案内があるが、基本的には英語(またはドイツ語など)でコミュニケーションを取ることになる。
8. 安全
全体的な治安
スイスは世界で最も安全な国の一つだ。暴力犯罪の発生率は非常に低く、夜遅くに一人で街を歩いても、ほとんど危険を感じることはない。日本と同様の感覚で旅行できるだろう。
ただし、観光地ではスリや置き引きに注意が必要だ。特に、人混みの中(駅、観光名所、混雑した電車内など)では、貴重品の管理に気をつけよう。パスポートや大金は、ホテルのセーフティボックスに預けるのが賢明だ。
観光客を狙った詐欺も、稀ではあるが報告されている。見知らぬ人からの「親切」には警戒し、署名を求められたり、何かを押し付けられたりしても、きっぱり断ろう。
山岳地帯での安全
スイスの山は美しいが、危険もある。天候が急変することがあり、夏でも高山では吹雪になることがある。ハイキングに出かける際は、天気予報を確認し、適切な装備を持参しよう。
必要な装備としては、防水ジャケット、日焼け止め、サングラス、十分な水、行動食、そして山岳地図またはGPSアプリがある。携帯電話は、谷間では電波が届かないことがあるので、オフラインで使える地図をダウンロードしておくと良い。
標高が高い場所では、高山病に注意が必要だ。ユングフラウヨッホ(3454m)やマッターホルン・グレッシャー・パラダイス(3883m)などでは、頭痛、吐き気、息切れなどの症状が出ることがある。ゆっくり動き、水分を十分に取り、症状がひどい場合は標高を下げよう。持病がある人は、事前に医師に相談することをお勧めする。
ハイキング中に事故にあった場合、スイス航空救助隊(Rega)に連絡できる。電話番号は1414だ。ただし、救助費用は高額(ヘリコプター救助は数千フランから数万フラン)なので、海外旅行保険への加入は必須だ。
道路の安全
スイスでレンタカーを運転する場合、いくつかの注意点がある。山岳道路では、急カーブや急勾配が多い。ヘッドライトは昼間でも点灯が義務付けられており、制限速度は厳守すること。スピード違反の罰金は高額で、外国人でも容赦ない。
冬は、雪道や凍結路面に注意が必要だ。スタッドレスタイヤやチェーンが必要な場合がある。峠道が閉鎖されることもあるので、事前に道路状況を確認しよう。
緊急連絡先
緊急時の連絡先は以下の通りだ。
- 警察:117
- 消防:118
- 救急:144
- 航空救助(Rega):1414
- 在スイス日本国大使館(ベルン):031 300 22 22
海外旅行保険のサポートダイヤルの番号も、出発前に控えておこう。クレジットカード付帯の保険を使う場合は、カード会社のサポートデスクの番号を確認しておくこと。
9. 健康
医療水準
スイスの医療水準は世界最高レベルだ。病院は設備が整っており、医師の教育水準も高い。英語を話す医師も多いので、コミュニケーションに困ることはあまりないだろう。
ただし、医療費は非常に高額だ。救急外来の受診だけで数百フラン、入院となれば1日数千フランかかることもある。海外旅行保険への加入は絶対に必要だ。保険なしで医療を受けると、とんでもない請求書が届くことになる。
薬と持病
日本から常用薬を持参する場合、英語で書かれた処方箋や医師の診断書を携帯しておくと安心だ。入国時に問題になることはほとんどないが、万が一に備えて。
スイスの薬局(Apotheke/Pharmacie)では、処方箋なしで買える薬も多い。頭痛薬、胃腸薬、風邪薬などの一般的な薬は、薬剤師に症状を伝えれば適切なものを勧めてもらえる。ただし、日本で馴染みのブランドはないので、成分名(パラセタモール、イブプロフェンなど)を知っておくと良い。
高山病
標高3000メートル以上の展望台を訪れる予定があるなら、高山病について知っておこう。症状としては、頭痛、吐き気、めまい、息切れ、食欲不振などがある。重症化すると、肺水腫や脳浮腫を引き起こすこともある。
予防策としては、急激に標高を上げないこと、水分を十分に取ること、アルコールを控えること、十分な睡眠を取ることなどがある。ユングフラウヨッホなどの高所では、無理をせず、ゆっくり動くことが大切だ。症状が出たら、すぐに標高を下げよう。
飲料水
スイスの水道水は飲料可能で、安全だ。ミネラルウォーターを買う必要はなく、蛇口から直接飲める。アルプスの湧き水は特に美味しく、街中の噴水でも飲める水が流れていることがある(飲料不可の場合は「Kein Trinkwasser」などの表示がある)。
ペットボトルの水を買う場合、炭酸入り(mit Gas/avec gaz)と炭酸なし(ohne Gas/sans gaz)があるので、好みを伝えよう。レストランで水を頼むと、ほとんどの場合、有料のミネラルウォーターが出てくる。無料の水道水が欲しい場合は、「Leitungswasser」(ドイツ語)または「Eau du robinet」(フランス語)と頼もう。
10. お金と予算
通貨
スイスの通貨はスイスフラン(CHF)だ。ユーロは使えないわけではないが、お釣りはスイスフランで返ってくることが多く、レートも不利なことがある。スイスフランを用意していくのが賢明だ。
2024年現在、1スイスフランは約160から170円程度だ(為替レートは常に変動するので、最新のレートを確認しよう)。紙幣は10、20、50、100、200、1000フランがあり、硬貨は5、10、20、50サンチーム(1フランの100分の1)と1、2、5フランがある。
両替
日本円からスイスフランへの両替は、日本国内の銀行や空港でもできるが、レートはあまり良くない。スイスに到着してから、空港や駅の両替所で両替する方がややレートが良いことが多い。
ただし、最も効率的なのはクレジットカードやデビットカードを使うことだ。スイスではカード払いが広く普及しており、小さな店でも使えることが多い。現金は、小さな村やマーケットでの買い物、チップ用に少し持っておく程度で十分だ。
JCBカードの利用
