カサブランカ
カサブランカ2026:旅行前に知っておくべきこと
カサブランカ。映画のタイトルで知っている人は多いけれど、実際に行ったことがある日本人はまだ少ない。モロッコといえばマラケシュやフェズが注目されがちだが、カサブランカはモロッコ最大の商業都市であり、この国の「今」を最もリアルに感じられる場所だ。人口約400万人、北アフリカ有数の経済拠点で、フランス植民地時代のアールデコ建築と、イスラム文化、そして現代的なビジネス街が共存する独特の雰囲気がある。
日本からのアクセスは、2026年現在、直行便はない。一般的なルートは、パリ(CDG)経由でロイヤル・エア・モロッコまたはエールフランスを利用するか、ドーハ経由のカタール航空、イスタンブール経由のターキッシュエアラインズが主な選択肢になる。成田・羽田からの所要時間は乗り継ぎ込みで16〜22時間程度。航空券はシーズンにもよるが、往復12万〜20万円(約6,000〜10,000 MAD)が目安だ。
治安については、カサブランカは大都市なりのリスクはあるが、観光エリアは比較的安全。スリや置き引きには注意が必要で、特にメディナ周辺や混雑する市場では貴重品の管理を徹底しよう。夜間の一人歩きは中心部でも避けた方が無難だ。言語はアラビア語(モロッコ方言のダリジャ)とフランス語が主流で、観光地では英語も通じる。日本語はまず通じないので、簡単なフランス語フレーズを覚えておくと便利。通貨はモロッコ・ディルハム(MAD)で、1 MAD = 約15円(2026年3月現在)。JCBカードは残念ながらほぼ使えない。Visa/Mastercardは中〜高級ホテルやレストランで使えるが、メディナや小さな店舗では現金が必須だ。
衛生面について正直に言うと、日本の水準を期待してはいけない。水道水は飲まないこと(必ずボトルウォーターを購入、1.5Lで3〜5 MAD / 約45〜75円)。レストランの衛生レベルはピンキリで、地元の人で賑わっている店を選ぶのが鉄則。ウェットティッシュと携帯用消毒ジェルは必携だ。
エリアガイド:どこに泊まる?
カサブランカは広い街だが、旅行者が滞在するエリアは限られている。それぞれの特徴を把握して、自分のスタイルに合った場所を選ぼう。
1. アンファ地区(Anfa)
カサブランカの高級住宅街で、外国人駐在員も多く住むエリア。清潔で治安も良く、日本人旅行者が最も安心して滞在できる場所だ。Four Seasons Hotel Casablanca(1泊約3,500〜5,000 MAD / 52,500〜75,000円)が代表的。周辺にはおしゃれなカフェやレストランも多い。モロッコ初心者や、女性の一人旅にはここを強く推奨する。タクシーで中心部まで15〜20分。
2. コルニッシュ地区(La Corniche)
大西洋に面した海沿いのエリアで、コルニッシュの散歩道が気持ちいい。リゾートホテルやビーチクラブが並び、開放的な雰囲気。Movenpick Hotel(1泊約1,500〜2,500 MAD / 22,500〜37,500円)などが利用しやすい。ハッサン2世モスクへも近く、観光の拠点としても便利。夏場は地元のカサブランカっ子で賑わう。ただし、冬は風が強く肌寒い日もある。
3. 中心部・国連広場周辺(Centre Ville / Place des Nations Unies)
カサブランカの心臓部。アールデコ・ダウンタウンの美しい建築群が広がり、カフェやショップが密集する。Hotel & Spa Le Doge(1泊約2,000〜3,500 MAD / 30,000〜52,500円)はアールデコ建築を改装した5つ星ブティックホテルで、建築好きなら一度は泊まりたい。中級ホテルなら1泊600〜1,200 MAD(9,000〜18,000円)程度で見つかる。観光には最も便利だが、夜は人通りが減るエリアもあるので注意。
4. 旧メディナ周辺(Ancienne Medina)
旧メディナに隣接するエリアで、モロッコらしい雰囲気を味わいたい人向け。リヤド(伝統的な邸宅を改装した宿)が点在しており、1泊400〜800 MAD(6,000〜12,000円)で泊まれる。ただし、マラケシュやフェズのメディナほど観光地化されておらず、道が狭く複雑なため、初めてのモロッコには少しハードルが高い。アドベンチャー精神のある旅行者にはおすすめ。清潔さは宿によって大きく差があるので、レビューを入念にチェックすること。
