サン・セバスティアン
サン・セバスティアン(ドノスティア)― 美食と絶景が織りなすバスクの宝石
スペイン北部、フランス国境からわずか20キロメートルに位置するサン・セバスティアン(バスク語でドノスティア)は、世界屈指の美食都市として、また息をのむほど美しい海岸線で知られるバスク地方の至宝です。人口わずか18万人ほどの小さな街でありながら、ミシュラン三つ星レストランが複数軒ひしめき合い、人口あたりのミシュラン星の数では世界トップクラスを誇ります。
貝殻のように美しい弧を描くラ・コンチャ・ビーチは、ヨーロッパで最も美しいビーチのひとつとして繰り返し選ばれており、19世紀にはスペイン王室の避暑地として栄えました。モンテ・ウルグルとモンテ・イゲルドという二つの山に抱かれた湾の景色は、初めて目にする旅行者の誰もが感嘆の声を上げるほどです。
日本からのアクセスは決して近くはありませんが、わざわざ訪れる価値が十分にある街です。バスク地方独自の文化、言語、そして何よりも食の伝統は、スペインの他の地域とは一線を画しています。旧市街のバル(バー)を巡りながらピンチョス(バスク風タパス)をつまみ、地元のチャコリワインで乾杯する体験は、一生の思い出になるでしょう。美食を愛する日本の旅行者にとって、サン・セバスティアンはまさに聖地と呼ぶにふさわしい場所です。清潔で安全、コンパクトで歩きやすく、おもてなしの心にあふれたこの街は、日本人旅行者にとっても非常に過ごしやすい環境が整っています。
地区ガイド ― サン・セバスティアンの6つの顔
パルテ・ビエハ(旧市街)
サン・セバスティアン観光の心臓部とも言える旧市街(パルテ・ビエハ)は、ウルグル山の麓に広がる迷路のような石畳の街並みです。狭い路地の両側にはバルやレストラン、ショップがぎっしりと並び、特に夕方以降はピンチョスを求める地元客と観光客で大いに賑わいます。コンスティトゥシオン広場はかつて闘牛場として使われていた歴史を持ち、建物のバルコニーに残る番号がその名残です。サン・テルモ博物館やブエン・パストール大聖堂も徒歩圏内にあります。バル巡りの出発点としても最適で、31 de Agosto通りやFermin Calbeton通りには名店が集中しています。日本人旅行者にとって嬉しいのは、多くのバルでJCBカードが使えることです(ただし小さな店舗では現金のみの場合もあるため、少額の現金も持ち歩くことをお勧めします)。
セントロ(中心街)
旧市街の南側に広がるセントロ地区は、19世紀の都市計画によって整備された美しい街並みが特徴です。広々としたブールバードが旧市街とセントロを分け、優雅なベル・エポック様式の建物が立ち並びます。ブエン・パストール大聖堂のネオゴシック様式の尖塔が街のランドマークとなっており、その周辺にはブランドショップやデパート、カフェが充実しています。サン・マルティン市場(Mercado de San Martin)では新鮮な食材が手に入り、地元の食文化を垣間見ることができます。ホテルも多いエリアで、観光の拠点として便利な立地です。街全体が清潔に保たれており、日本の都市と同様に安心して歩けます。
グロス地区
ウルメア川の東側に広がるグロス地区は、サーファーに愛されるスリオラ・ビーチを擁する若者に人気のエリアです。近年、おしゃれなレストランやバル、ブティックが次々とオープンし、旧市街に負けない活気を見せています。クルサール会議センターのモダンな建築はラファエル・モネオの設計で、毎年9月に開催されるサン・セバスティアン国際映画祭のメイン会場としても知られています。旧市街より観光客が少なく、より地元の雰囲気を味わいたい方にお勧めです。ピンチョスの質も高く、価格は旧市街よりやや手頃な傾向があります。サーフィンに興味がなくても、スリオラ・ビーチの波打ち際を散歩するだけで気持ちが良いでしょう。
アンティグオ地区
ラ・コンチャ湾の西端に位置するアンティグオ地区は、落ち着いた住宅街の雰囲気が漂う上品なエリアです。ミラマール宮殿とその美しい庭園があり、湾を一望できる絶景スポットとして人気です。オンダレッタ・ビーチはラ・コンチャより静かで、家族連れやゆったり過ごしたい方に向いています。風の櫛(エドゥアルド・チリーダの彫刻作品)はアンティグオ地区の西端に位置し、波が岩に砕ける中にそびえる鉄の彫刻は圧巻です。高級レストランも点在し、静かな環境で食事を楽しみたい方にも最適です。