日本人旅行者にとって気になるのは、JCBカードの利用状況だろう。スイスでは、VISAとMastercardが最も広く使えるが、JCBはほとんどの場所で使えない。JCBを主に使っている人は、サブカードとしてVISAかMastercardを持っていくことを強くお勧めする。
ATMでのキャッシングは、JCBでも可能な機械がある。ただし、手数料がかかることが多いので、レートを確認してから利用しよう。
物価と予算
スイスは世界で最も物価が高い国の一つだ。日本の感覚で旅行すると、あまりの高さに驚くかもしれない。以下は、大まかな目安だ。
- レストランでの食事:ランチ25から40フラン、ディナー50から100フラン
- カフェでのコーヒー:5から7フラン
- ビール(バーやレストラン):7から10フラン
- スーパーでのサンドイッチ:6から10フラン
- ホテル(中級):150から300フラン/泊
- ホステル:50から80フラン/泊
- 山岳鉄道(例:ユングフラウヨッホ往復):約200フラン(割引前)
1日の予算としては、節約旅行で150から200フラン、中級の旅行で300から500フラン、贅沢な旅行で500フラン以上と考えておくと良いだろう。これには、宿泊費、食費、交通費、入場料が含まれる。
節約のコツ
スイス旅行の費用を抑えるコツをいくつか紹介しよう。
まず、食費の節約だ。レストランは高いので、スーパーで食材を買って自炊したり、テイクアウトで済ませたりすると大幅に節約できる。Coop(コープ)やMigros(ミグロ)は二大スーパーチェーンで、惣菜コーナーも充実している。駅にはブレッツェルや軽食を売る店も多い。
次に、交通費だ。スイストラベルパスを使えば、移動費用を予測しやすくなり、結果的に節約になることが多い。また、早割チケット(Supersaver)を使えば、通常料金の半額以下で電車に乗れることもある。
宿泊費については、ホテルよりホステルやAirbnbの方が安いことが多い。また、ユースホステル(スイス・ユースホステル協会に加盟)は設備も良く、個室があるところも多い。家族連れやグループなら、アパートメントタイプの宿を借りて自炊すると、かなり節約できる。
山岳観光では、午後になるとチケットが安くなる「Good Afternoon Ticket」がある展望台もある。また、天気が悪い日に無理に山に登らず、美術館やショッピングに切り替えるのも賢い選択だ。
11. モデルコース
7日間コース:スイスのハイライト
1週間でスイスの主要な見どころを効率よく回るコースだ。駆け足にはなるが、スイスの魅力を凝縮して体験できる。
1日目:チューリッヒ到着と市内観光
チューリッヒ空港に到着後、まずはホテルにチェックイン。時差ボケがあるかもしれないが、外に出て街を歩こう。リマト川沿いを散策し、グロスミュンスター大聖堂の塔に登って街を一望。旧市街の細い路地を歩いてから、バーンホフ通りでウィンドウショッピング。夕食は旧市街のレストランで、チューリッヒ風仔牛肉(Zurcher Geschnetzeltes)を試してみよう。
2日目:ルツェルンへ移動、市内観光
朝、チューリッヒからルツェルンへ電車で移動(約50分)。カペル橋を渡り、旧市街を散策。ライオン記念碑を見た後、ムーゼック城壁に登って街を見下ろす。午後は、船でピラトゥス山へ向かい、世界一急勾配の登山鉄道で山頂へ。絶景を堪能してから、ロープウェイで下山。夜はルツェルン湖畔のレストランでディナー。
3日目:インターラーケン/グリンデルワルトへ移動
朝、ルツェルンからインターラーケンへ電車で移動(約2時間)。ゴールデンパス線に乗れば、車窓からの景色も楽しめる。インターラーケンで昼食後、グリンデルワルトへ(約30分)。午後は、フィルスト(First)へゴンドラで上がり、展望台からの景色を楽しむ。時間があれば、バッハアルプゼーまでハイキング(往復約3時間)。夜はグリンデルワルト泊。
4日目:ユングフラウヨッホ
朝早くユングフラウヨッホへ向かう。グリンデルワルトからアイガー・エクスプレスでアイガーグレッチャーへ、そこからユングフラウ鉄道でユングフラウヨッホへ(全体で約1時間半)。「ヨーロッパの屋根」での絶景を満喫。氷の宮殿、スフィンクス展望台、アレッチ氷河を見学。午後、下山してクライネ・シャイデックでランチ。時間があればラウターブルンネンも訪問。夜はグリンデルワルトまたはインターラーケン泊。
5日目:ツェルマットへ移動
朝、インターラーケンからツェルマットへ電車で移動(約2時間半)。車窓からの景色も美しい。ツェルマット到着後、ホテルにチェックインして荷物を置き、村を散策。初めてマッターホルンが見えた瞬間の感動を味わおう。午後、ゴルナーグラートへ登山鉄道で登り、マッターホルンと周囲の4000メートル峰の絶景を楽しむ。夕暮れ時、アルペングリュー(夕焼けで山が赤く染まる現象)を見られたらラッキーだ。夜はツェルマット泊。
6日目:ツェルマット周辺を探索
午前中、マッターホルン・グレッシャー・パラダイスへ。ヨーロッパ最高地点のロープウェイ駅から、マッターホルンを間近に眺める。氷河宮殿や吊り橋も体験。午後は、5湖巡りハイキング(約2時間半)でマッターホルンが映る湖々を訪れるか、村でのんびりショッピングやカフェタイム。夜は、フォンデュかラクレットなど、スイスの名物料理を楽しもう。ツェルマット泊。
7日目:ジュネーブ経由で帰国
朝、ツェルマットからジュネーブへ電車で移動(約3時間半)。ジュネーブで数時間観光できれば、レマン湖畔の大噴水、旧市街、サン・ピエール大聖堂を訪問。時間が許せば、国連欧州本部の外観も見学。チューリッヒ空港から帰国するなら、ジュネーブからチューリッヒへ電車で移動(約2時間45分)。空港で免税ショッピングをして、帰国の途へ。
10日間コース:スイス周遊
10日間あれば、スイスの多様な地域をより深く体験できる。7日間コースをベースに、フランス語圏やティチーノを加えたコースだ。