5. マアリフ地区(Maarif)
ショッピングの中心地で、Morocco Mallやツインセンターなどの大型商業施設がある。モダンなカサブランカを体験したいならここ。中級ホテルが多く、1泊500〜1,000 MAD(7,500〜15,000円)が相場。レストランやカフェの選択肢が豊富で、国際料理も揃っている。日本食レストランもこのエリアに集中しているので、和食が恋しくなったときの拠点としても良い。
6. ガウティエ地区(Gauthier)
ビジネス街に隣接する落ち着いた住宅地で、Airbnbなどの短期賃貸アパートメントが多い。長期滞在やキッチン付きの宿を探しているならこのエリアが狙い目だ。1泊300〜700 MAD(4,500〜10,500円)でアパートが借りられる。スーパーマーケット(Marjane、Carrefour)も近く、自炊派には便利。トラムの停留所も近いので移動もしやすい。
7. ボスコウラ地区(Bouskoura)
空港に近い郊外のニュータウンで、ゴルフ場やショッピングモールがある。乗り継ぎで1泊だけカサブランカに滞在する場合や、静かな環境を好む人向け。空港ホテルは1泊400〜800 MAD(6,000〜12,000円)程度。市内観光には不便なので、トランジット以外ではあまりおすすめしない。
結論:初めてのカサブランカなら、コルニッシュ地区か中心部がベストバランス。予算に余裕があればアンファ地区。モロッコらしさ重視ならメディナ周辺。長期滞在ならガウティエかマアリフがおすすめだ。
ベストシーズン
カサブランカは大西洋岸に位置するため、モロッコ内陸部(マラケシュなど)と比べて気候がかなり穏やかだ。地中海性気候に属し、夏は乾燥して暑く、冬は温暖だが雨が多い。
春(3月〜5月):ベストシーズン
気温は18〜25度で過ごしやすく、雨も少なくなってくる。街の花が咲き、散策に最適。観光客もまだ少なく、ホテルも比較的安い。特に4月〜5月は文句なしのベストタイミングだ。日本のGWと重なるので、早めの航空券予約を推奨。
夏(6月〜8月):暑いが海が楽しめる
気温は25〜32度。内陸のマラケシュが40度を超えるのに対し、カサブランカは海風のおかげで比較的マシ。ただし、日差しは強烈なので日焼け止め(SPF50推奨)と帽子は必須。コルニッシュのビーチは地元の家族連れで大賑わい。この時期はモロッコ人の国内旅行シーズンでもあり、ホテルの予約が取りにくくなることもある。日本の夏休みに訪れるなら、7月上旬がおすすめ(ラマダンの時期と重ならないか要確認)。
秋(9月〜11月):穴場シーズン
9月はまだ暑さが残るが、10月以降は快適になる。観光客が減り、ホテルの料金も下がる。11月後半から雨が増え始めるが、一日中降り続けることは少ない。秋の味覚(ザクロ、デーツ、みかん)が市場に並び始める時期でもある。
冬(12月〜2月):雨季だが温暖
気温は10〜18度。東京の冬より暖かいが、建物の断熱が弱いため、室内が寒く感じることがある。雨の日が月に8〜10日程度あり、傘は必携。ただし、航空券とホテルが最も安くなる時期で、予算重視の旅行者にはありがたい。年末年始はクリスマス・新年のイルミネーションで街が華やぐ。
ラマダン期間中の注意:2026年のラマダンは2月中旬〜3月中旬頃の予定。この期間中、日中はレストランの多くが閉まり、公共の場での飲食は控えるのがマナー。ただし、観光客向けのホテルレストランは通常営業。日没後のイフタール(断食明けの食事)は街全体がお祭りムードになり、特別な体験ができる。ラマダン中の旅行は制約もあるが、モロッコ文化を深く知るチャンスでもある。
服装のヒント:イスラム教国だが、カサブランカは比較的リベラル。女性も半袖・膝丈スカートで問題ないが、モスク訪問時は肩と膝が隠れる服装が必要。男性は短パンでも大丈夫だが、高級レストランにはスマートカジュアル推奨。
モデルコース:3日〜7日
3日間コース:カサブランカ・エッセンシャル
1日目:到着日・中心部探索
- 午前:ムハンマド5世国際空港到着。タクシーまたは空港バスで市内へ(タクシーは定額300 MAD / 約4,500円、バスは20 MAD / 約300円)。ホテルにチェックイン後、少し休憩