エギア地区
かつての工業地帯が再開発されたエギア地区は、サン・セバスティアンで最もクリエイティブなエネルギーに満ちたエリアです。旧タバコ工場を改装した文化施設タバカレラがこの地区の象徴で、現代アートの展示、映画上映、ワークショップなど多彩なプログラムが開催されています。最上階のテラスからは街の360度パノラマビューが楽しめます。周辺にはインディペンデントなカフェやアトリエ、ストリートアートが点在し、東京の下北沢や蔵前のような雰囲気を感じるかもしれません。鉄道駅に近いため、バスクの他の都市への日帰り旅行にも便利です。
イゲルド地区
モンテ・イゲルドのふもとに広がるイゲルド地区は、街の西端に位置する閑静な住宅地です。1912年から運行しているケーブルカー(フニクラ)で山頂まで登ると、ラ・コンチャ湾とサン・セバスティアンの街並みを一望する、おそらくバスク地方で最も有名な絶景が広がります。山頂にはレトロな遊園地があり、どこか懐かしい雰囲気が漂います。夕暮れ時に訪れると、湾に沈む夕日が空と海をオレンジ色に染め、忘れがたい光景を見ることができます。山頂のレストランで食事をしながら景色を堪能するのもお勧めです。
ベストシーズン ― いつ訪れるべきか
サン・セバスティアンの気候は、スペインと聞いてイメージする地中海性気候とは大きく異なります。大西洋に面したバスク地方は一年を通じて雨が多く、夏でも東京のような厳しい暑さにはなりません。日本人旅行者にとっては、むしろ過ごしやすい気候と言えるでしょう。
6月〜9月(ベストシーズン):最高気温は25〜28度程度で、湿度も低く快適です。特に7月と8月はビーチを楽しむのに最適で、日照時間も長く夜9時半頃まで明るいのが特徴です。ただし、この時期はヨーロッパ中から観光客が押し寄せるため、ホテルやレストランの予約は必須です。料金もハイシーズン価格になります。7月のジャズフェスティバル、8月のセマナ・グランデ(大祭)は街全体がお祭りムードに包まれます。
4月〜5月、10月:気温は15〜22度程度で、雨の日もありますが、観光客が少なく落ち着いて旅行を楽しめます。レストランの予約も取りやすく、ホテル料金も手頃です。ピンチョス巡りがメインの目的であれば、この時期が最もお勧めです。
9月下旬(映画祭期間):サン・セバスティアン国際映画祭の開催中は街が華やぎますが、宿泊施設は大変混雑し、料金も跳ね上がります。映画ファンなら外せませんが、そうでなければ避けた方が賢明です。
11月〜3月:オフシーズンで雨が多く、気温も8〜14度程度と肌寒いですが、レストランやバルは通常営業しています。美食目的の旅行者にとっては、予約の取りやすさと手頃な価格が魅力です。冬の荒れた大西洋の波を見るのも、それはそれで趣があります。ただし、営業時間を短縮する店舗もあるため注意が必要です。
持ち物のアドバイス:夏でも朝晩は涼しくなることがあるため、薄手の上着は必携です。折りたたみ傘もバスク地方では年間を通して手放せません。石畳が多い街なので、歩きやすい靴が重要です。
モデルプラン ― 3日間から7日間の過ごし方
3日間プラン(コンパクトに見どころを網羅)
1日目:旧市街とラ・コンチャ
午前中は旧市街(パルテ・ビエハ)の散策からスタートしましょう。コンスティトゥシオン広場でコーヒーを飲みながら旅の計画を立て、サン・テルモ博物館でバスク文化の歴史を学びます。昼食は旧市街のバルでピンチョスを数軒はしごするのがお勧めです。午後はラ・コンチャ・ビーチ沿いの遊歩道を散歩し、ミラマール宮殿の庭園を散策。夕方にはモンテ・ウルグルに登り、山頂のキリスト像と要塞跡から湾の夕景を満喫しましょう。夜は再び旧市街でピンチョスの夜を楽しみます。
2日目:イゲルド、風の櫛、グロス地区