1日目:チューリッヒ到着と市内観光
7日間コースと同様。チューリッヒ市内を散策し、旧市街やリマト川沿いを楽しむ。
2日目:チューリッヒ周辺を探索
午前中、ライン滝(Rheinfall)へ日帰り旅行。ヨーロッパ最大の滝を間近で体験し、ボートで滝壺近くまで行くこともできる。午後、シャフハウゼンの旧市街を散策してからチューリッヒに戻る。夕方、チューリッヒ湖で遊覧船に乗るか、湖畔でのんびり。
3日目:ルツェルンへ移動、リギ山
朝、チューリッヒからルツェルンへ移動。荷物をホテルに預けて、船でリギ山へ向かう。「山の女王」リギ山からの360度のパノラマを楽しみ、山頂でハイキング。登山鉄道で下山してルツェルン市内観光。カペル橋、ライオン記念碑、旧市街を巡る。
4日目:グリンデルワルトへ移動
7日間コースの3日目と同様。インターラーケン経由でグリンデルワルトへ。フィルストでハイキングを楽しむ。
5日目:ユングフラウヨッホとラウターブルンネン
午前中ユングフラウヨッホへ。午後、ラウターブルンネンを訪問し、シュタウバッハの滝を見学。時間があればミューレンまで足を延ばす。
6日目:ベルンへ移動、市内観光
朝、インターラーケンからベルンへ移動(約50分)。世界遺産の旧市街を一日かけてゆっくり散策。時計塔、熊公園、アーケードのショッピング、バラ園からの眺望を楽しむ。アインシュタインハウスも訪問。夜はベルン泊。
7日目:ツェルマットへ移動
朝、ベルンからツェルマットへ移動(約2時間半)。午後、ゴルナーグラートへ登り、マッターホルンの絶景を堪能。夕暮れのアルペングリューを見る。
8日目:ツェルマット周辺探索
マッターホルン・グレッシャー・パラダイスと5湖巡りハイキング。詳細は7日間コースの6日目と同様。
9日目:モントルーへ移動、レマン湖畔
朝、ツェルマットからモントルーへ移動(約2時間半)。到着後、シヨン城を見学。午後、レマン湖畔のプロムナードを散策し、フレディ・マーキュリーの銅像を訪問。可能であれば、ラヴォーのブドウ畑をハイキングかワインテイスティング。夜はモントルー泊。
10日目:ジュネーブ経由で帰国
朝、モントルーからジュネーブへ移動(約1時間)。ジュネーブ市内を観光後、ジュネーブ空港から帰国。または、チューリッヒ空港へ移動して帰国。
14日間コース:スイス完全制覇
2週間あれば、スイスの主要地域をほぼすべて訪れることができる。氷河急行などの絶景列車にも乗車し、ゆったりとしたペースで旅を楽しめる。
1日目:チューリッヒ到着
チューリッヒ空港到着後、市内へ移動。時差ボケ解消のため、軽い散策をして早めに就寝。
2日目:チューリッヒ市内観光
一日かけてチューリッヒを探索。旧市街、リマト川、グロスミュンスター大聖堂、チューリッヒ美術館(Kunsthaus)、スイス国立博物館など。夕方、チューリッヒ湖畔でリラックス。
3日目:ライン滝とシャフハウゼン
ヨーロッパ最大の滝、ライン滝を見学。シャフハウゼンの旧市街も散策。午後、チューリッヒに戻るか、そのままルツェルンへ移動。
4日目:ルツェルン市内観光とピラトゥス
午前中ルツェルン市内観光。午後、ピラトゥス山へ「ゴールデン・ラウンドトリップ」で往復。船、登山鉄道、ロープウェイを組み合わせた周遊ルート。
5日目:リギ山とエンゲルベルク
午前中、リギ山へ船と登山鉄道で。山頂でハイキング後、午後はエンゲルベルクへ移動してティトリス山を訪問。
6日目:グリンデルワルトへ移動
ルツェルンからインターラーケン経由でグリンデルワルトへ。午後、フィルストでハイキング。
7日目:ユングフラウヨッホ
一日かけてユングフラウヨッホを堪能。「ヨーロッパの屋根」での体験を最大限に楽しむ。
8日目:ラウターブルンネン、ミューレン、シルトホルン
ラウターブルンネンの谷を訪問。ミューレンへ上がり、シルトホルンからの絶景を楽しむ。007の映画のロケ地、回転レストラン「ピッツ・グロリア」で食事も良い。
9日目:氷河急行でツェルマットへ
インターラーケンからブリークへ移動し、氷河急行に乗車。ツェルマットまでの絶景列車の旅を楽しむ(約3時間半)。車窓からの景色を堪能しながら、食堂車で食事。夕方ツェルマット着。
10日目:ツェルマット周辺探索
ゴルナーグラート、マッターホルン・グレッシャー・パラダイス、5湖巡りハイキングなど、ツェルマットの魅力を満喫。
11日目:モントルーへ移動
ツェルマットからモントルーへ移動。シヨン城見学、レマン湖畔散策。
12日目:ローザンヌとラヴォー
モントルーからローザンヌへ日帰り旅行。オリンピック博物館、ローザンヌ大聖堂を訪問。午後、ラヴォーのブドウ畑をハイキングし、ワインテイスティング。
13日目:ジュネーブ市内観光
モントルーからジュネーブへ移動。大噴水、旧市街、サン・ピエール大聖堂、パテック・フィリップ美術館など、一日かけてジュネーブを探索。
14日目:帰国
ジュネーブ空港またはチューリッヒ空港から帰国。最後のショッピングや観光を楽しんでから、空港へ。
21日間コース:スイス深掘りの旅
3週間あれば、観光客があまり行かない場所も含めて、スイスを深く体験できる。ティチーノ(イタリア語圏)やグラウビュンデン、バーゼルなども訪問し、スイスの多様性を存分に味わえる。
1から3日目:チューリッヒとその周辺
チューリッヒ市内観光に2日、ライン滝とシャフハウゼンに1日。ゆったりとしたペースで。
4から5日目:バーゼル
チューリッヒからバーゼルへ移動(約1時間)。2日かけてバーゼルの美術館巡り。バイエラー財団、ティンゲリー美術館、バーゼル美術館など。旧市街、ライン川での遊泳(夏の場合)も楽しむ。
6から8日目:ルツェルンと中央スイス
バーゼルからルツェルンへ移動。3日かけてルツェルン市内観光、ピラトゥス、リギ、ティトリスを訪問。
9から12日目:ベルナーオーバーラント
4日間かけてユングフラウ地域を満喫。ユングフラウヨッホ、シルトホルン、各種ハイキングをゆっくり楽しむ。1日はベルンの日帰り旅行に充てる。