- 午後:アールデコ・ダウンタウンを散策。国連広場(Place des Nations Unies)を起点に、ムハンマド5世広場、中央市場(Marche Central)を巡る。中央市場では新鮮な魚介類やオリーブ、スパイスを見て回ろう
- 夕方:Rick's Cafeで映画の雰囲気を味わいながらディナー。メインディッシュ150〜250 MAD(2,250〜3,750円)。予約推奨
2日目:モスクとメディナ
- 午前:ハッサン2世モスクの見学ツアーに参加(入場料130 MAD / 約1,950円、所要約1時間)。非ムスリムが内部に入れるモロッコで数少ないモスクのひとつで、海の上に建つ壮麗な建築は必見中の必見。ツアーは9:00、10:00、11:00開始が一般的だが、季節や曜日で変わるので前日に確認を
- 昼:モスク近くのレストランで海鮮ランチ。焼き魚のプレートが40〜80 MAD(600〜1,200円)
- 午後:旧メディナを散策。マラケシュほど大きくはないが、革製品、スパイス、伝統衣装の店が並ぶ。値段交渉は必須で、最初の提示価格の50〜60%が目安
- 夕方:コルニッシュ沿いを散歩し、海を眺めながらカフェでミントティーを楽しむ(10〜20 MAD / 150〜300円)
3日目:ショッピングと出発
- 午前:Morocco Mall またはAnfa Placeでお土産ショッピング。アルガンオイル(純正品100ml で80〜150 MAD / 1,200〜2,250円)、モロッコ石鹸、スパイスセットが定番のお土産
- 昼:マアリフ地区でランチ。最後のモロッコ料理を堪能
- 午後:空港へ移動。出発
5日間コース:カサブランカ+近郊
上記3日間に加えて:
4日目:エル・ジャディーダ日帰り
- カサブランカから南へ約100km、車で1.5時間。ポルトガル時代の要塞都市(ユネスコ世界遺産)がある。CTMバスで片道50〜70 MAD(750〜1,050円)、またはグランタクシーで片道40 MAD程度(相乗り)
- ポルトガル・シスター(地下貯水槽)は映画のロケ地にもなった幻想的な空間。入場料10 MAD(約150円)
- 海沿いのレストランで新鮮なシーフードランチを楽しんで、夕方カサブランカに戻る
5日目:ハマムとモロッコ料理教室
- 午前:伝統的なハマム(モロッコ式蒸し風呂)体験。地元のハマムは20〜30 MAD(300〜450円)だが、観光客にはスパ付きの高級ハマムがおすすめ(200〜500 MAD / 3,000〜7,500円)。垢すりとマッサージ込みで約1.5時間
- 午後:料理教室に参加(300〜600 MAD / 4,500〜9,000円、約3時間)。タジン鍋やクスクスの作り方を学べる。Viator や GetYourGuide で予約可能
- 夕方:自由行動。最後の買い物やカフェ巡り
7日間コース:カサブランカを拠点にモロッコ周遊
5日間コースに加えて:
6日目:マラケシュ日帰りまたは1泊
- カサブランカからマラケシュまでAl Boraq高速鉄道で約2時間15分。片道149〜219 MAD(2,235〜3,285円、クラスによる)。朝7時台の列車に乗れば、日帰りも可能だが、1泊するのが理想的
- ジャマ・エル・フナ広場、バヒア宮殿、クトゥビア・モスクなど、マラケシュのハイライトを巡る
7日目:マラケシュからカサブランカへ戻り、出発
- マラケシュで午前中を過ごし、昼過ぎの列車でカサブランカへ戻る
- または、マラケシュから直接空港へ(マラケシュ・メナラ空港からも国際線あり)
モデルコースの予算目安(1人あたり):
- 3日間(中級ホテル):約60,000〜90,000円(食事・入場料・交通費込み、航空券別)
- 5日間:約90,000〜130,000円
- 7日間:約120,000〜180,000円
グルメガイド:レストラン
カサブランカはモロッコの食の首都だ。マラケシュが観光客向けにアレンジされた料理を出すのに対し、カサブランカには本物のモロッコ料理と、フレンチ、地中海料理、そして意外な多国籍レストランが揃っている。
高級レストラン
La Sqala - 旧メディナの城壁内にある人気レストラン。庭園席が美しく、特にブランチが有名。モロッコ風パンケーキ(ムスンメン)とミントティーの朝食セットが80〜120 MAD(1,200〜1,800円)。ランチ・ディナーはタジンが120〜200 MAD(1,800〜3,000円)。週末は予約必須。