午前中はモンテ・イゲルドへ。ケーブルカーで山頂に登り、バスク地方随一の絶景を堪能します。下山後は海岸沿いを西に歩き、風の櫛の彫刻群を鑑賞。波しぶきと鉄の芸術のコントラストは圧巻です。昼食はアンティグオ地区のレストランで海鮮料理を。午後はグロス地区に移動し、スリオラ・ビーチでサーファーたちの技を眺めたり、クルサール会議センターの斬新な建築を鑑賞。夕食はグロス地区のバルで地元の雰囲気を味わいましょう。
3日目:市場、水族館、サンタ・クララ島
朝はサン・マルティン市場(Mercado de San Martin)やブレチャ市場(La Bretxa)で新鮮な食材を見学。サン・セバスティアン水族館はコンパクトながら展示が充実しており、ビスケー湾の海洋生物について学べます。天気が良ければ、旧港から出るボートでサンタ・クララ島に渡りましょう(夏季運航、所要約10分)。島には小さなビーチとカフェがあり、湾を取り囲む街の全景を海から眺められます。午後はタバカレラで現代アートに触れ、最上階のテラスからの眺望を楽しみます。最後の夜は少し奮発して、地元で評判のレストランでバスク料理のフルコースを。
5日間に延長する場合
4日目:バスク地方の日帰り旅行(ゲタリア&サラウツ)
バスからわずか30分のゲタリア(Getaria)は、バスク地方のチャコリワインの産地として有名な漁村です。港沿いのレストランで炭火焼きの魚を味わい、ワイナリーを訪問してチャコリの試飲を楽しみましょう。隣町のサラウツ(Zarautz)にはバスク地方で最も長いビーチがあり、ゲタリアからの海岸沿いのハイキングコース(約5キロメートル)は絶景の連続です。
5日目:フランスとの国境を越えて
サン・セバスティアンからバスで約40分のフランス側バスク、サン・ジャン・ド・リュズ(Saint-Jean-de-Luz)やバイヨンヌ(Bayonne)への日帰り旅行はいかがでしょうか。同じバスク文化圏でありながら、フランスの洗練された雰囲気が加わり、また違った魅力を楽しめます。バイヨンヌのチョコレートは世界的に有名で、お土産にも最適です。パスポートを忘れずに持参しましょう(シェンゲン圏内のため通常パスポートチェックはありませんが、念のため携帯を推奨します)。
7日間に延長する場合
6日目:ビルバオ日帰り旅行
バスク地方最大の都市ビルバオへは、バスで約1時間15分。グッゲンハイム美術館はフランク・ゲーリーの設計による建築そのものが芸術作品であり、中の展示と合わせて半日は必要です。旧市街(カスコ・ビエホ)のバル巡りも素晴らしく、サン・セバスティアンとは異なるピンチョス文化を体験できます。
7日目:料理教室とのんびり散策
最終日は料理教室に参加してバスク料理を学ぶのはいかがでしょうか。英語で受講できる教室がいくつかあり、市場での食材買い出しから始まるコースが人気です。午後はお土産の買い物や、お気に入りになったバルへの再訪、あるいはラ・コンチャ・ビーチで最後のひとときを過ごしましょう。学んだレシピは日本に帰ってからも再現できるので、旅の素晴らしい思い出になります。
食事ガイド ― 世界一の美食都市で何を食べるか
ピンチョスバル巡りの基本
サン・セバスティアンの食文化の真髄は、バル巡り(txikiteo / チキテオ)にあります。これは数軒のバルをはしごしながら、各店の自慢のピンチョス(pintxos)とチャコリワインやビールを楽しむ習慣です。日本の居酒屋のはしごに似ていますが、1軒あたりの滞在時間はもっと短く、1〜2品つまんでは次の店に移るのが一般的です。
ピンチョスバル巡りのコツ:
- 昼は13時〜15時、夜は20時〜22時がピークタイム。地元の人で賑わう店を選びましょう
- カウンターに並んだピンチョスは指差しで注文可能。温かい料理は黒板メニューから注文します
- 各店で1〜2品ずつ食べて移動するのがマナー。同じ店に長居するのは一般的ではありません
- 会計は最後にまとめて。バスク地方の人は正直さを重んじるため、自己申告制の店もあります
- チップは不要ですが、お釣りの小銭を残す程度は喜ばれます
- 旧市街のFermin Calbeton通り、31 de Agosto通りがバル密集エリアです
- グロス地区のPeña y Goñi通り周辺も地元民に人気のバルが多いです