13から14日目:氷河急行とツェルマット
インターラーケンからブリーク経由で氷河急行に乗車。ツェルマットで2泊し、マッターホルン周辺を探索。
15から16日目:サンモリッツとグラウビュンデン
ツェルマットからサンモリッツへ氷河急行で移動(約5時間)。サンモリッツで1泊し、高級リゾートの雰囲気を味わう。周辺でハイキングやディアヴォレッツァ展望台を訪問。
17日目:ベルニナ急行でティチーノへ
サンモリッツからベルニナ急行でルガノへ。ユネスコ世界遺産のベルニナ線を走る絶景列車の旅。アルプスの氷河からイタリア的な渓谷まで、劇的な景色の変化を楽しむ。
18から19日目:ティチーノ
ルガノで2日間。ルガノ湖遊覧、モルコーテやガンドリア訪問、サン・サルヴァトーレ山からの眺望、グロットでの食事など、イタリア的なスイスを満喫。
20日目:モントルーへ移動
ルガノからモントルーへ移動(約4時間)。シヨン城を見学し、レマン湖畔を散策。
21日目:ジュネーブ経由で帰国
モントルーからジュネーブへ。時間があればジュネーブ市内を散策後、空港へ。
12. 通信
SIMカードとeSIM
スイスでスマートフォンを使うには、いくつかの選択肢がある。最も便利なのは、現地SIMカードの購入またはeSIMの利用だ。
スイスの主要な通信会社は、Swisscom、Sunrise、Saltの3社だ。空港や駅、大手スーパー(Coop、Migros)でプリペイドSIMカードを購入できる。データ通信のみのプランなら、数日から1ヶ月程度のものがあり、価格は10から50フラン程度だ。購入時にパスポートの提示が必要なことがある。
eSIM対応のスマートフォンを持っているなら、出発前に日本でeSIMを購入しておくと便利だ。Airalo、Holafly、Ubigiなどのサービスが、スイスまたはヨーロッパ向けのデータプランを提供している。到着後すぐにデータ通信が使えるので、空港でSIMカードを探す手間が省ける。
WiFi環境
スイスのWiFi環境は良好だ。ほとんどのホテル、多くのレストランやカフェで無料WiFiが利用できる。鉄道(SBB)の車内でも無料WiFiが使えるが、山岳地帯では電波が不安定になることがある。
主要駅や空港でも無料WiFiが利用可能だ。ただし、セキュリティの観点から、公共のWiFiでは銀行取引や機密情報の送受信は避けた方が良い。
電源とプラグ
スイスの電圧は230V、周波数は50Hzだ。日本の電化製品(100V対応)をそのまま使うと故障する可能性がある。最近のスマートフォンやノートパソコンの充電器は100から240V対応のものが多いので、その場合は変圧器は不要だが、確認しておこう。
プラグの形状は、スイス独自の3ピン(SEV 1011)だ。ヨーロッパの一般的な2ピン(Cタイプ)も使えることが多いが、3ピンのスイス用アダプターを持っていく方が確実だ。日本の家電量販店や100円ショップでも購入できる。
電話のかけ方
スイスの国番号は+41だ。日本からスイスに電話する場合は、010(または+)-41-市外局番(最初の0を除く)-電話番号となる。
スイスから日本に電話する場合は、00(または+)-81-市外局番(最初の0を除く)-電話番号となる。
緊急電話番号(117警察、118消防、144救急)は、どの電話からでも無料でかけられる。
13. 食事
スイス料理の特徴
スイス料理は、隣接するドイツ、フランス、イタリアの影響を受けつつ、独自の発展を遂げてきた。基本的に素朴で hearty な料理が多く、寒い山岳地帯で暮らす人々を温める食事だ。乳製品(チーズ、バター、クリーム)、ジャガイモ、肉類が多用される。
地域によって食文化が異なるのもスイスの特徴だ。ドイツ語圏ではソーセージやロスティ、フランス語圏ではフォンデュやラクレット、イタリア語圏ではリゾットやポレンタといった具合だ。旅行中に地域を移動すると、食事の変化も楽しめる。
代表的なスイス料理
チーズフォンデュ(Cheese Fondue)
溶かしたチーズにパンを浸して食べる、スイスを代表する料理だ。グリュイエールチーズとエメンタールチーズをブレンドし、白ワインとキルシュ(さくらんぼの蒸留酒)で風味をつける。専用の鍋(カクロン)に入れ、テーブルで熱しながら食べる。パンを落としたらワインを一杯おごるという遊び心あるルールもある。
私のお気に入りのフォンデュ体験は、グリンデルワルトの小さなレストランでのことだ。外は雪が降り、窓からアイガーの岩壁が見える。暖かい部屋で、香り高いチーズをたっぷりつけたパンを頬張る。これぞスイスの冬の醍醐味だと感じた。
フォンデュは1から2人前で注文できることが多いが、伝統的には2人以上で分けて食べる。一人旅の場合は、「ハーフポーション」があるか聞いてみよう。価格は一人25から40フラン程度だ。
ラクレット(Raclette)
ラクレットは、チーズの断面を熱で溶かし、ジャガイモや玉ねぎ、ピクルスにかけて食べる料理だ。専用のグリルで一人一人がチーズを溶かす「ラクレット・オーブン」スタイルも人気だ。フォンデュよりもさっぱりしていて、チーズ好きにはたまらない。
ラクレットはヴァレー州が発祥で、地元では今でも家庭料理として親しまれている。レストランでは一人30から50フラン程度で、好きなだけ食べられる「食べ放題」形式のところもある。
ロスティ(Rosti)
ジャガイモを千切りにしてバターで焼いたパンケーキのような料理で、ドイツ語圏の伝統料理だ。もともとは農民の朝食として食べられていた。今では付け合わせとして、あるいは卵やベーコン、チーズをトッピングしてメインディッシュとして食べられる。
ベルナー・ロスティ(Berner Rosti)は、卵とベーコンを乗せたベルン風のバリエーションで、ボリューム満点だ。価格は15から25フラン程度。
チューリッヒ風仔牛肉(Zurcher Geschnetzeltes)