リックス・カフェ - 言わずと知れた映画「カサブランカ」にインスパイアされたレストラン&バー。植民地時代の邸宅を改装した内装は雰囲気抜群。料理はモロッコ料理とインターナショナル。メインディッシュ150〜300 MAD(2,250〜4,500円)。毎晩ライブジャズの演奏あり。食事だけでなく、バーでカクテル(80〜120 MAD / 1,200〜1,800円)を楽しむのも良い。「ここは映画の実際の撮影地ではない」という事実はさておき、カサブランカに来たらやはり一度は訪れたい。
Le Cabestan - コルニッシュの先端に位置する高級フレンチレストラン。大西洋の絶景を眺めながらの食事は格別。ランチコース300〜500 MAD(4,500〜7,500円)、ディナーは500〜800 MAD(7,500〜12,000円)程度。ドレスコードあり(スマートカジュアル以上)。特にサンセットタイムのテラス席が素晴らしい。
中級レストラン
Blend Gourmet Burger - モロッコ風グルメバーガーの人気店。地元産牛肉を使ったバーガーが80〜130 MAD(1,200〜1,950円)。フライドポテトとドリンク付きセットで150 MAD前後。若者に人気で、カジュアルな雰囲気。
La Bodega - スペイン・タパス風のレストランで、モロッコにいながらヨーロッパの味が楽しめる。タパス1品50〜90 MAD(750〜1,350円)。ワインも充実しており、モロッコ産ワイン(グリ・ド・ゲルワン等)をグラス50〜80 MAD(750〜1,200円)で。アルコールが飲めるレストランはカサブランカでも限られているので貴重。
ローカル食堂・屋台
中央市場(Marche Central)周辺の魚介食堂 - 市場で選んだ魚をその場で調理してもらえる。魚のグリル+サラダ+パンで50〜100 MAD(750〜1,500円)。新鮮さは折り紙付き。ランチタイムがおすすめ。
ハブース地区のパティスリー - モロッコのお菓子(コルヌ・ド・ガゼル、バスティヤなど)の名店が並ぶ。1個5〜15 MAD(75〜225円)。詰め合わせ1箱で50〜100 MAD(750〜1,500円)。お土産にも最適。
日本食レストラン
ホームシックになった時の救世主。カサブランカにはいくつかの日本食レストランがある。Matsuri(マアリフ地区)は寿司とラーメンが食べられる。寿司セット150〜250 MAD(2,250〜3,750円)。日本の味とは少し違うが、十分合格点。Mikadoも同エリアにあり、鉄板焼きが人気。正直、日本のクオリティを期待すると落胆するかもしれないが、2〜3週間モロッコにいると恋しくなるものだ。醤油とわさびがちゃんと出てくるだけでもありがたい。
必食グルメ
カサブランカに来たら絶対に食べるべき料理と飲み物をリストアップした。これを制覇すれば、モロッコの食文化をしっかり体験できる。
メイン料理
タジン(Tagine) - モロッコ料理の代名詞。円錐形の陶器鍋でじっくり煮込んだ料理で、チキン+レモン+オリーブ、ラム+プルーン、ケフタ(ミートボール)+トマト+卵など、バリエーションが豊富。レストランで60〜150 MAD(900〜2,250円)、食堂なら30〜60 MAD(450〜900円)。毎日食べても飽きない。
クスクス(Couscous) - 金曜日のランチに食べるのがモロッコの伝統。蒸したセモリナ粉の粒に、野菜と肉の煮込みをかけて食べる。家庭料理の王様で、レストランでも金曜日はクスクスのスペシャルメニューが出る。80〜150 MAD(1,200〜2,250円)。
パスティヤ(Pastilla / Bastilla) - ハトまたはチキンの肉をパイ生地で包み、シナモンと粉糖をかけた独特の料理。甘いとしょっぱいの融合で、最初は戸惑うが、一口食べればその絶妙なバランスに感動する。前菜として60〜120 MAD(900〜1,800円)。
海鮮料理 - 港町カサブランカならではの新鮮なシーフード。イワシのグリル(サーディン)はモロッコの国民食ともいえる存在で、20〜40 MAD(300〜600円)と激安。エビ、イカ、タコのフリットも美味。港近くのレストランが最も新鮮。
軽食・スナック
ムスンメン(Msemmen) - 層になったモロッコ風パンケーキ。朝食の定番で、バターとハチミツをかけて食べる。屋台で1枚3〜5 MAD(45〜75円)。焼きたてを食べると幸せになれる。