レストランでの食事
ピンチョスバル巡りだけでなく、しっかりとしたレストランでの食事も欠かせません。サン・セバスティアンには複数のミシュラン星付きレストランがあり、アルサック(Arzak)やマルティン・ベラサテギ(Martin Berasategui、郊外)などの三つ星レストランは世界のグルメ愛好家の憧れです。これらの店は数ヶ月前からの予約が必要ですが、体験する価値は十分にあります。コース料理の価格帯は三つ星で200〜300ユーロ(飲み物別)、一つ星で80〜150ユーロ程度です。
ミシュラン星付き以外にも、素晴らしいレストランが数多くあります。海鮮レストランでは新鮮な魚介を炭火焼きやグリルで味わえます。特にメルルーサ(merluza / タラの一種)やチピロネス(txipirones / 小さなイカ)のグリルは絶品です。日本の魚料理に慣れた方でも、バスク流の調理法の繊細さに感心するはずです。
日本人旅行者へのヒント:サン・セバスティアンの食のレベルは非常に高く、日本から来た方でも満足できるクオリティです。魚の鮮度や調理の丁寧さは、日本の和食にも通じるものがあります。レストランの多くでは英語メニューが用意されていますが、バスク語やスペイン語のみの店もあります。Google翻訳のカメラ機能が役立つでしょう。JCBカードは高級レストランではほぼ使えますが、小さなバルでは現金が必要な場合もあります。VISAまたはMastercardも併せて持参することを強くお勧めします。
必食グルメ ― バスク料理の代表的な10皿
バスク地方には独自の食文化があり、スペインの他の地域とは異なる料理が数多くあります。以下は、サン・セバスティアン滞在中にぜひ味わっていただきたい代表的な料理です。
- ヒルダ(Gilda):サン・セバスティアンのピンチョスの原点とも言える一品。串にオリーブ、アンチョビ、青唐辛子(ギンディージャ)を刺したシンプルな料理ですが、塩味と酸味と辛味の絶妙なバランスが癖になります。どのバルにもあるので、まずはこれから試してみてください。
- バカラオ・アル・ピルピル(Bacalao al pil-pil):干しダラをオリーブオイル、ニンニク、唐辛子でじっくり煮込んだバスク料理の代表格。魚のゼラチン質とオリーブオイルが乳化してできるとろりとしたソースが特徴で、シンプルな材料から生まれる深い味わいに驚くでしょう。
- チャングーロ(Txangurro):蟹の身をほぐし、トマト、玉ねぎ、白ワイン、ブランデーなどと混ぜて甲羅に詰め直し、オーブンで焼き上げた料理。日本の甲羅焼きに似た発想ですが、ソースの味わいが独特です。
- チュレトン(Txuleton):バスク地方の熟成牛骨付きリブロースステーキ。炭火で豪快に焼き上げ、外側はカリカリ、中はレアに仕上げるのがバスク流。塩のみのシンプルな味付けで、肉の旨みを存分に味わえます。通常1キロ以上あり、2人以上でシェアします。
- コケチャス(Kokotxas):メルルーサ(タラ)やバカラオの顎の部分を使った珍味。ゼラチン質が豊富でプルプルとした食感が特徴的です。ピルピルソースやグリーンソースで調理されることが多く、コラーゲンたっぷりで美容にも良いと言われています。
- マルミタコ(Marmitako):カツオ(bonito)とジャガイモをトマトベースのソースで煮込んだ漁師料理。もともとは船上で作られていた質素な料理ですが、現在ではレストランでも提供される人気メニューです。日本人にとって馴染みのあるカツオが主役なので、親しみやすい味わいです。
- チピロネス・エン・ス・ティンタ(Txipirones en su tinta):小さなイカを自らの墨で煮込んだ料理。濃厚なイカ墨のソースにご飯を添えて食べるのが一般的で、日本のイカ墨パスタやイカ墨汁に通じるものがあります。バスク料理と日本料理の味覚の類似性を最も感じられる一品かもしれません。
- ピペラーダ(Piperrada):バスク地方特有の赤ピーマンと緑ピーマン、トマト、玉ねぎを炒め煮にした付け合わせ料理。卵を落としてスクランブルにしたり、魚や肉のソースとしても使われます。素朴ながら深い味わいがあります。