細切りの仔牛肉をマッシュルームと白ワイン入りのクリームソースで煮込んだ、チューリッヒの郷土料理だ。通常、ロスティが添えられる。クリーミーで優しい味わいは、日本人の口に合うだろう。価格は35から50フラン程度。
ソーセージ各種
スイスには様々なソーセージがある。最も有名なのは、サンガレン産のブラートヴルスト(Bratwurst)だ。白っぽい色が特徴で、そのまま焼いて、マスタードなしで食べるのが正統とされる。他にも、セルヴェラ(Cervelat、国民的ソーセージと呼ばれる)、シュブリング(Schublig)など、地域ごとに特色あるソーセージがある。
ソーセージは、キオスクや駅の売店でも買える手軽な食べ物だ。パンに挟んで5から10フランで食べられる。
アルペンマカロニ(Alpermagronen)
マカロニ、ジャガイモ、チーズを混ぜ合わせ、揚げ玉ねぎとリンゴソースを添えた山小屋の定番料理だ。見た目は素朴だが、ボリューム満点で、ハイキング後の空腹には最高だ。山のレストランで15から20フラン程度で食べられる。
フランス語圏の料理
ロマンディ(フランス語圏)では、フランス料理の影響を受けた洗練された料理が楽しめる。レマン湖周辺では魚料理(ペルシュ、フェラなど)が名物で、白ワインソースでソテーしたフィレが定番だ。
フィレ・ド・ペルシュ(Filet de perche)は、パーチ(淡水魚)のフィレをバターでソテーしたシンプルながら上品な料理だ。レマン湖畔のレストランで、湖を眺めながら食べるのは格別だ。価格は30から50フラン程度。
イタリア語圏の料理
ティチーノでは、イタリア料理の影響が強い。リゾット、ポレンタ、パスタが定番で、特に「グロット」と呼ばれる伝統的な居酒屋での食事は体験の価値がある。
グロットでは、石のテーブルで、地元のメルロー種の赤ワインと共に、ポレンタ、サラミ、チーズなどを楽しむ。洗練されたレストランとは違う、素朴で温かい雰囲気がある。価格は20から40フラン程度。
スイーツ
スイスはチョコレートの国だ。街中のショコラティエで、芸術品のようなチョコレートを買うことができる。リンツ、トブラローネ、カイエ、シュプリュングリなど、有名ブランドも多い。
ビュンドナー・ヌストルテ(Bundner Nusstorte)は、グラウビュンデン地方のナッツタルト。キャラメルとくるみをパイ生地で包んだ、甘くて濃厚なお菓子だ。コーヒーと一緒に食べると最高だ。
メレンゲ(Meringue)は、軽くてサクサクのメレンゲに生クリームをたっぷり添えたデザートで、グリュイエール地方の名物だ。一見シンプルだが、軽さと甘さのバランスが絶妙だ。
飲み物
スイスはワインの産地でもある。国内消費が中心なので国外ではあまり知られていないが、質の高いワインが生産されている。白ワインではシャスラ(Chasselas)、赤ワインではピノ・ノワールやメルローが主要品種だ。ワイン産地を訪れたら、ぜひ地元のワインを試してみよう。
ビールも人気で、各地に地ビール醸造所がある。有名ブランドとしては、フェルトシュルスヘン(Feldschlosschen)、カーディナル(Cardinal)、アッペンツェラー(Appenzeller)などがある。
ノンアルコールでは、リヴェラ(Rivella)が国民的飲料だ。乳清から作られるちょっと変わった炭酸飲料で、甘すぎず、独特の風味がある。スーパーやレストランでどこでも買える。
食事のマナーと習慣
レストランでの食事は、日本よりも時間がかかることが多い。コース料理を頼まなくても、料理が出てくるまで20から30分、食後にゆっくりコーヒーを飲む文化があるので、全体で1時間半から2時間は見ておこう。急かすのは失礼とされるので、のんびり構えよう。
会計は、テーブルで行うのが一般的だ。食事が終わったら、ウェイターに「Zahlen, bitte」(ツァーレン、ビッテ、お会計をお願いします)と言うか、目を合わせて手を挙げる。請求書が来たら、現金またはカードで支払う。チップは義務ではないが、良いサービスを受けたら切り上げて支払うのが一般的だ。
水については、レストランで頼むと有料のミネラルウォーターが出てくることが多い。無料の水道水が欲しい場合は、「Leitungswasser」(ドイツ語)または「Eau du robinet」(フランス語)と頼もう。ただし、一部の高級レストランでは、水道水を頼むのはあまり歓迎されないこともある。
14. ショッピング
スイスのお土産
スイスのお土産として人気があるのは、やはりチョコレート、時計、そしてチーズだ。その他にも、アーミーナイフ、木彫りの人形、オルゴールなど、スイスらしいアイテムがたくさんある。
チョコレート
スイスチョコレートは世界的に有名だ。リンツ(Lindt)、トブラローネ(Toblerone)、カイエ(Cailler)、フライ(Frey)などのブランドは、スーパーでも手軽に買える。高級チョコレートを求めるなら、チューリッヒのシュプリュングリ(Sprungli)やバーゼルのシューラー(Schiesser)などの老舗ショコラティエを訪れよう。
空港の免税店でもチョコレートは豊富に揃っている。帰国前にまとめ買いするのも良いだろう。ただし、夏場はチョコレートが溶けやすいので、保冷バッグを持っていくか、空港で買うのが安全だ。
時計
スイスは高級時計の産地として知られる。ロレックス、オメガ、タグ・ホイヤー、ロンジンなど、多くの有名ブランドがスイス製だ。チューリッヒのバーンホフ通り、ジュネーブの旧市街などに高級時計店が並んでいる。
高級時計は日本でも買えるが、スイスで買うと数%安いことがある。また、免税手続き(タックスフリー)をすれば、さらにお得になる。ただし、円安の時期は必ずしもお得とは限らないので、事前に価格をリサーチしておこう。
手頃な価格のスイス製時計としては、スウォッチ(Swatch)やモンダイン(Mondaine、スイス鉄道の時計で有名)がある。これらは数万円から買えるので、記念品としてお勧めだ。
チーズ