ハリラ(Harira) - トマトベースのスープで、レンズ豆、ひよこ豆、パスタが入っている。ラマダン期間中は断食明けの最初の一口として欠かせない料理だが、年中食べられる。1杯10〜25 MAD(150〜375円)。体が温まり、胃にも優しいので、到着初日におすすめ。
飲み物・デザート
ミントティー(Atay) - モロッコの国民的飲み物。中国緑茶にたっぷりのミントと砂糖を入れて、高い位置から注ぐパフォーマンスが特徴。カフェで10〜25 MAD(150〜375円)。砂糖の量は「少なめで」と言っても日本の感覚からすると甘い。砂糖なしを注文することも可能。
アボカドジュース - モロッコではアボカドをジュースにして飲む。アボカド+ミルク+砂糖のスムージーで、濃厚でクリーミー。15〜30 MAD(225〜450円)。意外な組み合わせだが、ハマる人続出。
モロッコ産ワイン - イスラム教国だがモロッコにはワイン文化がある。メクネスやアトラス山麓で生産されており、意外と美味しい。グリ・ド・ゲルワン(ロゼ)が最も有名。ボトルで150〜400 MAD(2,250〜6,000円)。
地元民の秘密
ガイドブックには載っていない、カサブランカを本当に楽しむためのインサイダー情報。
朝のカフェ文化を体験せよ。カサブランカっ子の朝は、近所のカフェでノスノス(Nous-Nous = 半分半分、エスプレッソとミルクを半々にしたもの)を飲むことから始まる。ムスンメンやバゲットと一緒に15〜25 MAD(225〜375円)。観光スポットに急ぐ前に、まずこのリズムに合わせてみてほしい。地元の人々の日常が見える。
ハブース地区(Quartier des Habous)は穴場中の穴場。1930年代にフランス人が設計した「計画的メディナ」で、旧メディナより清潔で歩きやすく、でもちゃんとモロッコの雰囲気がある。オリーブ専門店、伝統菓子店、革製品の店が並び、客引きも少ない。値段も旧メディナより良心的。特にオリーブは種類が豊富で、試食もさせてもらえる。100gで10〜20 MAD(150〜300円)。
金曜日の過ごし方。金曜はイスラムの聖日で、午前中はビジネスが遅く始まり、昼のクスクスは家族の時間。観光は午後から動くのがスマート。モスク周辺は礼拝の人で混雑するので、午前中のモスク見学は避けた方がいい。逆に、金曜の夜はカサブランカのナイトライフが最も活気づく時間帯。コルニッシュのバーやクラブが賑わう。
値段交渉のコツ。メディナやスークでの買い物は値段交渉が文化の一部。最初の提示価格の40〜50%を目標に交渉するのが一般的。ただし、攻撃的になる必要はない。笑顔で「もう少し安くなりますか?」と聞くだけで十分。立ち去るふりをすると、かなりの確率で値下げしてくれる。逆に、スーパーマーケットやモールでは値段交渉はしない。
タクシーのメーター問題。カサブランカのプチタクシー(赤い小型タクシー)にはメーターがあるが、使いたがらないドライバーも多い。乗車時に「Le compteur, s'il vous plait(メーターをお願いします)」と言おう。メーターなしで交渉する場合、市内移動は20〜50 MAD(300〜750円)が相場。深夜は50%増し。空港タクシーは定額制で300 MAD。絶対に乗る前に値段を確認すること。
写真撮影のマナー。人の写真を撮る前に必ず許可を求めること。特に女性や高齢者は勝手に撮ると怒られる。モスクの外観は問題ないが、礼拝中の撮影は厳禁。市場の商品を撮るのは大抵OK。チップ(5〜10 MAD)を渡すとスムーズ。
日曜日の過ごし方。意外に思うかもしれないが、カサブランカは日曜日にも多くの店が営業している(フランスの影響で休む店もあるが)。日曜のブランチは最近のカサブランカのトレンドで、若者向けのおしゃれなカフェが続々オープンしている。マアリフ地区やアンファ地区で探してみよう。
交通・通信
空港から市内へのアクセス
ムハンマド5世国際空港(CMN)は市の南東約30kmに位置する。移動手段は3つある。
- 鉄道(ONCF):最もおすすめ。空港地下のCasa Voyageurs駅行きで所要約45分、片道70 MAD(約1,050円)。6:00〜23:00の間、約1時間間隔で運行。清潔で安全、時間も正確