- バスクチーズケーキ(Tarta de queso):日本でも大ブームとなった「バスクチーズケーキ」の本場がここサン・セバスティアンです。旧市街のLa Viñaが発祥の店として知られており、外側の香ばしい焦げ目と中のとろけるクリーミーな食感は本場ならではの味わいです。日本のコンビニで買うものとは別次元の美味しさです。
- チャコリワイン(Txakoli):料理ではありませんが、バスク食文化に欠かせないのがこの微発泡性の白ワインです。グラスの高い位置からサーブされ(エスカンシアールと呼ばれる注ぎ方)、フルーティーで爽やかな味わいがピンチョスに完璧にマッチします。一杯2〜3ユーロ程度で気軽に楽しめます。
地元民だけが知る12のヒント
ガイドブックには載っていない、サン・セバスティアンをより深く楽しむための地元情報をご紹介します。
- バル巡りは火曜日から木曜日がベスト。金曜・土曜は観光客でごった返し、人気店は立錐の余地もありません。平日の夜なら地元の常連客に混じって落ち着いて楽しめます。日曜・月曜は閉まっている店も多いので注意してください。
- ピンチョスの「温かい料理」を見逃さないでください。カウンターに並んだ冷たいピンチョスに目が行きがちですが、黒板に手書きされた温かい料理(platos calientes)こそ各店の腕の見せどころです。「Hay algo caliente?(何か温かいものはありますか?)」と聞いてみましょう。
- 朝のラ・コンチャは別世界。朝7時〜8時のビーチはほぼ貸切状態。地元の人がジョギングや水泳を楽しんでいるだけで、昼間の喧騒が嘘のような静寂に包まれます。早起きして散歩する価値は十分あります。
- モンテ・ウルグルは無料で登れます。観光客の多くがモンテ・イゲルド(ケーブルカーで片道4ユーロ)に行きますが、モンテ・ウルグルは入場無料で、旧市街側から徒歩20〜30分で山頂に到着します。途中にはかつての砲台跡や歴史博物館もあり、景色はイゲルドに劣りません。
- 干潮時のサンタ・クララ島。夏の大潮の干潮時には、ラ・コンチャ・ビーチからサンタ・クララ島まで歩いて渡れることがあります。地元の人しか知らない体験ですが、潮の流れには十分注意が必要です。通常はボートで渡るのが安全です。
- 「ソシエダ・ガストロノミカ」を覗いてみてください。バスク地方には会員制の料理クラブ(Sociedad Gastronómica / txoko)が200以上あります。一般の観光客が入ることは難しいですが、地元の知人がいれば紹介してもらえることも。男性中心の伝統的な文化ですが、近年は変化しつつあります。
- 日曜の蚤の市。毎週日曜の朝、ブレチャ市場周辺で小さな蚤の市が開かれます。アンティーク雑貨や古書、ビンテージの食器など、掘り出し物が見つかるかもしれません。
- ウルメア川の河口は夕日の穴場。多くの人がラ・コンチャで夕日を見ますが、グロス地区側のウルメア川河口からの夕景も美しいです。クルサール周辺のベンチに座って、川面に映る夕焼けを眺めるのは至福のひとときです。
- 市営プールで「温泉気分」を。日本のような温泉はありませんが、ラ・ペルラ(La Perla)はラ・コンチャ・ビーチに面したタラソテラピー施設で、海水を利用した温水プールやサウナがあります。ビーチを目の前にした温水プールは、日本の海辺の露天風呂を思い起こさせるかもしれません。料金は約30ユーロで、タオルのレンタルも可能です。
- サン・セバスティアンカードを活用。公式の観光カード(San Sebastián Card)を購入すると、バス乗り放題や主要施設の割引が受けられます。3日以上滞在するなら元が取れる可能性が高いです。観光案内所(Boulevard沿い)で購入できます。
- シードル(Sagardoa)のシーズンに注意。1月〜4月はバスク地方のシードル(リンゴ酒)のシーズンです。近郊のシードルハウス(Sagardotegi)では、樽から直接注がれるシードルと共に、バカラオのオムレツ、骨付きステーキ、チーズとクルミのデザートという伝統的なメニューを定額で楽しめます。非常にユニークな体験です。