スイスのチーズを日本に持ち帰りたいなら、真空パックになっているものを選ぼう。グリュイエール、エメンタール、アッペンツェラーなどが人気だ。空港の免税店でも買えるが、現地のチーズ専門店やスーパーの方が種類が豊富で安い。
日本への持ち込みは、動物検疫の対象外(加熱処理済みの乳製品は問題ない)だが、大量に持ち込む場合は税関で申告が必要になることがある。
アーミーナイフ
ビクトリノックス(Victorinox)のスイスアーミーナイフは、実用的なお土産として人気だ。多機能ツールとしてだけでなく、デザイン性も高い。チューリッヒ駅などに直営店があり、名前を刻印するサービスもある。
ただし、飛行機の機内持ち込みはできないので、必ず預け入れ荷物に入れること。
その他
木彫りの人形やカウベルは、伝統的なスイス土産だ。特にブリエンツ(Brienz)は木彫りの村として知られ、工房を見学することもできる。オルゴールも、リュージュ(Reuge)など有名ブランドがスイス製だ。
スーパーで買えるお土産としては、リコラ(Ricola)ののど飴、スイスのスパイスやハーブ、ドライフルーツなどが手軽で喜ばれる。
免税手続き(タックスフリー)
スイスでは、外国人旅行者が同一店舗で300フラン以上買い物をした場合、付加価値税(7.7%)の還付を受けられる。購入時に「タックスフリーフォーム」をもらい、出国時に税関でスタンプを押してもらう。その後、空港の還付カウンターで現金またはクレジットカードへの返金を受ける。
ただし、手続きには時間がかかることがあるので、空港には余裕を持って到着しよう。また、還付手数料がかかるため、実際に戻ってくる金額は表示された還付額より少なくなる。
営業時間
スイスの店舗の営業時間は、日本と比べると短い。一般的に、平日は9:00から18:30、土曜日は9:00から16:00または17:00、日曜日はほとんどの店が閉まる。大型スーパーは木曜日か金曜日に夜21:00まで営業していることがある。
駅構内や空港の店舗は例外で、日曜日でも営業していることが多い。また、観光地の土産物店も日曜営業しているところがある。
15. 便利なアプリ
交通系アプリ
SBB Mobile
スイス連邦鉄道(SBB)の公式アプリ。時刻表検索、チケット購入、リアルタイムの運行情報が確認できる。日本語にも対応しており、使いやすい。スイス旅行には必須のアプリだ。
Google Maps
ルート検索や周辺施設の検索に便利。スイスの公共交通機関の時刻表も統合されている。オフラインマップをダウンロードしておけば、電波のない山岳地帯でも使える。
天気予報アプリ
MeteoSwiss
スイス気象局の公式アプリ。スイス国内の詳細な天気予報が確認できる。山岳地帯の天気予報は特に重要で、ハイキングや山岳観光の計画に役立つ。
その他の便利なアプリ
currency
為替レート換算アプリ。スイスフランと日本円の換算に便利。オフラインでも使えるものを選ぼう。
Google翻訳
ドイツ語、フランス語、イタリア語の翻訳に役立つ。カメラ機能を使えば、メニューや標識をリアルタイムで翻訳できる。
Swiss Map
スイス連邦地形局(Swisstopo)の公式アプリ。ハイキングマップとして最も信頼性が高い。有料だが、本格的なハイキングをするなら価値がある。
16. まとめ
スイス旅行の魅力を振り返る
ここまで、スイス旅行について詳しく紹介してきた。最後に、スイスの魅力と旅行のポイントを振り返っておこう。
スイスは、アルプスの絶景、正確な公共交通機関、高い治安、多様な文化が共存する、旅行者にとって理想的な国だ。日本人にとっては、時間の正確さや清潔さなど、馴染みやすい文化も多い。物価の高さはネックだが、それに見合う価値のある体験ができる。
旅行前の準備チェックリスト
- パスポートの残存期間を確認(シェンゲン圏出国予定日から3ヶ月以上)
- 海外旅行保険への加入(医療費が高額なため必須)
- クレジットカードの準備(VISA/Mastercardがお勧め、JCBは使えないことが多い)
- スイストラベルパスの購入検討
- SIMカード/eSIMの手配
- 電源プラグ変換アダプターの準備
- 季節に合った服装の準備(山岳地帯用の防寒具も)
- 主要アプリのダウンロード(SBB Mobile、MeteoSwissなど)
- 宿泊施設と山岳鉄道の予約(繁忙期は早めに)
日本人旅行者へのアドバイス
スイスを旅行する日本人として、いくつかのアドバイスをお伝えしたい。
まず、物価の高さに心の準備をしておこう。最初は驚くかもしれないが、スイスの給与水準は日本の2から3倍であり、現地では妥当な価格なのだ。節約しすぎてせっかくの旅行を楽しめないよりは、ある程度の予算を確保して、存分に楽しむ方が後悔がない。
次に、天候に柔軟に対応しよう。山の天気は変わりやすく、計画通りにいかないことも多い。晴れの日を待って山岳観光をし、雨の日は都市観光や美術館に切り替えるなど、臨機応変に。
そして、ゆとりを持ったスケジュールを組もう。スイスは効率よく移動できるが、だからといって詰め込みすぎると疲れてしまう。絶景の前でぼんやりする時間、カフェでのんびりする時間も、旅の大切な一部だ。
最後に、地元の人々との交流を楽しもう。挨拶を交わすだけでも、旅の印象は変わる。スイス人は一見冷たく感じるかもしれないが、話しかければ親切に対応してくれることが多い。
また訪れたくなる国
私はこれまで20回以上スイスを訪れてきたが、まだまだ行きたい場所、やりたいことがある。季節を変えて同じ場所を訪れると、全く違う表情を見せてくれるのがスイスの魅力だ。夏のハイキング、冬のスキー、秋のワイン収穫、春の花々。どの季節にも、スイスでしか味わえない体験がある。
このガイドを読んで、スイスへの旅行を計画している方の参考になれば幸いだ。アルプスの絶景、美味しい食事、正確な鉄道、親切な人々。スイスには、一生の思い出になる体験が待っている。
良い旅を!