- タクシー:到着ロビー出口にタクシー乗り場がある。市内中心部まで定額300 MAD(約4,500円)。深夜到着や荷物が多い場合に便利。必ず乗る前に料金を確認し、メーターではなく定額であることを明示してもらうこと
- 空港バス:最も安い選択肢で20 MAD(約300円)だが、本数が少なく時間がかかる。荷物置き場も限られるため、バックパッカー以外はあまりおすすめしない
市内交通
トラム(Casa Tramway):カサブランカの主要交通機関で、2路線が市内を東西南北に走る。1回券7 MAD(約105円)、1日券15 MAD(約225円)。6:00〜22:30運行。清潔で安全、Google Mapsでルート検索も可能。主要観光スポットの多くがトラム沿線にある。
プチタクシー(赤い小型タクシー):市内移動の定番。メーター制で、初乗り2.50 MAD、以降kmごとに加算。市内の一般的な移動で15〜40 MAD(225〜600円)。3人まで乗車可能。アプリ配車のCareem(旧Uber的サービス)も利用可能で、料金が事前に分かるので安心。アプリは英語対応。
グランタクシー(白い大型タクシー):都市間移動用の乗り合いタクシー。6人乗りで満員になったら出発。エル・ジャディーダまで片道40〜50 MAD(600〜750円)、ラバトまで35〜45 MAD(525〜675円)。安いが、6人詰め込みはかなり窮屈。
都市間鉄道(ONCF):ラバト(約1時間、40〜70 MAD)、マラケシュ(約2時間15分、高速鉄道Al Boraqで149〜219 MAD)、フェズ(約3.5時間、160〜250 MAD)など、主要都市へのアクセスが良い。チケットはONCFのウェブサイトまたは駅の窓口で購入可能。
通信・インターネット
SIMカード:空港到着ロビーにMaroc Telecom、Orange、Inwi の3大キャリアのブースがある。プリペイドSIMは50〜100 MAD(750〜1,500円)で5〜20GBのデータが使える。パスポート提示が必要。設定は店員がやってくれる。日本人旅行者にはMaroc Telecomが最もカバレッジが広くておすすめ。
eSIM:出発前にAiralo やHolafly等のeSIMを購入しておくと、到着後すぐにネットが使える。モロッコ用プランで7日間3GB が約1,500円〜。物理SIMの入れ替えが不要で、日本の番号もそのまま受信できるのがメリット。
Wi-Fi:中〜高級ホテルは無料Wi-Fi完備。速度はホテルによるが、動画視聴には十分な場合が多い。カフェのWi-Fiは品質にばらつきがある。重要な連絡はSIMカード/eSIMのモバイルデータに頼る方が確実。
注意点:モロッコではVoIP通話(WhatsApp通話、LINE通話など)が一部制限されている場合がある。VPNを日本で事前にインストールしておくと安心。VPN利用自体は違法ではない。
お金の管理
JCBカードはモロッコではほぼ使えない。Visa/Mastercardを持参すること。ATMは街中に多数あり、1回の引き出し上限は2,000〜4,000 MAD。手数料は銀行により異なるが、1回あたり25〜35 MAD(375〜525円)程度。両替は空港より市内の両替所の方がレートが良い。ユーロからの両替が最もレートが良く、日本円からの直接両替は不利な場合が多いので、ユーロを持参するのが賢い。
カサブランカはこんな人向け:まとめ
カサブランカは万人向けの観光地ではない。マラケシュのような圧倒的なエキゾチック感や、シャウエンのようなSNS映えを求めるなら、少し物足りないかもしれない。だが、以下のような旅行者には強くおすすめする。
- 建築好き:アールデコ・ダウンタウンの建築群とハッサン2世モスクは、建築ファンなら見逃せない
- 食べ歩き好き:モロッコ料理の多様性を最も楽しめる街。高級レストランから屋台まで、選択肢の幅が広い
- 都会派:アフリカの大都市のダイナミズムを感じたい人。カフェ文化、ナイトライフ、ショッピングが充実
- モロッコ周遊の拠点:鉄道網の中心で、ラバト、マラケシュ、フェズへのアクセスが良い
- リピーター:マラケシュやフェズは行ったことがある、もう少しディープなモロッコを知りたいという人
カサブランカは、モロッコの「観光地」ではなく「リアル」を見せてくれる街だ。完璧ではないからこそ面白い。3日あれば十分に楽しめるが、5日いれば好きになり、1週間いれば離れがたくなる。そんな不思議な魅力を持った街、それがカサブランカだ。