- 地元のスーパーマーケットもお宝の宝庫。お土産にバスクの食材を買うなら、旧市街の専門店よりもBonÁreaやEroskiなどのスーパーが断然お得です。チャコリワイン、イディアサバルチーズ、ギンディージャ(唐辛子の酢漬け)、バスク産チョコレートなど、手頃な価格で手に入ります。
交通ガイド ― アクセスと市内の移動
日本からのアクセス
サン・セバスティアンへの直行便はありませんので、ヨーロッパの主要都市で乗り継ぐ必要があります。最寄り空港はサン・セバスティアン空港(EAS)ですが、便数が少ないため、実用的には以下の3つのルートが一般的です。
- ビルバオ空港(BIO)経由:東京(成田・羽田)やOsakaからパリ、フランクフルト、ロンドンなどで乗り継いでビルバオ空港へ。空港からサン・セバスティアンまではバス(PESA社)で約1時間15分、料金は片道約17ユーロ。最も一般的なルートです。イベリア航空(JALと同じワンワールド加盟)やルフトハンザ、エールフランスなどの組み合わせが便利です。
- マドリード経由(国内線乗り継ぎ):東京からマドリードへは直行便があります(イベリア航空、約14時間)。マドリードからサン・セバスティアン空港またはビルバオ空港へ国内線で約1時間。あるいはマドリードから高速列車(Renfe)で約5時間半でサン・セバスティアンに到着します。
- パリ経由(TGVまたは国内線):東京・大阪からパリへの便は多数。パリからTGV(高速鉄道)でフランス側バスクのアンダイエ(Hendaye)まで約5時間半、そこからバスまたは近郊電車で約30分。少し時間はかかりますが、フランスの車窓風景を楽しめます。
市内交通
サン・セバスティアンは非常にコンパクトな街で、主要な観光スポットのほとんどが徒歩圏内にあります。ラ・コンチャ・ビーチの端から端まで歩いても約30分、旧市街からグロス地区まで徒歩15分程度です。
市バス(Dbus):市内バスは清潔で時刻表通りに運行されています。料金は1回1.80ユーロ(Mugi交通カードを使えば割引あり)。モンテ・イゲルドやエギア地区への移動に便利です。Google Mapsでルート検索が可能で、リアルタイムの到着時間もかなり正確です。日本の公共交通機関と同様の信頼性があります。
タクシー:市内中心部の移動であれば5〜10ユーロ程度。メーター制で、ぼったくりの心配はほぼありません。空港からの送迎や、夜遅くの移動に便利です。流しのタクシーはあまりなく、タクシー乗り場(Parada de Taxi)から乗るか電話で呼びます。
レンタサイクル:海岸沿いの遊歩道はサイクリングに最適で、市営のレンタサイクル(dBizi)が利用できます。登録が必要ですが、旅行者でも利用可能です。ただし、旧市街の石畳は自転車向きではないため注意してください。
近郊交通:ゲタリアやサラウツなどの近郊の町へはバスク鉄道(Euskotren)やPESAバスが便利です。ビルバオへのバス(ALSA社)は30分間隔で運行しており、料金も手頃です。フランス側へはアンダイエまでEuskotrenで約35分、そこからフランス国鉄(SNCF)に乗り換えます。
交通ICカード「Mugi」:バスク地方共通の交通ICカード「Mugi」は、日本のSuicaやICOCAのように、バスや鉄道でタッチするだけで乗車できます。観光案内所や駅の窓口で購入でき、市バスの運賃が割引になります。滞在中に何度もバスを利用する予定なら、購入をお勧めします。
まとめ ― なぜサン・セバスティアンを選ぶべきか
サン・セバスティアンは、美食、自然の美しさ、豊かな文化が見事に調和した稀有な街です。ラ・コンチャ・ビーチの完璧な弧、モンテ・イゲルドからの息をのむ絶景、旧市街のバルから溢れる笑い声と美味しいピンチョスの香り。この街で過ごす時間は、旅行者の心に深く刻まれるものとなるでしょう。
日本の食文化と驚くほど多くの共通点を持つバスク料理、清潔で安全な街並み、コンパクトながらも奥深い見どころの数々。決して近い場所ではありませんが、遠くまで旅をした甲斐があったと必ず感じていただける街です。ぜひ一度、バスクの風を感じに訪れてみてください。