追加情報:日本語ガイドツアー
スイスの主要観光地では、日本語ガイドツアーが利用できることがある。特に、ユングフラウ地域やツェルマットなど、日本人観光客が多い場所では、日本語ツアーが定期的に催行されている。
日本語ガイド付きのツアーを利用するメリットは多い。言語の壁なく、スイスの歴史や文化について深く学べる。また、写真撮影のベストスポットや、穴場の見どころを教えてもらえることもある。特に、初めてスイスを訪れる人や、シニアの方には安心だ。
日本語ガイドツアーは、日本の旅行会社が主催するものと、現地の旅行会社が主催するものがある。日本で事前に申し込むものと、現地で参加できるものがある。人気のツアーは早めに予約が埋まることがあるので、旅行の計画が決まったら早めにチェックしよう。
具体的には、ユングフラウ地域への日帰りツアー、ツェルマットとマッターホルン観光、氷河急行の旅、チョコレート工場とチーズ工場見学ツアーなどが人気だ。料金は内容によって異なるが、一日ツアーで200から500フラン程度が目安だ。
追加情報:日本からスイスへのアクセス詳細
日本からスイスへの移動手段について、もう少し詳しく説明しておこう。
直行便
スイス インターナショナル エアラインズ(SWISS)が、成田空港からチューリッヒ空港への直行便を運航している。飛行時間は約12時間半から13時間。週に数便の運航で、時期によって便数が変わる。直行便は乗り換えの手間がなく、体力的にも楽だ。
SWISSはルフトハンザグループの一員で、スターアライアンスに加盟している。ANAのマイレージを貯めたい場合にも好都合だ。機内サービスは評価が高く、スイスワインやチョコレートが提供される。
経由便の選択肢
直行便以外にも、多くの選択肢がある。以下は主要な経由地とおおよその所要時間だ。
フランクフルト経由(ルフトハンザ):日本からフランクフルトまで約12時間、乗り継ぎ1から2時間、フランクフルトからチューリッヒまで約1時間。合計14から15時間。フランクフルトは巨大な空港だが、乗り継ぎは比較的スムーズ。
パリ経由(エールフランス):日本からパリまで約12時間半、乗り継ぎ1から2時間、パリからチューリッヒまで約1時間15分。合計15から16時間。パリのシャルル・ド・ゴール空港はターミナル間の移動に時間がかかることがあるので、乗り継ぎ時間に余裕を持とう。
アムステルダム経由(KLM):日本からアムステルダムまで約12時間、乗り継ぎ1から2時間、アムステルダムからチューリッヒまで約1時間15分。合計14から15時間。アムステルダムのスキポール空港は乗り継ぎしやすい設計で評判が良い。
ヘルシンキ経由(フィンエアー):日本からヘルシンキまで約10時間(最短のヨーロッパ経由地)、乗り継ぎ1から2時間、ヘルシンキからチューリッヒまで約2時間半。合計13から14時間。フィンエアーは日本発の便数が多く、乗り継ぎも便利。
ドーハ経由(カタール航空)またはドバイ経由(エミレーツ航空):日本からドーハ/ドバイまで約11から12時間、乗り継ぎ2から4時間、ドーハ/ドバイからチューリッヒまで約6時間。合計19から22時間。所要時間は長いが、サービスの質が高く、料金が安いことがある。
航空券の予約
航空券は、出発の2から3ヶ月前に予約するのがお勧めだ。スカイスキャナー、グーグルフライト、カヤックなどの比較サイトで、複数の航空会社の料金を比較しよう。また、航空会社の公式サイトで直接予約すると、特典や保証が充実していることがある。
繁忙期(ゴールデンウィーク、お盆、年末年始)は料金が高騰し、予約も取りにくくなる。この時期に旅行する場合は、さらに早めの予約が必要だ。
マイレージを貯めている場合は、提携航空会社を選ぶと効率的だ。ANAならスターアライアンス(ルフトハンザ、SWISS、ユナイテッドなど)、JALならワンワールド(ブリティッシュ・エアウェイズ、カタール航空など)の便を選ぼう。
追加情報:スイスの祝日と特別イベント
スイス旅行の計画を立てる際には、祝日や特別イベントも考慮しておこう。
スイスの祝日
スイスの祝日は、連邦レベルで定められているものと、各カントン(州)で異なるものがある。全国共通の祝日は以下の通り。
- 1月1日:元日
- 復活祭の前の金曜日:聖金曜日(年によって日付が変わる、3月か4月)
- 復活祭の翌月曜日:イースターマンデー(年によって日付が変わる)
- 5月1日:メーデー(一部のカントンのみ)
- キリスト昇天祭:復活祭から40日目の木曜日
- 聖霊降臨祭の翌月曜日:ウィットマンデー
- 8月1日:スイス建国記念日
- 12月25日:クリスマス
- 12月26日:聖ステファノの日(一部のカントンのみ)
祝日には、店舗や施設が休業することがあるので注意が必要だ。特に、復活祭前後の週末やクリスマス期間は、多くの店が閉まる。
特別イベント
スイスでは年間を通じて様々なイベントが開催される。旅行の時期に合わせて、イベントを楽しむのも良いだろう。
ファスナハト(カーニバル、2月から3月):バーゼル、ルツェルンなどで開催される伝統的なカーニバル。仮装した人々がパレードし、街全体がお祭りムードになる。特にバーゼルのファスナハトは、ユネスコ無形文化遺産に登録されている。
ジュネーブ・フェスティバル(8月):ジュネーブで開催される夏祭り。音楽、花火、屋台などで街が賑わう。
モントルー・ジャズ・フェスティバル(7月):世界的に有名なジャズフェスティバル。国際的なアーティストが出演し、レマン湖畔が音楽に包まれる。
アルペン祭り(夏):各地で開催される伝統的なお祭り。アルプホルンの演奏、旗投げ、ヨーデルなど、スイスの民族文化を体験できる。
ワイン収穫祭(9月から10月):ラヴォー、ヴァレーなどのワイン産地で開催される収穫祭。ワインの試飲や、地元料理を楽しめる。
クリスマスマーケット(11月末から12月):チューリッヒ、バーゼル、ベルンなど、各都市でクリスマスマーケットが開催される。イルミネーションに彩られた街で、ホットワインやクリスマスの装飾品を楽しめる。
追加情報:スイスの気候と服装
スイスの気候は、地域と標高によって大きく異なる。旅行前に、訪問地域と時期に合わせた服装を準備しよう。
夏(6月から8月)
低地(チューリッヒ、ジュネーブなど):平均気温18から25度。日中は暑くなることもあるが、湿度が低いので過ごしやすい。薄手の長袖、半袖、サングラス、帽子、日焼け止め。
山岳地帯(ユングフラウ、ツェルマットなど):標高2000メートル以上では、真夏でも気温が10から15度程度。3000メートル以上では氷点下になることも。防寒用のジャケット、重ね着できる服、帽子、手袋、歩きやすい靴(ハイキングシューズ)。
春と秋(4月から5月、9月から10月)
低地:平均気温10から18度。天候が変わりやすいので、重ね着できる服が便利。薄手のジャケット、セーター、折りたたみ傘。
山岳地帯:残雪があることも。防寒具は必須。
冬(12月から3月)
低地:平均気温0から5度。雪が降ることもある。暖かいコート、マフラー、手袋、帽子、防水の靴。
山岳地帯:スキーシーズン。気温は氷点下10度以下になることも。スキーウェアや防寒具、ゴーグル、日焼け止め(雪の反射で日焼けする)。
共通の持ち物
いつの季節でも、以下のものがあると便利だ。
- サングラス:紫外線が強い、特に山岳地帯と雪の上。
- 日焼け止め:標高が高いと紫外線が強い。
- 重ね着できる服:一日の中で気温が大きく変わることがある。
- 歩きやすい靴:石畳の旧市街や、ハイキングコースを歩くため。
- 折りたたみ傘または防水ジャケット:山の天気は変わりやすい。
追加情報:スイスの宿泊施設
スイスには様々なタイプの宿泊施設がある。予算や旅のスタイルに合わせて選ぼう。
ホテル
スイスのホテルは、全般的に質が高い。星の数でランク付けされており、3つ星以上であれば清潔で快適な滞在が期待できる。5つ星の高級ホテルでは、アルプスの絶景を眺めながらのスパや、ミシュラン星付きレストランでの食事が楽しめる。
価格は、3つ星ホテルで1泊150から250フラン、4つ星で200から400フラン、5つ星で400フラン以上が目安だ。観光シーズン(夏と冬のスキーシーズン)は料金が高くなり、予約も取りにくくなる。
ユースホステル
スイス・ユースホステル協会(Schweizer Jugendherbergen)に加盟するユースホステルは、全国に約50か所ある。ドミトリー(相部屋)だけでなく、個室やファミリールームもあるところが多い。設備は清潔で、キッチンや共有スペースも充実している。
料金は、ドミトリーで1泊40から60フラン、個室で80から150フラン程度だ。ユースホステル協会の会員になると割引が受けられる。
民泊(Airbnb、Vrboなど)
アパートメントタイプの宿泊施設は、特に長期滞在やグループ旅行に便利だ。キッチン付きの部屋を借りれば、自炊で食費を節約できる。地元の人が住むエリアに滞在することで、観光地とは違うスイスの日常を体験できる。
料金は場所や物件によって大きく異なるが、スタジオタイプで1泊100から200フラン、2ベッドルームで150から300フラン程度が目安だ。
山小屋(ベルクヒュッテ/Berghutteまたはシャレー)
アルプスでのハイキング中に泊まれる山小屋は、ユニークな体験だ。スイス・アルパイン・クラブ(SAC)が運営する山小屋が各地にあり、登山者やハイカーに愛されている。設備はシンプルだが、山の中で朝日を見る体験は格別だ。
料金は、会員で1泊30から50フラン、非会員で50から80フラン程度(食事別)。人気の山小屋は予約が必要なことがある。
追加情報:日本人観光客向けの情報
日本人観光客がスイスで快適に過ごすためのいくつかの情報を追加しておこう。
日本語の通じる場所
スイスで日本語が通じることは稀だが、日本人観光客が多い場所には日本語サービスがあることがある。ユングフラウヨッホの展望台には日本語の案内があり、一部の高級ホテルには日本語を話せるスタッフがいることがある。また、日本の旅行会社が手配するツアーでは、日本語ガイドが同行する。
和食レストラン
チューリッヒ、ジュネーブ、バーゼルなどの大都市には和食レストランがある。寿司、焼き鳥、ラーメンなど、様々な日本料理が楽しめる。ただし、価格は日本の2から3倍は覚悟しておこう。スーパーにも醤油やわさび、インスタント味噌汁などが売っていることがある。
トイレ事情
スイスの公衆トイレは比較的清潔だが、有料のことが多い(0.50から2フラン)。駅やショッピングセンター、美術館のトイレは無料で使えることが多い。山岳地帯のレストランや展望台でも、トイレは利用可能だ。ウォシュレットはほとんどないので、必要な人は携帯用のものを持参すると良い。
喫煙
スイスでは、屋内の公共スペースは禁煙だ。レストラン、ホテルのロビー、公共交通機関内での喫煙は禁止されている。喫煙者は、屋外の指定場所で喫煙する必要がある。ホテルの部屋も、多くは禁煙だ。
電気製品の使用
日本の電化製品をスイスで使う場合、プラグの形状と電圧に注意が必要だ。スイスのコンセントは3ピンの独自形状(SEV 1011)だが、ヨーロッパの一般的な2ピン(Cタイプ)も差し込めることが多い。電圧は230V/50Hzで、日本(100V/50-60Hz)とは異なる。最近のスマートフォンやノートパソコンの充電器は100-240V対応のものが多いので、変圧器なしで使えることが多いが、確認しておこう。ドライヤーなどは、変圧器が必要か、現地で借りた方が安全だ。
以上で、スイス完全旅行ガイドを終わる。この情報が、あなたのスイス旅行の計画と実際の旅に役立つことを願っている。素晴らしいスイスの旅を!